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認めたくないものだな。バカさゆえの過ちというものは

「ご飯に呼ばれたので行ってきますね」


 補給を終えてツタンサーペントを籠り狩り、ポーションが切れればまた補給に戻って……。

 というヘビーローテーションを繰り返すこと八時間。

 流石に空腹を覚えたパルティが、次の補給のタイミングでご飯に抜けると連絡し。

 一旦小休止を行おう、と町に戻ってきた。

 当然その八時間全てが配信されており、コメントには、


『仕事から帰ってきたらまだやってた』


 だの、


『仮眠前と絵面が変わってねぇ!?』


 といったコメントが見られ。

 けれども明らかに最適化された動きでツタンサーペントを流れるように討伐していくエルメル達を見ると、そんな茶化すコメントも少なくなっていき。

 画面酔いを訴える者、動きに理解が追い付かず説明を求める者、逐一感想を残すものなど流れるコメントは多数。

 そんなコメント達も、小休止と聞いて今日の配信は終わりかと、画面の向こうで伸びをするが……。


「行ってら~。拙者たちも軽く食べて、一時間後くらいに配信再開するでござるよ」


 と、ごまイワシは……というか、パルティ含めた五人は続行する気満々であり。


『まだやるのかよ……』


 という、呆れに近いコメントに対して、


「多分明後日くらいまで拙者らは狩るでござるよ? 夜通し狩り配信を見る覚悟はいいか? 俺は出来てる」


 と、視聴者を煽るごまイワシ。


「つってもあの蛇ばっか倒し飽きたし、次はもう少し奥に進んでみねぇ?」

「さんせー。ていうか蛇ばっか倒してたけど経験値は美味かったね」

「背伸び狩りだからなぁ……。これで不味かったら時間の無駄なわけで」


 前の町、ブルーリゾート近辺での八時間狩った時には二レベル上がった。

 しかし今回の籠り狩りで上昇したレベルは四と倍増しており、背伸び狩りの方が効率がいいことが証明された。

 ……当然っちゃ当然であるが。


「んじゃー一時間後くらいにまた会おうぞー。サラダバー」

「サラダバー」


 と、配信向けに絞めの挨拶を行い、配信を閉じ。

 離席機能を用いて各々は小休止を取り始めた。



「まぁ、ピラミッドだからそんな気はしてた」

「ミイラって定番よね」

「問題は人型な所なんでござるよ。カウンター判定と当たり判定がシビアで」


 小休止後。

 具体的には入浴と食事を済ませたエルメル以下五名は、きっかり一時間後に再度集結して配信を再開。

 再開直後に、


『マジで戻ってきた』

『長時間配信お疲れさまとこれからがんばれって意味込めてギフト投げときます』


 と言ったコメントに歓迎され。

 ごまイワシの配信にて初めてとなるギフト――いわゆる投げ銭コメントが送られて。


「ひゃっほう! 『私の頭の中の鍋掴み』さん千円ギフトごちそうさまでござる!!」


 その事実に、一気にテンションが最高潮になるごまイワシ。

 そんなテンションの上がったごまイワシに、


「ちょっ!? なんかミイラが綺麗なフォームでダッシュこいてきたんだけど!?」


 お手本のようなランニングフォームでごまイワシに駆け寄ってきたミイラは、五人の四方をを囲む様に位置取ると。


「ウガーァッ!!」


 両手を上げて威嚇。


「隙あり!」

「まぁ、バカ丸出し」

「脳みそ腐ってんだろ」

「捕まるかバーカでござる!!」


 当然、そんな隙を見逃す筈もない四人は、瞬時にミイラの脇を抜けながら。

 各々がスキルを発動し、すり抜けざまに攻撃を命中させる。

 ――が、


「怯みすらしねぇぞ!?」

「えーっと? 『ミイラは体力が非常に高いので狩りに向きません』らしいでござる!」

「攻撃当ててタゲ取っちゃったからこいつらだけ倒すぞ!!」


 先ほどまでのツタンサーペントとは違い、攻撃を当てても怯むことはなく。

 その原因は、ツタンサーペントよりもはるかに多い体力のせいだとコメントにて教えられ。

 逃げたいが、自分たちが攻撃してヘイトを買ってしまっている以上、他のプレイヤーへの迷惑と、何より動画的に放置するのはマナーが悪い。

 結果、攻撃してしまった四体のミイラだけは倒すためにすり抜け後反転。

 長期戦を予想して覚悟を決めたエルメル達は……。


孤児(みなしご)の命。導かれるまま、光となりて、眩く先を照らし給え。[ホーリーフォース]!!」


 全身から光を放ち、四体のミイラをまとめて倒すパルティを目撃する。


「……え、つっよ」

「パルティそんなに火力あるんでござるか?」

「あ、いえ。あのミイラって敵は魔法と光属性が弱点なので……」

「綺麗に弱点つけてたってわけか」


 あまりにも呆気なく、簡単にミイラを倒したパルティに何事かと尋ねれば。

 単に弱点をつけていたからと答えが返ってきて。


『うん。見てて思ったけど近接職しかいないから、今後もっと倒すのが面倒な敵出てくると思うよ?』


 という、知ってた。と言いたげなコメントが流れる始末。

 それを受けて、


「まぁ、そん時はそん時でござるよ。かの有名な言葉を知っているでござるか?」


 と、逆に視聴者に問いかけるごまイワシ。

 ? というコメントが流れる中、


「敵を倒すにはどうすればいいですか?」


 と、わざと子供のような言い方で問いかけたごまイワシに、


「レベルを上げて物理で殴ればいい」


 即答するエルメル。


『それって某クソゲーの……』


 というコメントを余所に、


「レベルが思ったように上がりません。どうすれば効率がいいですか?」

「レベルを上げて物理で殴れ」


 今度はマンチが、ごまイワシの質問に即答する。


「えぇと、その回答だと質問と合わせて破綻しているような……」


 至極もっともなパルティの感想は四人の笑顔のサムズアップで黙殺され、


「さーどんどん狩るでござるよー!」

「敵、狩る」

 

 エルメルとごまイワシを筆頭に、ミイラ以外の敵を求めて一同は奥へと歩みを進めるのだった。


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