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共闘戦線

「うおっ!? 地震?」


 ピラミッドに入る寸前、揺れを感じたエルメル達は一旦ピラミッドに入るのを中断。

 リアルの地震ならばVRシステムの安全装置により強制的に現実に引き戻されるが、それがされないとなればその揺れはゲーム内の演出というわけで。

 ならば何事かと周囲を見渡して。


「なーんか遠くに見えませんかー?」

「でっかいシルエットでござるねぇ~?」


 遠くに、何やら大きなシルエットを確認。

 そして、そのシルエットに群がる小粒ほどのプレイヤー達が確認できる。


「行くor向かう」

「急行する」

「デスヨネー」


 そして、多くのプレイヤーが集って戦っているということは、何かしらのイベントに違いない。

 そう考えた四人は、既に向かいながらそんなことを言い合っていた。


「とうとうエリアボス出現?」

「どうでござろ。無きにしも非ずって感じとしか」

「エリアボス倒してもまだ拠点ボスいるし、早いとこ制圧しとかねぇとまた『侵攻(インベーション)』が来るぞ」

「エリアボスとお祈りしながら戦う?」


 シルエットに向かう途中、何体かの砂虎に絡まれるが、それで時間を食う実力ではもはやなく。

 四人で袋叩きにしてまたシルエットへ。

 そうしていると、だんだんとシルエットの全容が見えてくる。


「あー……サソリかぁ」

「物理防御固そう」

「ハサミも絶対威力高いし、尻尾には毒があるんで御座ろうなぁ……」

「よし、ならプランAだな」


 エルメル達からは、巨大なサソリとプレイヤーとが戦っているということしか見えず。

 その戦いで、どれくらいのダメージを稼げているかは分からない。

 ただ、まるっきり効いていないようには感じ取れた。


「プランA了解」

「ちなみにプランAって?」

「プランAはアレだよ」

「あー……アレね。……アレって?」

「アレはお前、プランAだろ」


 特に作戦なんて決めているはずもなく。

 というか、この四人が取れる戦い方など一つしかない。

 すなわち、


「やられる前にやる。でござるよ」


 ごまイワシの言葉が回答である。

 先ほどまでのパルティがいる状態ならば、防衛気味に戦って消耗戦を仕掛けてもパルティの回復のおかげで何とかなっていた。

 しかし、現在パルティはログアウトしてしまっているわけで。

 その戦い方は使えない。

 ――そもそも、あの大サソリ相手に消耗戦に持ち込めるかは疑問だが。


「んー? 見知った顔がひとーつ、ふたーつ」

「どなたどなた?」

「手品師とアーチャーのコンビでござるねぇ」


 近づくにつれ、プレイヤーの姿を判別できるようになり、その中に、見知った顔を見つけるごまイワシ。

 前線でシルクハットを飛ばし、トランプを投げ、手に持つステッキで大サソリのハサミを捌く長身スーツ眼鏡のお姉さんであるヘルミと。

 ヘルミ達前線から一歩、二歩ほど離れた場所で弓を引き絞ってサソリの顔を狙って射出している全身毛皮でもふもふのビオチット。

 その姿を見た瞬間、エルメルとマンチは内心安堵した。

 自分らが勝てなかったプロゲーマーが今回は味方なのだ、と。

 ――しかし、


「あんまりダメージ入ってないでござるね。ちょーっと厳しそうでござる」


 そんな二人を他所に、最初から仲間のプロゲーマーは目に入る情報から様々な状況を想定。

 どうすれば一番効率がいいか。自分は活躍できるか。どう動くのが適切か。

 あらゆる状況を考え、思考し、自分の中でまとめ上げる。

 と、


『組んでいたパーティを解散。レイドパーティへと参加しました』


 システムメッセージが流れてきて。


「レイド!? エリアボスじゃないでござるか!?」

「ともあれ倒さなきゃなんねぇんだろ!?」

「やるっきゃねぇな!!」


 四人はとりあえず前線組に合流する。


「ヘルミ! 状況報告!!」

「何を――、突如オアシスが現れ、近づいたらこいつが出現しました。現在戦闘から十分ほどが経過。攻撃、魔法共に目立ったダメージなし。なので、どこかしらに弱点が設定されていて、弱点以外では有効打にならないと考えられます」

「攻撃した個所は?」

「頭、ハサミ、尻尾、胴体。なので、おそらく弱点は腹部かと」

「ひっくり返せってか? この巨体を?」

「なので攻めあぐねているんですよ!」


 合流直後にヘルミの前。オアシスイーターの眼前に躍り出たごまイワシは、ヘルミに状況説明を要求。

 一瞬、誰かわからなかったヘルミは言い返そうとして。見たことのあるショタ人魚であると確認して状況を説明。

 さらに、現在行おうとしていることも添えた報告に、ごまイワシはサムズアップ。


「こっから先はヘイトは任せろでござる。後ろで連携してひっくり返す算段を」

「了解。お任せしました」


 ごまイワシの――同じプロチームのメンバーである引きこもりセサミの実力はよく知っている。

 だからこそ、最初の発見者でありほかのプレイヤーよりは多少操作に自信があり、ヘイト役を買って出たヘルミは、その役割をごまイワシにパスした。


「タンクは!?」

「後衛守るのとほかの前衛を優先してもらってます。……あなたもこちらに?」


 そんなごまイワシの横に、当たり前に立つエルメルへ。

 投げかけられた質問に答えながら尋ねるヘルミ。


「俺もガッチガチの前線なもんで。それに、ごまイワシだけを活躍させられねぇだろ」


 ヘルミに笑顔を向ける軍服狐耳幼女は、オレンジ色の刀身の剣を肩に担ぎ。


「血沸き肉躍るぜぇっ!!」


 その見た目らしからぬ言葉を吠えた。

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