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ある意味で本番はここから

「お、もうか」

「レベル上がったでござるねー」


 ホルスの遣いを累計三十体。

 武器とスキルが一新されたエルメルを中心に狩っているとレベルが目標に到達。

 視聴者から拍手やギフトコメントが相次ぎ、それを読み上げながらピラミッドからの脱出を図る一同。


「なまらべらんめぇさん千二百円、おマッチョさん八百円、TASさん五千円……ちょっと流石に被弾がヤバいんで町に戻ってから読み上げるでござるよ!」


 道中で視線を外しながらの逃亡には流石に無理があったらしく、スカラベ地帯でそう言って回避に専念するごまイワシ。


「パルティもお疲れな。……ぶっちゃけ不味かったろ?」

「不味い?」

「経験値の話」

「あ、なるほど。普通に美味しかったですよ?」

「マジか。……あー、ヒーラーは回復でも経験値入るんだっけ」

「そうですね。私もちゃんとレベル上がりましたし」


 本来は暇になりやすい移動中も、パーティであれば退屈しない。

 

「パルティって今いくつ位?」

「私は今18ですよ?」

「うん。知ってはいたけどレベル負けてるよな」

「まぁ、レベルは強さの指標であって、強さに直結しているわけではないでござるから……」

「とはいえ長時間狩りをしていた身としてはやっぱり効率悪い狩り方してるんだなって実感するわ」

「効率厨からしてみたら、なんでわざわざ手数狩りしてるんだって話なんだろうけどね」


 好奇心で聞いたパルティのレベル。

 それは当然のようにエルメル達を越えているもので。

 クランメンバーと共に一撃狩りパーティでレベルを上げていたパルティのレベルが、エルメル達手数狩りとの差を如実に表していた。


「あ、そう言えばなんですけど~」

「どしたのエルたそ?」

「先ほどレベルアップでステータスポイント振ったところ~。なんと~」

「なんと~?」

「敏捷の数値が変化しました!」

「なんと!? えらいこっちゃで!?」


 そして思い出したように報告される敏捷値の変化。

 レベル15。そこまでのステータスポイント全てを注ぎ込んで、ようやく初めて変動したエルメルの現在の敏捷値は――、


「晴れて『-1』になりました!」

「あ、マイナスになってくんだ?」

「ちなみに変化してからの攻撃はどんな感じでござる?」

「まだ殴ってないから分かんねぇ。帰りに蛇ワンセット倒していかない? なんか変化したかそこで見るから」

「りょ。んじゃあそろそろでござるね」


 ミイラ空間を抜け、ツタンサーペント群生地へ。

 ピラミッドの外に向かうポータルを確認し、手近なツタンサーペントに向かって、エルメルは攻撃を振りかぶるのだった。



「それではお疲れ様でした!」

「おつ~」

「おつおつ~。ありがとね~」

「お疲れ~」


 町に戻り、ログアウトするパルティを見送った四人は、エンチャントが可能になるイベントを求めてイエローデザートを練り歩く。


「にしても悲しかったでござるねエルたそ」

「言うな」

「敏捷-1じゃあ何も変化してなかったもんね」

「お願いだから言うな」

「レベル15までポイント振って変化無しかー」

「マジで言わないで」


 町に戻る最中の敏捷値変化後の初戦闘は。

 特にこれまでと変化なく終了し。

 エルメル本人が、まるで数値の変化前と感覚が変わらないと感想を漏らした。

 結果、今のように煽られるようになってしまったわけで。


「マジで死にステだったわ。これマジで何の役に立つの?」

「一応、クールタイムに影響出てるんじゃないの?」

「出てても0.1秒くらいだぞこれ……。体感マジで変わんねぇんだもん」

「まぁ、そっちの方がネタとしては美味しい……。うん? あれっぽくない?」


 †フィフィ†が指差した先には、巨大なハンマーを片手に燃え盛る窯の前で仁王立ちしているNPCが佇んでいて。

 頭上には、【ビルゴード・マックス】と表示されていた。

 そのビルゴートの前には、プレイヤーが密集するように集まっており。

 ビルゴートが、何らかの役割を担っていることを示していた。


「んじゃあ近付いてみますか」

「うむ」


 そのビルゴードに近づいていくと……。


「おぉいてめぇら」


 向こうから声をかけてきた。


「お前らだお前ら。如何にも駆け出し感満載のおめぇらだよ」


 エルメル達を指差しそう声をかけ、手招きをしてくるビルゴード。


「何で駆け出しって分かったか不思議って顔してんな?」

「別に全くそんなこと無いでござるけどね?」

「あぁん?」

「黙っとけごま」


 イベントらしく説明が始まると思いきや、ごまイワシの発言で一瞬不穏な空気に。


「ったく。お前ら装備にエンチャント施してねぇだろ。だから駆け出しだって分かったんだよ」


 しかしそれは本当に一瞬で、イベントによる説明がちゃんと始まった。


「そもそもエンチャントが何かって話からだが、装備に追加で能力を付与することを指す。この追加する能力ってのはステータスだったり、追加攻撃だったり、特殊効果だったり様々だな。持ってる装備を確認してみろ。エンチャント可能な効果が表示されてっから」


 言われて確認する四人は、確かに自分の装備にエンチャント可能な効果が定められていることを確認する。


「んで、どうやってエンチャントするかって話なんだが、まず素材がいる。この素材はモンスターのドロップ品だったり、鉱物だったり、まぁ付与する能力で変わる。だから、まずは装備に付与したい能力を決めて俺んとこ持って来い。そしたら、その能力付与するために必要なアイテムを教えっから」


 エンチャントも、ただ行えるわけではない。

 決められた素材を消費して装備に能力を付与するものである。


「まぁ、習うより慣れろ。装備を一つ寄こしな。初回って事で素材は俺が持ってるものを使ってやるからよ」


 そう言って手を伸ばしてくるビルゴードに、四人はそれぞれ武器を渡す……が。


「あー、こいつは無理だ。別のにしろ」


 ユニーク武器を渡したエルメルだけが、受け取りを拒否され。

 他に何かないかと装備欄を見ていたエルメルは、ふと気が付いて『手作りのペンダント』をビルゴードに渡す。


「これなら大丈夫だ。んで、これから装備にどの能力をつけるかを選ぶわけだが……希望はあるか? なけりゃあ俺の独断で付与しとくが?」


 するとそう尋ねてきた。


「体力が付くなら体力。つかないなら攻撃でいいでござる」

「最大MP。つかないなら同じく攻撃」

「魔法力が凹んでるから魔法力。つかないならやっぱり攻撃」

「敏捷。つかないなら断腸の思いで攻撃」


 それに対しての四人の返事は、自身が行うと決めたネタ振りに忠実なもので。

 NPCであるハズのビルゴードにすら、鼻で笑われるのだった。

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