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変な人は大体変じゃないって言う

「ちょっ!? ごまさんが床を舐めてる!?」

「なんで!? 床をぺろぺろしてらっしゃるのwww」

「うっわ俺ごまが床舐めてるの初めて見たかも」


 唐突に出現したごまイワシに対し、似通った反応ながらも三者三様の反応をするエルメル達は。

 驚きと、煽りと、動転と。

 ごまイワシからの反応を待つ……が。

 地面に倒れたままのごまイワシは、しばらくの間反応がなく。

 エルメルが剣の先で突いてみたり、マンチが人魚の尾びれと人間の体の境目辺りに蹴りを入れていると……。


「あー!! やっと死亡した時のイベントが終わったのだ!!」


 ようやくごまイワシが反応する。

 どうやら、初めて体力がゼロになった時のイベントを見せられていたらしい。


「唐突に消えて床舐めたまま帰ってくるって何したんだよお前」

「別にそんなに変な事はしてないと思うのでござるが……」


 何しでかした? と尋ねるエルメルに、特には? と返しながらごまイワシは立ち上がろうとして。


「ん? ……あぁ、尾びれになってるから勝手が違う――」


 腕立て伏せのような体勢のまま動きが止まる。


「エルたそ……マンチニキでもいいでござる」

「うん?」

「何だ?」

「拙者……持ち上げて欲しいでござるよ」



「やー、意外な落とし穴でござった」

「足が無いせいで倒れたら起き上がれねぇとか笑うわ」

「んで? 何があったよ?」


 他人の手を借りてようやく不自然に出現する波に乗れたごまイワシは、腕を組んでエルメル達の疑問に答え始める。


「いや、クエスト完了するときに、ジョルトにメンチ切って殴り掛かろうとした()()でござる」

「だけの定義壊れる」

「ただのヤバい奴定期」

「ヤバいのは知ってたけどここまでとは……」


 それは、町中でNPCに喧嘩を売るという行為。

 ごまイワシからしてみれば、何でも出来そうなゲームの中だからこそ、どこまで出来るのかを試したかったのだが、その結果は――。


「そしたら急に視界が暗転して、ジョルトとタイマン張る空間に飛ばされたでござるの巻」


 喧嘩を買われた……らしい。


「見るからに強そうなこいつとタイマンねぇ……」


 歴戦の戦士を思わせる屈強な体に頬の傷。

 装備も見るからに序盤のモンスターからは素材の欠片すらもドロップしそうにすらない。

 そんな、どう見てもレベルで言えば離れすぎている相手と、タイマン。

 いかにキャラコンがお化けと称されたごまイワシでも、流石に勝てなかったか、と納得する†フィフィ†とマンチだったが、エルメルは別の事を考えていた。


「なぁ」

「うん?」

「どったの?」

「町中でこいつに喧嘩売ったらタイマンになるんだよな?」

「拙者はそうだったでござるな」

「あとでタイマンで勝たなきゃいけないってストーリーかイベントかあること確定じゃね?」


 その考えとは、今出来るのならばいつかやらなきゃならないのでは? との考えで。

 言われてみれば、NPC相手にさせる必要がない事を出来るようにする意味合いは薄く。

 だとすると遠くない未来で戦う必要があるのであろう。

 ――ならば、


「今ここで勝ったらどうなるか知りたくね?」


 好奇心から、そんなことを口にするエルメルだったが、


「辞めといたほうがいいでござる」


 一度戦ったごまイワシから待ったが入る。


「拙者、逃げに徹してたからやられるまで時間がかかったでござるが、相手に与えるダメージがカスだったでござる」

「どれくらい?」

「2。ちなみに相手のレベルは八十だったでござる」

「無理だな。ワンチャンねぇわ」


 回避に徹していたごまイワシが結果的にダメージを貰って死んだ。

 その事実は、いつメンの誰もが攻撃を回避できないことを意味しており。

 今レベルが上がってようやく二に上がったばかりなのに、実に四十倍もある相手を倒せるなどあり得ない。

 ごまイワシの尊い犠牲の元、そう判断した一行は、大人しくチュートリアルを続けることを決意する。

 

「お、レベル上がったでござる―」


 ようやくクエスト報告を終えたごまイワシもレベルが上がり、ステータスポイントをHPに割り振って。


「ん? 拙者称号手に入ってるでござるが?」

「は? 俺ら何も手に入ってない筈だぞ?」

「なんて称号貰ったの?」


 ステータス画面で勝手に設定された称号を見て、一瞬喜んだごまイワシだったが、すぐにその表情は曇る。


「……や」

「うん?」

「何? 聞こえない」

「喧嘩屋……」

「…………ぶっw」

「ただのDQNで笑う」

「絶対ジョルトに喧嘩吹っ掛けたからだわ」


 しかもこの称号、一度セットされると自分では外せない――少なくとも現段階では外せないらしく、嫌でも付け続けなければならない。


「真面目で優しいごまイワシのイメージが崩れるでござる」

「知ってる? 崩れるものがないならノーダメなんだよ?」

「真w面w目wでw優wしwいw どこの世界線のごまだよww」

「称号はちょっと羨ましいけど、その称号はびみょいなぁ……」


 その後、何故かごまイワシだけジョルトに睨みつけられながら次のチュートリアルに案内してもらえば、装備屋にて卒業祝いの装備とスキルを貰って来いとのお達しが。

 やっと新しいスキルを覚えられる……とテンションの上がった四人は、マップを頼りに装備屋へと向かのだった。

 ……NPCから、ちょっと冷ややかな目を向けられながら。

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