調べたら出てくる
「たっめし斬り♪ たっめし斬り♪」
「これ以上に無いくらい上機嫌でござるなぁ」
「ユニーク装備いいなぁ……」
ごまイワシとパルティが足止めしていた二体のホルスの遣いも無事に倒し。
先ほどドロップした【王家を守護する従僕の剣】をマンチから受け取ったエルメルは。
ワクワクしながらその剣を装備。
ブロードソードと違い、薄オレンジ色の刀身は砂、あるいは濁った金を連想させるような見た目。
柄には宝石が散りばめられており、一目でレアリティの高い装備だと分かるようになっている。
例えば、今現在パルティが装備している杖と同じような見た目である。
「……って、パルティもユニーク武器なのか」
「あ、はい。と言ってもこれは私が手に入れたのではなく、クランの方から譲っていただいたんですけど」
エルメルの剣と同じく、薄オレンジ色の見た目の杖は、先端に同じくオレンジに光る宝石がつけられていて。
杖全体に、蛇が絡みついているような趣向が見て取れた。
「性能的に強い?」
「強い……かどうかは分かりませんけど、便利だと思います。スキルが複数あるので」
そんな武器の使い勝手を聞いてみると、聞き捨てならない単語が聞こえ。
「え? スキルって各武器に一つじゃないの!?」
「マジかよ……。あ、ほんとだ。この剣スキルが三つもあるわ」
「やべぇ! 羨ましい! ……渡さなきゃよかった!」
「どーせどっかのタイミングでユニーク出るまで落ちませんキャンペーンやるでござろう。それまでの辛抱にござるよ」
四人が騒ぎ始める中。
「武器だけじゃなくて、防具にもついていることありますよ? 私のフードについてるスキルが、さっきの範囲回復ですし」
とさらに四人が知らない情報を披露するパルティ。
「マジ?」
「? はい」
「ちなみにそれもユニーク?」
「多分……? 【砂虎柄のフード】って名前なのでピラミッドの外の敵の……」
「ごまイワシせんせー」
「どうしたでござるマンチ君」
「ユニーク狩りが、したいです!」
明かされた新情報、防具にもスキルが刻まれているという事実は、マンチはもちろん、他の三人の心を揺れ動かすもので。
具体的に言えば、今すぐにでも手に入れに行きたいと思ってしまうもので。
「とりあえず、目標を定めようでござる。何レベになるまで狩るとか」
「エンチャ解禁される15」
「もうあとちょっとだし、15になったら多分シナリオ進行かイベントあるでしょ? だからそのタイミングで町に戻ろ? その後に情報仕入れてそれぞれ欲しいユニーク装備落す敵を乱獲ってのはどう?」
それを抑えるために出したごまイワシの提案に、即座にボーダーを設定するエルメルと、ボーダーを越えた後の動きを提案する†フィフィ†。
「俺は構わねぇぜ」
「マンチに同じ」
「言い出しっぺが嫌って言うわけもなく」
「パルティはどうでござるか?」
四人がその提案を受け入れたところで、最後にパルティへ確認すると。
「流石に、町に戻ったタイミングで落ちます」
と、常識的な答えが返ってきた。
「りょ。と言うか俺らに付き合わせて悪いなマジで」
「いえ。皆さんには本当にお世話になりましたし、それに、楽しいので」
彼女を除いた四人が床を舐めて置いてけぼりにしてしまったり、四人の都合で狩る場所を変えたり、目的が変わったり。
そんな、本当に振り回されていたパルティだが、本人は楽しんでいるようで。
「皆さん賑やかで、見ていてハラハラしますし、動きとか、凄いと思いますし、本当に楽しいです」
それが、心からの感想なのだと聞いている四人は理解する。
「なんか、嬉しいよな」
「照れるでござるぅ~」
「楽しんでくれてるならいいや」
「ていうかやっぱり危なっかしいと思ってるんだな」
それを受け、四人がそれぞれの感想を口にして。
『他ゲーとかで本当に作業と化してる配信とか、淡々と狩ってるだけの配信とかあるし、賑やかで楽しいのには同意』
『ていうか動きが逐一違いすぎて飽きない』
『画面からちょっと目を離すと状況が変わってて混乱することすらある』
パルティの感想に乗ったコメントも流れてきて、心の中でガッツポーズするごまイワシ。
「さて、じゃあもうひと踏ん張り行くでござるよ。エルたそは早めにスキルの使い勝手把握しとくでござるよ?」
「四十秒で把握しなー」
「三分待て。それで十分だ」
「カラータイマーが鳴っちゃうじゃないか」
次の行動も決まり、区切りをつけるためにも早くレベルを上げなければ。
武器を持ち換えたエルメルに軽い煽りを入れつつ、まだこちらに気が付いていないホルスの遣いへと、ごまイワシは不意打ちを喰らわせるのだった。
*
「[刃]!」
[幅断ち]よりもさらに長い距離。
それを、ダッシュではなく跳躍で詰めたエルメルは、剣を体の内から外に向かう軌道で振るい。
詠唱中に喰らった事で、仰け反ったホルスの遣いへ、
「[速]!」
一瞬で背後に回り、返す刃の横薙ぎをすれ違いざまにお見舞いし。
「[華]!」
エルメルを追おうと、反転したホルスの遣いの視界にはすでにエルメルの姿はなく。
ホルスの遣いの頭上に跳躍していたエルメルは、そのまま剣を振り下ろし。
ホルスの遣いの顔面へ、縦振りをクリーンヒットさせると。
「[断]!」
とどめとばかりに目一杯に腕を伸ばした突きをお見舞いし、ホルスの遣いから大きく距離を取る。
「そのスキルカッコいいでござるなぁ……」
その光景を指を咥えてみていたごまイワシがポツリと感想をこぼして。
「スキルで四連撃組めるのズルくない?」
「お前も連撃スキル持ってるだろうが」
†フィフィ†が羨ましそうに言うが、†フィフィ†もたとえ連撃数がエルメルの半分であろうが連撃スキルは持っており。
その事をマンチにツッコまれる。
「これでトドメだ!」
スキルで仰け反り、吹っ飛んだホルスの遣いへ。
詠唱を開始するのも待たずに突っ込んだエルメルは、そんな声をあげる。
当然、翼によるビンタが襲ってくるが、
「スローすぎて欠伸が出るぜ!! [後の先]!!」
剣を構えてそのビンタを防ぐと、目にも止まらぬ速度のカウンターでホルスの遣いを切り伏せる。
「一丁上がり!」
「慣れるのはえー」
「もうエルちゃん一人でいいんじゃないかな」
「拙者たちのユニーク欲しいでござる」
「うし。スキル把握したし体にも馴染んだからさっさと狩ろうぜ。ありがと、練習の為に手を出さないでくれて」
新しい武器に新しいスキル。
その仕様感を確かめるために、あえて一対一でホルスの遣いと戦っていたエルメルはそうお礼と報告を伝え。
待ってましたとばかりに武器を構える三人達と、近くにいるホルスの遣いへと襲い掛かるのだった。