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それぞれの戦い方

「お、マジで? めっちゃ嬉しい」


 その思いを正直に受け取って。


「けどちょっと待ってな。あのサソリどうにかしなきゃだから」


 けれども、それどころではないと言葉を残して走り去ってしまった。


「素っ気なくて悪いな」

「いや、レイド中に談笑会ってわけにもいかないだろうから平気」


 咄嗟にフォローを入れるマンチに、状況からみて当然の反応だと返す紫陽花。

 ただ、その声には一振りの寂しさが加えられていたが。


「さて、私らも続き続き。詠唱終わったらまっすぐ敵に突っ込むから、護衛よろしく~」

「任せろって。あいつらほどじゃねぇけど攻撃捌いて見せるさ」

「ていうかなんて(ジョブ)なの?」


 気を取り直して詠唱を始めようとする紫陽花に、選択した職業を尋ねる†フィフィ†。

 それは、純粋な興味からの質問だったが……、


「魔装士。地水炎風雷の中から一つ選んで自分に纏わせて戦うジョブ。選択したのは雷ね」


 その質問にはちゃんと答えてくれて、その後に詠唱に入る紫陽花。


「我が身に宿れ轟雷よ。霹靂(へきれき)よ。武器と成り、防具と成りて、阻むものを打ち倒す力に!!」


 バヂリと、紫陽花の周りに小さく電光が走り。


「[雷装:金猿]!!」


 その電光が、紫陽花の体の表面に絶えず発生し始める。


「スーパーサ〇ヤ人みてぇ」

「強さが覚醒した主人公的な凄みがある」

「全く同じ感想を持ったから何も言えない……」


 その様子を見て、感想を口にするマンチと†フィフィ†に、何も言えない紫陽花。


「とりあえず、準備完了。ある程度他のスキル発動するとまた再装備しなくちゃだから、その時は後ろに下がるよ」

「りょ。見た目かっこいいし楽しそうだけど同時にめんどくさそうだなそれ」

「そのめんどくさいのが楽しいんじゃん?」

「わかるけどさぁ!!」


 駆け出しながら自分のジョブの戦い方を説明する紫陽花と、それを追うように駆け出すマンチと†フィフィ†。

 さっそく攻撃してきたオアシスイーターのハサミによる一撃を剣で受け、紫陽花を先に行かせたマンチは……、


「クッソ重い! あとは任せた!!」


 早々に脱落を宣言。


「早くない!?」

「いや、こいつの攻撃受けきるの無理だって!!」


 止めたのは一瞬だけ。その一瞬でハサミに挟まれないようにと上に飛んだマンチは、オアシスイーターと目が合った。


「あ、俺死んだ」

「骨は海にまけばいい?」

「骨になる前に助けてくれ」


 全てを悟ったマンチは遺言を残し、少しでもあがこうと剣を構え、オアシスイーターの攻撃に備えると。

 ――突如、オアシスイーターが大きく仰け反って横に倒れた。


「おろ? 助かった?」

「ずっと後ろ足を攻撃してたから、そこの部位破壊でも起きたんじゃない?」

「今がチャーンス。気付けの一発かましてきま~す」


 結果的に救われたマンチは状況を把握しようと周囲を見渡すが、†フィフィ†の言う通りに後ろ足に物理打撃武器を持ったプレイヤーが集結しているのを見つけて納得。

 オアシスイーターの顔面へと駆けていった紫陽花を追いかけながら、


(今まで大して効いてる反応じゃなかったのに、一気に倒れるまでいくかね?)


 なんて考えを心の片隅に思うのだった。



「琥珀様。ナイスな一撃です」

「ダメージは蓄積してたんだろうけど、うまくダウン取れてよかったよ」


 スコープから目を離し、銃口から上がる煙を吹いて散らす。

 ボルトハンドルを引いて薬莢を輩出。そのままハンドルを押し戻して装填を終え、またスコープを覗く琥珀。


「黒曜、次はどこを狙う?」

「尾などは如何ですか? 先ほどヒビが入り、今でも攻撃は続けられていますが進歩はないみたいですし」

「りょ。クールタイムが終わったら即ぶっ放す」

「私も戦ってよろしいでしょうか?」

「えー」

「えーって……」


 先ほどからずっとオアシスイーターの頭上を漂い、戦況を報告し続けた黒曜が、そろそろ戦闘に参加したいと琥珀に伝えると、帰ってきたのは子供のような反応。

 その反応に黒曜が困惑していると、


「まぁ、いいか。あ、でもどうせならバフ撒いといてくれない? 尻尾攻撃してる人魚と幼女にさ」


 という琥珀からの指示が。


「かしこまりました。……しかし、なぜ?」


 その指示を了承し、けれども浮かんだ疑問を、琥珀へと尋ねる。

 今まで他人にバフを撒けという指示を出したことがない琥珀が、今その指示を出した真意を。


「別に? ただ、見た感じあの二人の動きが他と違うから。バフかけておけば使えるんじゃないかなって」


 そして、返ってきたのは、スコープ越しに戦況を見つめていた琥珀の感想。

 たった二人でオアシスイーターのヘイトを買い、しかもそれを捌いていたプレイヤースキル。

 時折、琥珀が目で追えないほどの速度で移動する人魚(ごまイワシ)

 速度は普通なのに、カウンターや受け流しといった、可能なのはわかるがどうしてやれているのか理解できない幼女(エルメル)

 タイプは違えど、超近接で戦いながら、床を舐めない二人を琥珀は評価した。


「では、そのように」


 そう言って鷹の操作に意識を移した黒曜から意識を外し、スコープで覗く先へと意識を集中。

 狙うはオアシスイーターの尻尾の先端。エルメルが攻撃し、ひびを入れたその一点。

 深呼吸一つ。クールタイムが終わったのを確認し、


「[メテオシュート]!!」


 琥珀は、引き金を強く引いた。

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