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あぁ、あいつはとってもいい奴だったよ

「えっと、皆さんまだここで狩りを続けられますか?」

「そのつもりだけどどうかした?」


 数えるのもそろそろ面倒になってくるほどにツタンサーペントの波を退けた小休止。

 その途中で、パルティが四人へと尋ねる。


「えぇっと……今から知り合いの方々がここに来るらしいんですけど、目的が拠点ボスの討伐らしくて――」

「ふむ。続けたまえ」


 この時点で、パルティが言わんとしていることは分かった。

 ただ、それも九割がた――つまりは()()の状態であり。

 残りの一割の外れの可能性も考えて、ごまイワシは続きを促す。


「もしよければ、一緒に拠点ボスを倒さないか、とのことです」

「なるほど」


 そして、その予想が当たっていたことを受け、ごまイワシは、


「ちょっと尋ねるでござるが……パルティ」

「何でしょうか?」

「その討伐、()()()でござる?」


 一つ、思い当たった結論を口にした。

 

「多分、二桁行かない位だと思うんですけど……」

「あー……何となく分かったからオッケーでござる」

「つまり、どういうことだってばよ?」

「何と言うか、ただ拠点ボスを倒すだけじゃダメなんでござるよ。何かしら条件があって、その条件を満たしてはじめてこの拠点を制圧できる仕様になってるんでござる」


 結果、その結論もまた的中しており。

 一人で納得するごまイワシへ、エルメルがその真意を尋ねれば。

 ただの憶測……にしては具体的であり得そうな仕様に、思わず納得してしまう四人。


「んで、パルティのいるクランの方針は、『条件探すより何度も挑んでたまたま条件が合うまでチャレンジした方が早い』って感じなはずでござる」

「つまり脳筋、と」

「脳筋というより、俺バカだからよ。分かんねぇからよ。って感じだな」

「けどさ、それって要は拠点ボス以外がトリガーだと永遠に終わんないよね?」


 会ってもいなければ話したこともない。

 なのに、的確に【ROOK WIZ】の方針を見抜いたごまイワシ。

 それに対してぼろクソに言っている気もするが、現状出来ることと言えばそうやって回数をこなすか、様々な事を試す以外の選択肢はないわけで。


「多分でござるが、いくつかのギルドと共闘してるはずでござる。その中で、一番戦力あるパルティの所が周回を請け負った感じでござろうな~」

「納得。けど、だったら他のクランは何してると?」

「他の状況とかまるで分からんから憶測でござるが、実は倒す順番があって、先にエリアボスを倒さないと拠点を制圧できない説とか」


 何も知らない筈なのに。

 今までのプレイヤーが制圧できないという情報と、パルティから得た僅かな情報だけで。

 【ROOK WIZ】の顔sを含めたクランリーダー会議の内容の一つに辿り着いたごまイワシは、


「あとは、ピラミッドの外で何かフラグを立てとかなきゃいけない説もありそう」

「あり得る。あとは討伐速度。時間かけて特定のセリフ聞かなきゃ制圧判定に行かないとか、前のゲームであったよな?」

「あったあった。逆に速攻で倒すってのもありそう。あとは人数制限とか」

「全部あり得そうでござるなぁ」


 他の三人が次々に挙げていく拠点制圧のためのあり得そうな条件に相槌を打つ。


「んで、本題に戻るでござるがー。どうせなら拙者たちは、他の手を借りずに拙者たちの手で拠点ボスを倒したいでござる。配信の見栄え的にも」

「最後の一言がマジで余計」

「けどまぁ、真意よな。既に何度も倒してる奴らに同伴して倒して、何が面白いかって話で」

「となるとパルティちゃんとはお別れかなー?」

「へ? 私はついていく気はありませんけど?」

「へ? 大丈夫なんでござるか?」


 結果、誰一人として同行して拠点ボスを倒そうとは言わなかったわけで。

 だったらとパルティをパーティから外そうとしていると、パルティから予想外の言葉が。


「多分……。でも、私、今までも何かしているときに無理やり連れていかれたって事は無くて」


 一人で狩りをしていたり、生産職に勤しんでいたり。

 その途中で、手は空いているか? と尋ねられたことはあれど、作業を中断して一緒に来い、とは言われたことはなく。

 だったら今回も大丈夫なのでは? との考えで、エルメル達と狩り続けることを選んだ。


「……もしかして、パルティって結構優遇されてる?」

「そう……なのでしょうか?」

「クラマス次第と思うけどね、その辺。けどまぁ、緩い……かなぁ」


 話がそれなりに長くなったこともあり、ピラミッドの外へと続くポータル付近に移動し。

 ツタンサーペントが近付いて来ないことを確認して。


「とりあえず、一旦補給の為に町に戻らない? 割とポーションの消耗激しいんだよね」

「賛成。パルティも来る?」

「はい!」

「んじゃあ一旦町へ」


 そう言って、町に戻るためにポータルを潜ろうとしたとき。


「んお!?」


 ポータルから――つまりはピラミッドの外から、ピラミッドの内部へと複数人が転移してきて。

 

「あっ!?」

「ん? パルティか。ここにいたのか」


 その複数人の中で、最初にピラミッドに入ってきた人物、重騎士を思わせる風貌のプレイヤーと。

 パルティが顔を見合わせて同じタイミングで声をあげ。


「あー……配信切りま~す」


 流石に【ROOK WIZ】のクランマスターを配信に流すのはまずいと判断し、即座に配信を閉じたごまイワシ。

 そして、パルティ含めたエルメル達と、顔s率いる【ROOK WIZ】のプレイヤーの間に不穏な空気が漂って……。


「シャーッ!!」


 その空気を変えたのは、誰か他のプレイヤーが打ち漏らした一匹のツタンサーペントであり。


「ふんっ!」


 そのツタンサーペントは、たった今、顔sの一撃によって、討伐された。

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