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「初めまして。どうやら()()()パルティが世話になっているようで」


 顔sが知る頃のパルティは装備していなかったブレスレットを見ながら、やや威圧的にそう言えば。


「初めましてでござるよ。世話なんてとんでもない。むしろ拙者たちの方が彼女のお世話になっているくらいでござる」


 そんなことは無い、と手を振って躱すごまイワシ。


「自己紹介をしておきましょうか。クラン【ROOK WIZ】のマスターをしています。顔sです。以後お見知りおきを」


 丁寧に、そして自信に満ちて。

 自分の名前は誰しもが知っているだろうという予想から、彼をそうさせたのだが……。


「これは丁寧にどうもでござる。拙者は――」

「俺はマンチ、よろしくな」


 挨拶をされ、ならばと返そうとしたごまイワシの言葉を遮って、マンチが自己紹介を。

 そして、その理由に辿り着いた†フィフィ†も続く。


「うちは†フィフィ†。よろりん~」


 正直なところ、マンチも†フィフィ†も、顔sに――【ROOK WIZ】に関わるつもりはない。

 だからこそ名前以外口にしない雑な自己紹介であるし、同じ意思の残りのエルメルとごまイワシも同様だった。


「エルメル。よろしく」

「ごまイワシでござるよ」


 ただ、マンチや†フィフィ†と違ったのは、その名前が知れ渡っているか否かである。

 二人が自分の名前を口にした瞬間、【ROOK WIZ】のメンバー達からどよめきが起こる。


「エルメルってあの?」

「侵攻の功績一位だった二人か?」

「何でそんな二人が」


 そんな事を口々に言い合う中、顔sは、


(……うちのクランには要りませんね。私より功績があるとマスターとしての権威が下がります)


 なんてことを考えて、


(ということをどうせ考えてるんでござろうなぁ。……まぁ、誘われても加入するわけ無いでござるが)


 その考えを、ごまイワシには読まれていて。


「あなた方が侵攻の功績一位だったんですね」

「そっちだって三位でござろう」


 興味も無いような、互いの功績の確認を行い、


「これから拠点ボスを討伐しに行きますが……よければご一緒しませんか?」


 そう尋ねた顔sに対して。


「残念でござるなぁ。拙者、美女からの誘い以外乗らないと決めているでござる」

「そうですか。それは残念です」


 適当にあしらったごまイワシ。

 もちろん、ついてくると思っていなかった顔sはこれを受け流し、


「では皆さん、行くとしましょう」


 未だ静まらないメンバーを引き連れて、奥へと進んでいく。

 そのメンバーの中には、エルメル達とお近づきになりたい考えのものが結構数いたが、クランマスターである顔sの促しに素直に応え。

 ぞろぞろと、ピラミッドの中を移動していく。


「大名行列」


 ぼそっと。その後ろ姿を見ながらそんな事を呟いたエルメルに、


「ぶふっ」

「言うなし」

「その言葉卑怯だわー」


 耐えきれず吹き出したマンチと、ツッコミを入れるごまイワシに†フィフィ†。


「とりあえず補給に行くでござるよ。途中で配信も再開するでござるから」

「そだねー」

「アクシデントあったから何しようとしてたか飛んでたわ。そうだったな」

「パルティもまだ大丈夫でござる?」

「はい! 今日は夜中まで大丈夫です!」


 ポータルを潜り、イエローデザートまで戻って補給を行い、やる気満々のパルティを引き連れて再び籠り作業。

 もちろん、ピラミッドに入るためにはスフィンクスの問いかけに答えなければならないのだが、


「ホルスの息子で、ジャッカルの――」

「ドゥアムトエフ」


 †フィフィ†が瞬殺でポータルを出現させる。


「え……すごい。覚えてるんですか?」

「うん。前に気になって調べたことがあってね」


 それに驚愕するパルティにピースサインを送り、上機嫌になった†フィフィ†はこの後、調子に乗って突撃し、慌てて反応したごまイワシとエルメルに救出される羽目になった。



「良かったんですか? 連れて来なくて」


 ピラミッドを移動しながら、顔sにクランメンバーの一人が尋ねる。


「どちらをですか? パルティを? それとも、あの二人を?」


 それに対し、逆に静かに尋ねた顔sに対し……、


「いや……その……」


 押し黙ってしまうメンバー。

 元から連れて行く気が無かったパルティを、と言えば話を聞いていない、理解していないと取られるかもしれないし。

 かと言って功績一位の二人を、と答えれば、それは拠点ボスの討伐方法を、自分たちでは見つけられないと宣言しているも同義。

 未だに討伐方法が見つかってない以上、もしエルメルとごまイワシを連れて討伐してしまうと、さらに彼らに功績を与えてしまう事になってしまう。

 そんなこと、クランの誰もが望んでいない事だ。


「まぁ、構いませんけどね。ただ、あの二人はどこのクランに入る気でしょうかね」


 そんなメンバーの事を咎めない。だからそれ以上は言うな、という意思を込めて、構わないと発言した後。

 むしろ気がかりにしている方を口にした顔sは。


(どこに入ろうと加入したクランは大体的に宣伝に使う筈。勝ち馬に乗りたいプレイヤーは多数いますし、看板として非常に強力。……また、彼らがクランを立ち上げたにしろ、加入希望者は後を絶たないでしょう。……勢力争いが混沌と化しますね)


 一人、誰にも言えない胸中を閉じ込めながら、ピラミッドを進むのだった。

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