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イエローなんちゃら作戦

「一応聞くけど、あいつがああなったのってパルティの仕業だよな?」

「たぶん……? 尻尾を叩いただけなんですけど……」


 なおも地面を転がり、痛がるスフィンクスを余所に、合流したパルティへとエルメルが尋ねれば。

 パルティは、尻尾を叩いた()()だと解答。

 ただし、彼女が今現在手に持っている武器は棘付きのメイスであり。

 それで叩かれた時の痛みを一瞬想像し、身震いするエルメル。


「尻尾が弱点的な感じ?」

「分かんねぇけどありえそうじゃね? さすがにどこかしらに弱点は用意されてるっしょ」

「んじゃあ敵の気を引く陽動と、尻尾をぶっ叩く本隊とに分けよう」


 本来はのんきにこうして会話をしている場合でもないのだろうが、あいにくスフィンクスは先ほど四人を弾き飛ばした時よりも激しく地面をのたうち回っており。

 下手に近づけば先ほどよりもダメージを貰いそうなのである。

 そうなれば回復出来ていない現状床を舐める未来に繋がるわけで。

 行きたくても行けない。だからこそ、こうしてポーションを飲みながらスフィンクスが起き上がってからの作戦を立てているのだ。


「陽動組に拙者は確定として、エルたそもこっちでござる?」

「じゃね? 俺とごまイワシじゃないとヘイト集まんねぇだろ」

「ところがぎっちょん。さっきヘイト奪ってみせたうちのスキルがあるわけで」

「けどヘイト奪っても攻撃をどうにかしなきゃいけないじゃん?」

「そこはほら、マンチさんのさっきの防御結界だったり、ごまさんに助けてもらったりでなんとか」


 弱点と思われる尻尾。

 そこを狙う攻撃側と、攻撃側に効率よく殴らせるための陽動側。

 それぞれをどちらに配置させるかという問題に直面する四人。

 リアル回避が高く、HPが他よりも高いごまイワシは陽動確定としたまではいいが、そこから先は難航した。


「そうなると俺だけが攻撃にならね? 流石に俺一人よりマンチとコリンの二人の方が火力出るだろ」


 そもそも、現在の四人の中で、エルメルだけが前線と火力とを両立しており。

 拠点ボスであるために体力が高いであろうスフィンクス相手に、可能な限り早く討伐出来るというエルメルを攻撃側に置いたメリットは非常に高い。

 時間がかかればかかるほど、集中力は落ちるしミスも増える。

 そうなれば、プレイヤー側は徐々に不利(ジリープア)なのだ。

 だが、


「俺と†フィフィ†でバフ取得してるし、それお前にかければ補えそうだろ。……ていうか的がでかい顔や胴体ならまだしも、予測不能な動きする尻尾とか多分お前かごまじゃねぇと当てらんねぇよ」


 マンチの言葉に頷く†フィフィ†。

 さらに、


「ありがたいことにパルティもいるし、ダメージ喰らったら即座に回復してもらうさ」

「……あ、はい。任せてください!」


 話を聞きながらきょろきょろしていたパルティが、名前を呼ばれると、杖を握った手にグッと力を入れて、強く頷く。


「というわけで、特攻隊長エルメルとして行ってこい」

「はいはい。しっかり陽動頼むぜ?」

「任されたでござるよ」


 ポン、とエルメルの背を叩いたマンチの配信画面では、色々なコメントが怒涛の如く押し寄せるが、それは見ないふりをして。


「[六壬棗地(りくじんそうち)]! [六壬楓天(りくじんふうてん)]!!」


 対象者の火力と耐久を上げる人形を発動。

 さらに、


「[戦いの歌:円舞]!」


 同じくステータスの底上げをする『歌』スキルを発動する†フィフィ†に続き。


「硬き肉体、堅き鎧。固き重なりを以って強靭さを与え給え。[鎧堅(シールドクレート)]! 研ぎ澄ます決意を力に変え、阻むものを倒す力を! [懐撃(レーヴェ)]!!」


 パルティも、バフをエルメルに施して。


「向こうも丁度痛みが引いたみたいでござるよ?」

「尻尾の辺りさすってるの、ちょっとかわいくない?」

「ちょっとな」

「ていうかスフィンクスも痛いところさするんだな。妙に人間っぽいAI入ってんな」


 ようやく匍匐(ほふく)のようなスフィンクスのニュートラルポジションに戻った相手を見ながらそんな事を。


「あんたら、マジで許さんからな」


 一方、分かりやすく額に青筋を立てたスフィンクスは、絶対に殺すという決意に満ちており。


「第二ラウンド、げっとれでぃ~?」

「「ファイ!!」」


 間延びしたごまイワシの合図に合わせて、パルティ含む五人は、それぞれ思い思いの方向へと跳躍した。



「ぶっちゃけ強すぎて引くんだけど」

「倒すどころかダメージを与えるのに条件が必要そうですよね」


 イエローデザートの中央。

 流砂を逆さまにしたような、絶え間なく湧き上がる砂で作られた山の頂上で腕を組み、プレイヤー達を見下ろすツタンカーメン。

 その姿には、今のところ傷どころか汚れすらついておらず。

 町へと転送されてから、ただの一度もどの攻撃もを受けていないことを物語っていた。


「近接は逆流砂のせいで近寄れないし、遠距離攻撃は全部砂で防いじゃうし……某忍者漫画の我〇羅かっての」

「琥珀様、名前出すと作品名伏せた意味がありません」


 イエローデザートにある建物の屋根の上。

 そこでスナイプ態勢に入ってツタンカーメンへと射撃していた琥珀は、イラつきからか頭をわしゃわしゃと掻き。

 それを見ながら、どうしたものかと思案する黒曜。

 近距離も遠距離もダメ。となると本当にダメージを与える手立てがないが、流石にMMOでそんなムリゲーを設定しているとは考えにくい。

 何か、条件があるはずなのだ。

 攻撃を通すための何かが。


「あー、やめた」

「?」

「遠距離やめた。インファイトしてくる」


 そう言って立ち上がった琥珀は、ボルトアクション式のスナイパーライフルをアイテム欄に押し込むと――。

 ジャコン、と、二丁のサブマシンガンを手に持った琥珀は。


「今から私はトリガーハッピー♪」


 スナイプしている時よりも上機嫌に、一目散にツタンカーメンへと走っていくのだった。

 ……やれやれ、と額に手を置いてため息をつく黒曜を置いて。

所持スキル一覧

ごまイワシ編


転職前← →転職後

[切り抜け]→[翡翠カワセミ

[流転]→[縮地]

[滑転]→[???]

[乱雨斬みだれぎり]→[???]

[クロスポイント]→[クロスポイント]

[???]→[???]

[瞬身](忍者基本スキル)

[桜花雷閃](武器『朧桜』に刻まれたスキル)


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