戦闘
私たちはその後もう少し歩いたところでもう一度止まった。
ゴートさんはこの先にオークがあると言った。さらに、その数は二体だという。この間戦ったのはオーク一体とゴブリンが数十体いたとはいえオーク二体は流石に危ないかもしれない。私一人ではなくしっかりとフィーユも一緒に戦うのだから。だが、もしもの場合はゴートさんたちが守ってくれる。だからそれほど心配はしていない。
だけど、やるならちゃんと倒し切りたいと思っている。私はは役に立つためについたきたのだ。こんなところでつまずいてはいられない。
そんなことを考えていたが、まずは一旦休憩するそうだ。戦うのに支障が出てはいけないということだった。
しばらく休憩していると、ゴートさんに手招きされた。何かあったのかと思い近づいていく。すると頭に手を置かれて言われた。
「なあイム、あまり気負いすぎるんじゃない。お前はまだ子供なんだ。さっきからオークとの戦いが気になっているようだったが、何も勝つことはないんだ。それに一番忘れちゃならないのは仲間の存在だ。イム、お前は一人じゃない。フィーユもいる、それに俺らだっている。だからそんなにこわばらなくたっていいんだぞ。」
「そうだぞ、イム。俺なんか見たいな盾の役割なんかは仲間がいないと何もできやしない。だがな、だからこそ仲間のことを人一倍に知っていたりするもんなんだ。そんな俺からのアドバイスだ。イム、仲間を、フィーユを信じなければ勝てる戦いも勝てなくなっちまうぞ。」
いつも仲間を信じて、そして信じられていないとできない盾役のドギスさんだからこそ言える言葉だった。盾は自分では攻撃ができない。だから仲間が敵のトドメを刺してくれるのを信じているしかない。そして、仲間に信じられているからこそ成り立つ役職だった。ドギスさんが絶対に守ってくれている、そういう信頼があるからこそ後ろの仲間たちは心を軽くして敵と戦えている。そんな信頼関係ができあがっているからこそ盾の役職をやっていられる。
そして、これは盾に限ったことでもない。仲間を信じあ合わなければいけないのはチームも同じことだ。仲間を信じて頼り合わなければ成立しない、それがチームだ。それが例え種族が違っても、敵だとしても、不仲なライバル同士だったとしても、人ならざる者だとしてもだ。
「俺も昔は人を守らなければいけないプレッシャーに押し潰されそうになったことだってあった。だがな、そんな時に仲間に相談したらこんな答えをもらったんだ。まあ、その仲間はこいつなわけなんだがな。」
「な、それは昔のことだろ。今はもう関係ないだろ!」
「だけどその時はみんな強くなることに焦っていた時期だったからな。あの言葉は心に刺さったよ。」
「なっ、スクルまで乗るなよ、まったく。」
さっきまでの私みたいにスクルさんたちにも色々なことがあったそうだ。それをまとめたのがゴートさんだったのか。
だけと、ドギスさんたちの話を聞いてだいぶ心が楽になった。仲間を信じる・・・か。
よし、フィーユのところにいこう。そして作戦会議だ。オークを相手にするんだから準備は万全にしておかないと。
「ねえ、フィーユ?作戦会議をしようよ。」
「え?いいよ!どうやって戦うの?」
「そうだな、まず私が前衛でオークを相手にする。その間にオークに魔法を打ち込んでくれない?」
「え!?でもそれじゃあシーお姉ちゃんが危ないよ。オークはすごく強いんだよ?」
「大丈夫、私はお姉ちゃんだからね。ても、私が危なくなったら助けてね?」
「うん、もちろんだよ!」
「おーい、もうそろそろ出発するぞー。」
私たちの作戦会議が終わるのと同じくらいに声がかけられた。きっと私たちの作戦会議が終わるのを待っていてくれていたのだろう。
私たちは返事をしてすぐにゴートさんたちのところへ向かった。
「よし、それじゃあもう出発するぞ。準備はいいよな?あとイムとフィーユ、俺たちはオークとの戦闘には一切参加しないからな。」
「はい、わかっていますゴートさん。」
「よし、じゃあ行くぞ。」
それから私たちはまた目的地に向かって歩き出した。途中に魔物が出ることもあったがそれは問題ではなかった。なぜなら途中の魔物はゴートさんたちが狩ってくれたからだ。ゴートさんがオークとの戦闘のために力を温存しておくようにと言い、途中に出てきた魔物は全て倒してくれた。なので私とフィーユは全く疲労せずに目的地の近くまで来ることができた。
「ここから先は自分たちで進め。俺たちはここで待っているから危ないと思ったらすぐに戻ってくるんだぞ。それじゃあ頑張ってこいよ。」
「頑張ってこいよ。」
「頑張れよ。」
「がんばってきてねー!」
「頑張ってね。」
「はい、頑張ってきます。」
「うん、頑張るね!」
私とフィーユはみんなのそれぞれのこれに応えて目的地へと向かった。とはいってもここから目的地まではそう遠くはない。
私たちは少し歩いたところで一度立ち止まって木の影に隠れた。目の前にはもうオークがいて、これ以上近づいたら気付かれてしまうだろう。だから私はここでもう一度作戦について話しておくことにした。
私が話しかけるとフィーユはビクッとすごい勢いで震えた。フィーユは涙目になっており今にも泣き出しそうだった。そう、フィーユはとても怖がっていた。ここに来る前まではすごく元気だったのもゴートさんたちがいたからだ。これまで絶対の安心感がフィーユにはあった。でも今は私と二人きり、いくら姉だとは言ってもゴートさんよりも弱いとフィーユは思っているだろう。だからオークを目の前にして、怖くて、今にも泣き出しそうなのだろう。
「フィーユ、見ていて。」
私はフィーユの頭に手を乗せて言った。
フィーユは私が弱いから怖がっているのだ。ならば、私が強い、安心できる存在だと思わせればいいのだ。だから私はフィーユにそう言ってオークに向かって歩き出した。
私は歩きながら腰にかけてある剣を鞘から抜いた。すると歩き出した私にオークたちは気がつきこちらに向かってきた。
勢いよく向かってくるオークたちの首を・・・私はたった一振りで斬り飛ばした。
私は剣を鞘に戻しフィーユのところに向かった。
私がフィーユのところに戻るとすごく右往左往していた。私がオークの首を一人で刎ねたからだろう。私は落ち着いた声でフィーユに安心するように声をかけた。
「私は強いから、安心していいんだよ」
そういうとフィーユはすごい勢いで泣き始めた。その間私はフィーユを抱き締めていた。
でもすぐにゴートさんがきた。どうやらアークの反応が一瞬で消えたからものすごい魔物が来てオークを倒したと思ったそうだ。でもそうじゃなく、私がやったというとさらに驚いていた。それに向こう側にあるオークを見ると皆目を丸くして驚いていた。
だが、これで依頼は達成したからとりあえずギルドへ帰ることにした。
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