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激震

「ほう」


 新スキルのうちの一つの効果を確認し、思わず感嘆の声を上げたのはごまイワシ。

 彼の放ったスキル、[クロスポイント]は、ターゲットとした敵を、スキルで作り出した自分の分身と共に交差しながら切り抜けるというもので。

 しかもスキルの終わりに、分身と立ち位置を入れ替えるか、それともそのままでいるかが選べるという癖が強そうなスキルであった。

 この分身はスキルを解決するとすぐに消滅してしまうが、そんなことは些細な事。

 あらゆるゲームに置いて、リアル回避極の悩みは攻撃後の硬直などによる隙であり、二択とはいえ立ち位置の調整を行えるこのスキルは、ごまイワシにしてみればありがたい代物。

 さらに、


「あ、ちゃんと毒になってるみたいでござるね」


 スキルがヒットしてもすぐには倒れなかった砂虎は、切り抜けたごまイワシへ襲い掛かろうと振り向いた瞬間、その体を砂に変える。


「毒でも死ぬって分かったのは、収穫でござるかな」


 ゲームによっては、毒のダメージでは敵を倒せない場合もある。

 その場合、敵の体力は1になるわけだが、どうやらこのゲームではそのまま力尽きる様子。

 それを確認し、さて他のスキルを……と次のスキルを試そうとするごまイワシの近くで……。


「ひゃっはー。た~のし~!」


 何やらハイテンションになっている†フィフィ†が一人。


「何事でござ――うおっ!?」


 その声の方向を振り向いたごまイワシは、先ほどまで周囲にいた砂虎がきれいさっぱり掃除されている事に驚いて。

 その掃除をした本人は、少し離れたところにて、砂虎と格闘中。

 右ストレート、左アッパー、かかと落としの順番で、流れるように砂虎を砂に変えると、砂塵を巻き上げながら次の砂虎へと跳躍。

 今度はかかと落としからの後ろ回し蹴りという、どうしてそうなるのか理解できない動きで砂に変え、さらに次の砂虎へ。

 縦横無尽に暴れまわる†フィフィ†は、あらかた近くの砂虎を倒し終わると……。


「快っ感!!」


 まぶしいほどの笑顔で近くにいたごまイワシにダブルピース。


「楽しそうでござるねぇ」

「もう最っ高! 聞いて聞いて、うちの極振りが存分に生かせるスキルだったの!」


 その笑顔のまま、高いテンションで新しいスキルの効果の説明を始める†フィフィ†。

 曰く、


「MPを消費し続けて、消費している間ステータスと攻撃挙動が変化するってスキルなんだけどさ! 今さっきの通り、現実だと実現できそうにない動きも何のそので出来ちゃってさ!」


 とのこと。

 MP極振りのため、同レベル帯のプレイヤーよりも圧倒的に多いMPを持つ†フィフィ†は、単純にそのスキルの接続時間が他よりも長いということで。


「ポーション類のアイテムは使えなくなるし、武器の変更とかも出来ないんだけどさ、スキルは使えるし、そのスキルも変化するしでハチャメチャに楽しい!」


 何より、今までの戦闘スタイルと違うガチガチのインファイトは、どうやら†フィフィ†にとっては楽しいものらしかった。


「†フィフィ†ネキがそんなにテンション高くなってるの久しぶりでござるよ。ちなみにそのスキルの弱点とかあるでござる?」

「体力が一定以下になると自動解除だし、MP無くなってもそう。あと、クールタイムが十分ってのが激痛だと思う」

「なるほど。てことはエンチャでMP増やすのは理に適っているわけでござるか」

「エルちゃんみたく、ダメージ効率が常に上がっているわけじゃないし、ステータスの上り幅も多分他に振ってる場合には届かないと思うんだけど、接続時間長いのは普通に強いと思う」


 ただ、ちゃんと……というか当たり前に各種制限は受けているらしく、一番のネックは再発動まで十分かかるということか。

 その点にさえ目をつぶれば、あるいは、その点を克服さえすれば、超優秀スキルである。


「あぁ、そういう事か。やっとスキルの特性が分かったわ」


 そして、そんな話をしている近くで、新しいスキルの発動を宣言したものの、発動せずに今までスキル説明を読んでいたマンチは、ようやく納得がいったと手を叩いた。


「[オーラブレード]!」


 そして、たまたま直線に並んだ砂虎三体を、貫通する遠距離攻撃で攻撃した後、


「こういう事だろ!? [パープルレイン]!!」


 先ほど発動しなかったスキルを発動。

 すると……。

 

「やっぱりな!」


 攻撃し、マンチへとターゲットを向けた三体の砂虎の頭上から、突如として紫色の雨が降り注ぎ。

 どう見ても体に悪いとしか思えないそれは、案の定砂虎に毒ダメージを与え……。

 その姿を砂へと変える。


「追撃系のスキルでござるか?」

「だな。先に攻撃当てとかないと反応しないんだわこれ」

「距離関係なく追撃は普通に強そう」

「しかもこれ、ダメージはどうも魔法ダメっぽくてさ。魔法ダメプラス、毒のダメージで体力が溶けるんだよ」

「これまた優秀そうな」

「一気に狩りの効率変わるわ」


 †フィフィ†程ではないが、テンションが上がっているマンチは、リポップしてきた砂虎へまたも[オーラブレード]を放ち、[パープルレイン]で追撃。

 その砂虎が倒れる前に、次の砂虎へと攻撃を開始し、先の砂虎が砂に変わった直後にまた[パープルレイン]で追撃、と、†フィフィ†の[メイクアップ]と違い、短いクールタイムを存分に生かして戦うようで。

 マンチの言う通り、狩りの効率が一気に良化することとなった。

 ……とはいえ四人が狙う砂虎のドロップ品はレアドロップなわけで。

 いかに効率を上げようが、確率の壁は常に行く手を遮るわけで。

 結局、四人で合わせて目標の三百に届くころには、狩り始めてから五時間が経過したのだった。

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