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イエスロリータノータッチ

「だぁぁっ!! クッソ!! 動きがぐちゃぐちゃで狙えねぇっ!!」


 仰け反り倒れたオアシスイーターに、今がチャンスとひび割れた尾の先を狙うエルメルとごまイワシ。

 しかし、すぐに体勢を立て直したオアシスイーターは、倒れる前とで動きを変えて。

 具体的には、目の前で動き回ってはいたが、大きなダメージを与えてこないエルメルとごまイワシよりも。

 脚を攻撃し、さらには弱点属性の雷攻撃をしてくるプレイヤー達へと標的を定めた。

 さらに、エルメル達を狙っていた時よりも、尾の動きが活発になり。

 上下左右、奥に手前にと不規則に揺れ動くその尾の動きにエルメルは翻弄され。

 ようやく捉えたかと思えば、プレイヤーへの攻撃の直前で直撃しそうになったりと、自分を狙っていた時とは違う勝手に悪戦苦闘。


「一旦落ち着くでござるよ。拙者たちを狙っていないのだから、時間はあるでござる」


 オアシスイーターの背中。つまりはオアシスがある部分に陣取っている二人に、ハサミ攻撃も尾による攻撃も届かない。

 ヘイトが向いていないのだから、振り落とされすらしない。

 だからこそ、エルメルには面白くないわけで。

 そんなエルメルをなだめ、MPポーションを呷るごまイワシが、


「尻尾とか登れると楽なんでござるけどねぇ」


 と、呟いたとき。


「[追い風]! [風精霊の加護]!!」


 二人に、バフが付与されて。


「誰でござる?」


 周囲を見渡すごまイワシの近くに。


「助太刀しますよ」


 降りてきたのは一羽の鷹。

 その鷹は、エルメルとごまイワシに背中に乗るように言ってきて。


「尻尾の高さまで案内致しますよ」

「ありがたいけど、特にお返しとかは出来ねぇぞ?」

「幼女に踏まれるのがお返しでは?」


 自然に。真顔で。

 いや、鷹なのであまり表情は変わっていないが、声色からして真剣に。

 そう返した正体不明の鷹へ、特に遠慮なく乗り込むごまイワシとエルメル。


「ずっと上空にいたのは貴殿だったでござるね」

「気付かれていましたか」

「スキルとか多用するゆえ、視点がコロコロ切り替わるでござるよ。視界に何度か入っていたでござる」

「あとはまぁ、影とかあったし」


 上昇しながら、そんな会話をしている二人と一羽の目の前を、超高速で何かが横切って。

 それは、寸分狂わずオアシスイーターのひび割れた尾の先へと命中し――爆ぜた。

 空気を伝わってくる轟音と衝撃。

 同時に反動でしなり、大きく弾き飛んだ尾の先は、ひびの範囲が一層広がって。


「跳んでください!」


 鷹が言うが早いか、鷹の背にいた二人は踏み込んで大きく跳び。


「[流転]!!」

「[刃速華断]!!」


 ごまイワシはスキルで近づいて。

 エルメルは、近付くことが含まれたスキルで攻撃し、追撃に入る。


「[乱雨斬(みだれぎり)]!!」


 エルメルによる八回の攻撃音に続く、ごまイワシの五連撃。

 けれどもひびの進行は先ほどと変わらず。


「まだだ! [薙ぎ払い]!!」


 記憶の耳飾りの中のスキルを発動したとき、明確な違和感がエルメルを襲う。


「うおぉっ!?」


 剣を横に振り、斬りつけたり物を飛ばしたり人を飛ばしたりするスキルだったはずなのに。

 スキル発動と同時に、持っていた獲物が消える速度で振り回され。

 聞こえてきた攻撃音は()()

 そして、少し遅れて追加で十回。

 計二十回の連撃は、どうやらダメージが足りていたらしく。

 ビギリッ! と、ひびの進行は尾の先端全域に及び。


「決めろ! ごま!」

「合点承知の助!! [切り抜け]!」


 ごまイワシの追撃。けれども、威力が足りなかったらしく、破壊には至らず。


「だったら最終手段でござるよ! [流転]!!」


 [切り行け]によって開いた距離を移動スキルで詰め、ごまイワシは尾の先端に肉薄。


「これなら当たるでござろう! くらえでござるぅ!!」


 武器を持ち換え、攻撃エンチャントがフルで付与されたモンキーバナナによる攻撃を行うと……。

 ガギンッ!! と音を立て、尾の先端の甲殻が……砕け散った。


「最後の一撃は……切ない」

「余韻に浸んな! まだ追撃すっぞ!!」


 まるで仕事を終えたとばかりに呟くごまイワシへ、エルメルは檄を飛ばすと。


「[刃速華断]!! あ、肉斬りつける感触クッソ楽しい」

「いや、拙者攻撃スキルのクールタイムまだ明けてないでござるし。エルたそ敏捷のおかげでだいぶクールタイム減ってるでござるよ?」


 攻撃しないのではなく、出来ない理由を告げ、仕方なくスキルなしで尾の肉を切りつけるごまイワシ。


「敏捷が『-10』になってから世界変わり過ぎだわ。多分スキルの後に追撃一回付与されてるし」

「異様にヒット音すると思ったら原因それでござるか。ていうか、単純に一撃追加って火力二倍と同義なのでは?」

「普通にやばいと思う。ただ、ステータス上昇だけで行くとレベル150相当なわけで。それなら妥当じゃね?」

「装備のエンチャに敏捷極する想定がなかったパティーンでござるね」


 いまだにヘイトが向かないのをいいことに、ひたすらに尾への攻撃を続けている二人。

 落下しそうになると、エルメルはダッシュを含むスキルである[迅速果断]を。

 ごまイワシは移動スキルで尾の高さを維持。

 空中で戦い続ける様に、先ほどまで二人を乗せていた鷹も思わず、


(これ、私居なくてもよかったのでは?)


 なんて考えが頭をよぎってしまう。

 ――そこへ、


「ごまさん! 準備が整いましたよ!」


 どこから現れたか、ヘルミが、ごまイワシへと叫ぶ。


「拙者たち何かやることあるでござるか!?」

「特には!」

「何故呼んだし!!」


 思わずずっこけそうなやり取りの後、声だけはかけたと、ヘルミはその場から姿を消すのだった。

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