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弾幕はパワー

「何今の!?」

「なんか奥義スキルってやつ撃った」


 今まで見たことがないエルメルのスキルに驚愕し、振り向く†フィフィ†へ。


「――ッ!!」


 もはや言葉ではなく、獅子の咆哮。

 飛ぶのではなく、停滞するのがやっとという不格好な状態だったスフィンクスが向かってきて。


「[ダンスステップ]!」


 その場で身を翻した†フィフィ†へ、モロに攻撃が当たったように見えた。

 ……しかし、


「使用直後の攻撃を完全回避する。使い所さんが難しいしクールタイム長いけど、こういう時便利♪」


 どうやら先ほどのスキルは問答無用で攻撃を回避するスキルだったらしく、ピンピンしている†フィフィ†が同じ場所に立っていて。

 その両脇に、スフィンクスの爪が薙いだ証拠である傷跡が存在。

 そんな†フィフィ†が不敵な笑みを浮かべると、


「エルたそばっかりズルいでござる!! 拙者も奥義撃ちたいでござるよ!!」


 配信的に派手なスキルの方が映えるせいで先ほどの奥義スキル後に、『エルメル視点見てくる』というコメントが多数散見され、若干の嫉妬を含めたごまイワシが、脇をすり抜けてスフィンクスと対峙。


「白状するでござる! どうすりゃさっきみたいなスキルが撃てるでござるか!?」

「知るかよ! いきなり発動条件満たしたとか出たんだからよ」


 理不尽寄りのキレ気味な問い詰め方をするごまイワシへ、んなもんシステムに聞けと吐き捨てるエルメル。

 そして、


『奥義はユニーク武器に備わっていることが多くて、発動条件は基本職業に応じて違うはず。忍者なら一定回数回避とかだと思うけど』


 と、視聴者からコメントによって教えられ。


「教えてくれてありがとうでござるよ!!」


 だったらその通りにやってみよう、と、スフィンクスの顔の前でスキルによる空中反復横跳びを開始。

 すぐに猫じゃらしに遊ばれる猫のような動きで、何とかごまイワシを落とそうとするスフィンクスへ、パルティが一言。


「可愛い」

「そうか?」


 おそらく無意識に出た言葉だろうが、それをエルメルは聞き逃さずに反応し。

 確かに猫のような動きであるし、その動きだけ見ればかわいいかもしれない。

 ――が、おもちゃの役割はあのごまイワシであり。

 遊ばれる側のスフィンクスも拠点ボスなのだ。

 残念ながら、一般的な可愛いという意味とはかけ離れているとしかエルメルには思えなかった。


「とりあえずさ、今のうちに尻尾に移動しとくべよ」

「さんせー」

「異議な~し」


 ここで、特に何の感情も抱いていないマンチの提案により、ごまイワシがスフィンクスの気を引いている間に全員で尻尾を狙うこととなったが、


「多分、一番負担が大きいので私ごまイワシさんに付いてますね」


 パルティだけは、ごまイワシの身を案じて補助の為にごまイワシの傍に残ることを選択。


「パルティちゃんてさ、いい子だよね」

「ごまのことなんか気にしなくていいのにな」

「ごまはどうでもいいけど、パルティが床舐めたらごまイワシすり潰そうぜ」

「ごまだけに?」


 そんなパルティを尻目に、ご機嫌に動く尻尾の前まで来た三人。


「ちなみに動く尻尾にも攻撃判定あるから注意。カウンター起動したから間違いないわ」

「りょ。つっても俺遠距離からチクチクするだけだし?」

「うちもちょちょいと殴って即距離取ろうと思ってるけど?」

「勿体ない。VRなんだからインファイトすりゃあいいんに」


 それぞれがいつでもスキルを発動できるように構えながら、


「人には人の戦い方があんのよ」

「インファイト楽しいけど脳みそ疲れるんだよね」

「その疲れが最高にイイんだろうが」


 それぞれが、思い思いの事を口にするのだった。



「物量で押し勝てば何とかなりそう?」


 あらゆる攻撃を砂で防ぐツタンカーメン。

 ただし、もちろんプレイヤーもただ単調に攻撃していたわけではなく。

 各人が考え、取れるところ連携をとったりし、どうにか砂の防壁を突破できないかと思案していた。

 そんな中、後方から前線へと上がってきた琥珀の登場により事態は変化する。

 二丁持ちのサブマシンガン。

 銃弾ではなく、MPを弾にして吐き出すタイプのマシンガン二丁による掃射は、初めは全弾砂によって防がれた。

 しかし、そこに他のプレイヤーの攻撃が加わると、徐々に砂の防壁が薄くなっていき……。

 ついに突破。

 ほんの数秒、かつ範囲も狭かったことで琥珀のサブマシンガン数発しかツタンカーメンには届かなかったが、それでも初めてダメージを与えたのだ。


「一撃よりも複数発の攻撃が見込めるスキルを集めたらあるいは」

「後衛いる連中に可能な限りの連射と貫通属性のスキル使用を伝えてきなさい」


 岩陰から自身の使役する鷹と共に攻撃していた黒曜へ、琥珀はクランマスターとしての命令を伝達。

 無言で頷いた黒曜は鷹へと意識を飛ばし、後方から狙撃をしている彼らのクランリーダーからの指示を伝えに動く。

 そして前線でも……、


「皆さん聞いてください! 今ツタンカーメンの防壁が一瞬破れ、ダメージを与えることに成功しました! その際、我らの邪魔をする湧き出る砂が止まりました。つまり、この足元の砂はツタンカーメンにダメージさえ与えていれば止まるようです! その時を逃さず、ツタンカーメンに肉薄しましょう!!」


 同じくクランのメンバー……タンク職のプレイヤーへと呼びかける顔s。

 その言葉を聞いたクランのメンバーも、そうでないプレイヤーも。

 彼のその言葉に、大きく頷くのだった。

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