急所を狙え
「いきなりなんでござるか!?」
巨大化した直後、前足でエルメル達へと襲い掛かってきたスフィンクスは。
「ツタンカーメン探さなあかんのや!! 邪魔すんなら容赦せぇへんで!!」
と。怪しい方言を使いながら避け続けるごまイワシにラッシュを浴びせていく。
――が、
「動きが素直、そんなに早くない、予備動作が大きい。以上、当たる要素皆無でござる。にんにん」
壁を蹴って宙に浮き前足による横薙ぎを避け、振り下ろす攻撃は[流転]で躱し。
「だぁーっ!! うっとうしいわ!!」
地団駄を踏むように、両前足を叩きつける攻撃は……。
「[翡翠]!!」
「[後の先]!!」
片方はエルメルに防がれ、カウンターを貰う羽目になり。
もう片方は、ようやくごまイワシの姿を捉えた……と思ったらそのごまイワシの姿が掻き消えて。
現れたごまイワシの姿は、スフィンクスへと肉薄していた。
「[クロスポイント]!!」
「[使役律令:援]!」
その好機を逃すまいと追撃をかけるごまイワシへ、マンチから援護が飛ぶ。
ごまイワシの背に付いていた人形が分離し、ごまイワシの姿を象って。
ごまイワシと同じ動きを、トレースしてスフィンクスへと追撃。
さらに、
「だっしゃおらおら~」
壁を駆け上り、そのまま蹴って跳んだ†フィフィ†が、気が付けばスフィンクスの顔面へと向かっていて。
「[ハイウェイト]!!」
空中で回転し、スフィンクスの脳天へとかかと落としを直撃させる。
「ぐぎ……」
それを受けて仰け反るスフィンクスへ、
「[刃]!!」
エルメルは、[後の先]を当てた前足へ追撃し、直後に前足を蹴飛ばして。
追撃も含めたダメージを置き去りに跳び、そのまま肩へ。
「[速]!!」
肩へダメージを与え、撃ち落とそうと振るわれるもう一方の前足を、剣で受けて防ぎ。
「[華]!!」
その前足をみじん切りにし、足場として着地。
「[断]!!」
着地の後は間髪入れずに跳躍し、跳躍の勢いを乗せた渾身の一撃をスフィンクスの顔面へ。
「ほんっまうっとおしいわ!!」
しかし、流石拠点ボスというべきか。
それらの攻撃を受けても、特に目立ったダメージ成果は見受けられず。
猫のようにその場で横に転がり、周囲にいたマンチ以外の三人を吹き飛ばす。
「ぶべっ!?」
「ひゃん!!」
「げふっ!!」
それぞれ、変な声を出して飛ばされてしまい。
しかも巨体の質量に任せた体当たりという攻撃は、結構な量のダメージを喰らってしまう。
即座に立ち上がってポーションを口へと持って行ったエルメルの視線の先には、口を大きく広げてこちらを向いているスフィンクスの顔があり。
どう考えてもビームを撃とうとしているようにしか見えない、謎の緑色の光が集約していっており。
(流石にビームはカウンターの反応外だよなぁ?)
などと思っていると。
「[スポットライト]!!」
突如として顔の向きが、エルメルから†フィフィ†の方へとぐるんと回転。
さらに、
「[結界術:九字]!!」
スフィンクスの顔の前に、九字――『臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前』と描かれた正九角形の結界が出現。
無理やりに攻撃のヘイトを奪い、さらにその攻撃を防ごうというマンチと†フィフィ†のスキルコンボであったが……。
「防げるわけあるかい!!」
スフィンクスの言葉通り、ほんの一瞬だけ攻撃を持ちこたえたが、ガラスの砕けるような音とともに結界が砕けてしまい。
「[縮地]!! からの[流転]!! さらに[瞬身]!!」
攻撃が二人に迫る瞬間、移動スキルをフル投入したごまイワシが間に合い、二人を抱きかかえてエルメルの傍へと瞬間移動。
何とか攻撃を回避することに成功した。
「危なかった……」
「面白いスキル持ってんな」
「ごまさんの移動スキル万能過ぎない?」
「個人的には攻撃途中なのにヘイト搔っ攫うスキルの方がヤバいと思うのでござる」
スフィンクスの口から放たれた、緑色のレーザーが明後日の壁へと放たれる中。
先ほどの一連の流れの感想を言い合う四人。
その姿は、どう見てもその場の雰囲気には似つかわしくないもので。
攻撃が避けられたスフィンクスが、青筋を立てる理由には十分だった。
「お前らほんまええ加減にせえよ!!」
再度口を開き、緑色の光を集約していくスフィンクスへ。
「こっちが隙見せてないのにそんなため攻撃とか馬鹿でござるか?」
「なんとな~くどうすりゃいいか分かるし?」
「二度撃てると思うんじゃねぇぞ?」
と、ごまイワシ、†フィフィ†、マンチの三人がタイミングを合わせ、エルメルの構えた剣の腹へと着地して。
「顎ぶっ叩いて閉じさせろ! Just do it!! [横薙ぎ]!!」
「サー! イエッサー!!」
三人ともをまとめてスフィンクスの顔を目掛けてホームラン。
嬉々とした表情の三人は、撃ち出されるままに得物を構えて舌なめずりするのだった。
*
「何か、騒がしい……ような?」
先ほどまでツタンカーメンと戦っていた王の間。
初見であり、嫌な予感がした結果、転送魔法陣の外に立ったパルティは、当然転送には巻き込まれず。
ボスも居ない。転送魔法陣も一度起動した後消えてしまい、どうしようかと立ち往生していた時。
後ろの方が、少し騒がしく感じた。
「と、とりあえず町に戻ってみましょう」
パーティを組んでいたクランのメンバーたちがいきなり消失し、しかもパーティさえも解除されて。
どうすればいいかを考えたパルティは、徒歩で町へと戻る選択肢を取った。
そうして王の間から出たパルティを迎えたのは……。
「……これは?」
砂レンガで出来た、巨大な虎のような尻であり。
見上げると、スフィンクスの後頭部が確認できて。
「よく分かんないですけど、多分敵……かな?」
クランメンバーからよく言われる、敵だと思ったらとりあえず殴れ。という言葉を実践するために。
「武器はこれで、スキルは……これ」
棘付きのメイスに持ち替えたパルティは、プラプラと揺れ動く尻尾へと。
その鈍器を、力任せに振り下ろすのだった。
登場人物リアルラック早見表(現状)
パルティ≧エルメル>琥珀・黒曜・†フィフィ†・ヘルミ>マンチ・ビオチット・紫陽花>顔s>越えられない壁>ごまイワシ