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開け、その扉

「んで、とりあえず早速なんでござるが、前回の続きでエンチャするところからでござ~る」

「各々が自分の決めたネタ振り目的でエンチャして~、俺とごまは武器にもエンチャかける感じ~」


 画面の向こうの視聴者へと、今までの説明をするごまイワシとエルメル。

 そんな二人を意にも介さずにしれっとエンチャントを終わらせたマンチと†フィフィ†は。


「いや、お前らそんなあっさり終わらせるなよ……」


 ジト目でエルメルから睨まれるが……。


「俺らって、別に運が良くも悪くもないし」

「撮れ高になると思わないんだよねーエンチャで」


 と、あっさり気味。

 そして、言う通りに、


「うん、六回目で『HP+966』。こんなもんよね」

「『防御+22』出たから均等化達成。あとお前らだぞ」


 特に素材が足りなくなることもなく。そして、一発で高い数値を出すわけでもなく。

 それなりの数字やそれなりの回数で妥協した二人。


「だそうですわよごまさん?」

「これは拙者たちの実力をみせなければならないでござるなぁ?」


 そんな二人に振られ、エンチャントには必要ないにもかかわらず、腕を回し、首を鳴らし。


「刮目せよ!」


 と、【王家を守護する従僕の剣】をビルゴードに渡し、水属性付与のエンチャントを選択して……。


「ユニーク武器への記念すべき一回目のエンチャ……『水属性+10』!」


 高らかにエンチャントした数字を叫ぶエルメルへ。


『ユニーク武器へのエンチャは数値固定なはず』


 というコメントが。


「マジで?」


 少しだけ疑いながら。そして、出来るならばそうではないようにと信じながら二度目のエンチャント。

 結果は……、


「『水属性+10』……。ま~じか~」


 コメントの通り、一回目と同じ数値であり。


「どうしたでござる?」


 それを確認して膝から崩れ落ちたエルメルへ、何事かと尋ねるごまイワシ。


「ユニーク武器へのエンチャは数字決まってるんだと。だから、エンチャさえすれば数字のふり幅ないし、エンチャ取り除いたりもしなくていいっぽい」


 そんなごまイワシへコメントにて教えてもらったことを説明すると……。


「なんでそれで落胆しているでござる? 定値なら別に残念がることないでござろう?」

「だってさぁ、全員数値同じなんだろ? エンチャって、乱数があってその乱数をねじ伏せたものが強くなるっていうシステムじゃん? それが全員一緒ですーなんて、俺はそんなゆとり仕様を認めたくない!!」

「そもそもユニーク武器手に入れるのがまぁ乱数をねじ伏せる必要があるわけで。そこでエンチャで最低値連発して産廃出来ましたとか拙者笑える自信ないでござるよ?」


 乱数に対して肯定的というか、乱数何ぞいくつでもねじ伏せてなんぼというエルメルと。

 最初の壁があるのだから、その壁を越えた後はある程度優遇されてしかるべきという考えのごまイワシ。

 そんな真逆の二人へ、


「とりあえず二人ともはよ。この後まだまだやりたいことあるぞ」


 マンチが急かしてきた。


「はいはいっと。はぁ。……トータルで『水属性+30』か。どんなもんなんだろうなこれ」

「それらも含めた試し切りしたいでござるよねぇ」


 その言葉を受け止め、結果が分かっているエンチャントをさっさと終わらせたエルメルとごまイワシはマンチと†フィフィ†に合流。

 ひとまずどれくらい威力が高くなったかを見たいとフィールドへ出ようとすると……。


「何事?」


 フィールドに出るためのポータル。

 その場所が、異様に光り輝いていて。

 それに近づけば、ログアウトする前の女神たちに囲まれたときに見た光と同じ光が当たりを包み込み。


『特殊なフィールドに移動するため、パーティを解除しました』


 というアナウンスが流れ……。

 エルメルは、静かな丘へと転送されたのだった。



「はっ!? 今はどこ? 私はいつ? ここは誰!?」


 光が消え、周囲を見渡せば暗闇で。

 屈んで足元を確認すれば、うっすらと緑が茂る丘の上。

 そして、白いが光っていない三つの球体が目の前に存在し。


「これ、何のイベント?」


 と視聴者達へと問いかける。

 しかし、それに答えたのは視聴者ではなく……。


「ここは新たな力に目覚める場所。ようこそ……強くなりましたね」


 初めて見る、月と太陽の紋章を額に刻んだお姉さん。

 純白の衣装は、どう見ても天使か女神にしか見えないものであり、


「私は『ラルナ』。あなた方全ての母にして、この星の守護神です」


 そのエルメルの第一印象はしっかりと当たっていた。


「そういや、勢力を決める女神たちがそんな名前を言ってたような……」


 ログアウトする前。疲労と睡眠に押しつぶされかけていた朧げな記憶を手繰り寄せ、どこかで聞いたその名前を、どこで聞いたかを思い出すエルメル。


「ええ。彼女たちには様々なことを頼んでいます。私は、今はそちらには居ないので」

「んでもこうして目の前にいるじゃん? 何? 見せているのは幻ですって感じ?」

「その通りです。遠く離れた場所から、私の一部を具現化しているにすぎません」

「ほーん。んで? ここは何する場所?」


 何やら事情がありそうなことを含んで話すラルナに対し、とりあえず要件は? と急かすエルメル。


「ここは新たな力に目覚める場所。……転職と言った方が分かりますか?」


 困ったような笑顔を見せて、エルメルの問いに答えたラルナは、


「転職!? マジで!? 生意気なこと言ってすいませんっしたっ!!」


 目の前で瞬時に土下座のポーズに移行したエルメルを見て、苦笑いを浮かべるしかなかったのだった。

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