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バカばっか

「やっぱり数がいないと楽だな」


 コメントにて流れてきた『上!』という警告文。

 それを見たごまイワシが見上げれば、先ほどよりも劇的に減ったスカラベの群れ。

 このくらいの数ならと余裕綽々で戦闘を終えた五人は、この場に留まって安全に狩るか、それとももう少し進んでみて今よりも効率よく狩れそうな場所を探すかを考え始めた。


「安定ならこの場で狩る一択だろうな。先がどうなってるとか、どんな敵が出てくるかなんてパルティはともかく俺らは知らねぇわけだし」


 とマンチ。


「実際さっきもエルちゃん倒れてたら危なかったんじゃない? ってのを考えると先に進むのはリスク高いよね。効率が上がるかもわかんないし」


 とは†フィフィ†。


「俺らの目的はレベル上げなわけで、なんでそんなことしてるかって話だと上の連中に追いつくためだろ? 床舐めたらその分効率が落ちるわけだし、現状経験値がマズいってわけでもない。議論するまでもねぇよ」


 とエルメルが言い、


「んじゃあ多数決するでござるよ? この場に留まって狩ることに賛成の人ー」


 自分からは特に話すこともないのか、進行に徹したごまイワシの呼びかけに――、


「はい。……あれ? 私一人ですか?」


 パルティだけが、手を挙げた。


「いや~、この状況なら奥行くでしょ」

「だな。リスクとか効率とかもうそっちのけで、他にどんな敵がいるのか見ておきたいし」

「配信の見栄え的にも安定重視の狩りとか退屈だろ? だったら行くしかねぇ」

「これが、この者達の最後の言葉になろうとは、この時はまだ、誰の知る由でもなかった」

「なにゲームオーバーにしてんだよごま」


 そのパルティに、分かってないな、とでも言いたげに説明する三人。

 その後、ごまイワシが某RPGゲームの全滅時に流れるナレーションを言うが、その通りになってたまるかとは全員の思い。


「でも! この先は――」

「ネタバレはダメだぞー。鬼が出るか蛇が出るか、分からないから初見ゲーってのは楽しいんだぜ?」


 一人のゲーマーとして。

 一人のプレイヤーとして。

 楽しいから。ドキドキするから。

 だからこそエルメル達は、安定を捨て、リスクだらけのピラミッドの奥へと進むと決めた。

 たとえそれが、


『マジでやめとけ。秒で死ぬぞ』

『最初の床舐めになると予想』

『全滅しなかったらギフト投げますね』


 と、コメントで誰もが無謀であると示している先でも、である。



「素直にコメントに従っておくべきだったでござるね」

「いや、マジでそれな」

「まさか急に敵が魔法使ってくるって思わなかったもんね」

「魔法耐久ぺらっぺらな俺らが耐えられるわけもなく」


 四人で、仲良く。

 全力でリスポーンしたイエローデザートから、先ほど自分たちが死んだピラミッドの内部へと。

 ……正確には、ピラミッドの内部に取り残す形になってしまったパルティのもとへと。

 全力でダッシュをきめていた。

 あれから、暗闇の中降ってくるスカラベを無視して突っ切ると、見えたのは大きな炎の光。

 まさかボスか? と思う中、視界に入ってきたのは翼の生えた――いや、腕が翼になっているハーピーのような敵であり。

 その敵の名前は『ホルスの遣い』。

 神、あるいはその代理者であるファラオに仕えるその名前は、ボスが間近であることを如実に示しており。

 喜び勇んで攻撃を仕掛けた四人に向けて、周囲のホルスの遣いから、風魔法が繰り出された。

 四方八方から襲い来る風魔法。それらは、魔法防御に一切の補正がないエルメル達の体力を、秒で溶かすほどの密度と威力であり。

 結果は、ごまイワシ以外に初めての床ペロを。

 ごまイワシには三度目の床ペロを経験させた。


「にしても、あの女神の話長かったな」

「分かる。後半無限に連打して飛ばしてたもん」

「某モグラのおっさん思い出したわ。リセットしたら出てくる奴」

「分かるわー」


 当たり前のようにピラミッドの入り口を瞬間解答で出現させ。

 ツタンサーペント地帯を抜けてミイラ地帯へ。


『何か対策あるの? また行っても同じようにやられるだけだと思うんだけど?』


 パルティの所に向かっている途中、そんなコメントが寄せられた。


「対策? そんなもん決まってるでござるよ」

「お? なんだなんだ?」

「また負けると思うけど対策は? ってコメントが来たんでござるよ」

「なるほど? んで? 対策って?」


 そのコメントに反応すれば、当然周りも反応するわけで。

 三人の視線がごまイワシに集まると、当のごまイワシは……、


「ズバッと避けて、ガーッと攻撃すれば勝ちでござるよ!」


 渾身の握りこぶしを振り上げながら、そう解答。

 なお、現在地点はミイラ地帯であり、エルメル達の背後にはしっかりとしたフォームで走るミイラが追いかけてきている状態。

 そんな状態で立ち止まって拳を突き上げればどうなるか。

 ――簡単である。


「あ、ちょっ!? まっ……[流転]! さらに[流転]!!」


 ミイラ達に巻き込まれ、見る見るうちに体力を減らしたごまイワシは咄嗟に武器を持ち換え、記憶のイヤリングと合わせてスキルを二連発。

 すんでの所で、連続床ペロを回避した。


「あ、危なかったでござる」


 ホッと安堵しミイラ地帯を抜け、ホッと安堵した瞬間。

 階段の先に蠢くスカラベの大雨によって、体力が減っていたごまイワシだけが、再び床を舐めることになった。

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