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『【ROOK WIZ】のトップ平じゃん』


 パルティが現れた瞬間、そんなコメントが流れてきたことを確認したごまイワシは、一旦パルティを配信の画面の外に来るようにカメラワークを調整し、音声をミュート。


「ところでパルティ、今拙者たちは配信してるんでござるが、配信に出演してもらっても構わないでござる?」


 足元のツタンサーペントは飛び掛かってくる前に頭に一撃を与えて攻撃をキャンセルし、直後に襲い掛かってくる周囲のツタンサーペントからは[流転]で距離を取りながら。

 ながら作業にながら作業を重ねてノーダメージでツタンサーペントの猛攻を凌ぎながらの交渉とか言う、ちょっと一般人には理解しがたい行為を行うごまイワシ。


「配信?」

「今の俺らの姿をネット上にリアルライブしてんの。ちょっと前にプロゲーマーと戦って負けたんだけど、負けっぱなしじゃ終われないからって強くなる課程を見守ってもらってて」

「つまり俺らと行動するとキャラの姿とか名前とか会話の内容が配信に乗っちゃうから、嫌がる人は嫌がるからさ」

「パルティちゃんがそういうの大丈夫な人かなーって」


 今一配信の事が分かっていないパルティに、ごまイワシと同様にツタンサーペントを捌きながら説明するエルメル、マンチ、†フィフィ†の三人。


「……多分、大丈夫だと思います」


 理解しきれていないのか、それとも別に何かあるのか、含みのある言い方で返答したパルティだが、その内容は配信OKというもので。


「ついでにもう一個質問なんでござるが」

「何でしょうか?」

「拙者たちと一緒に狩ってくれるかな?」

「いいともー。……合ってますか?」


 配信の出演のOKとは別に、これからの狩りに付き合ってくれるか? というごまイワシの質問に。

 投げかけたごまイワシのネタをしっかり拾った百点の解答を。


「っしゃー! なんか顔馴染みのヒーラーが参戦してくれることになったでござるよ!!」

「体が軽い……? こんな気持ちで戦うの、初めて!」

「即フラグ立てるのやめーや」

「と、とりあえず[シールドクレート]!!」


 配信のミュートを解除し、高らかに宣言するごまイワシと、即座に死亡フラグを立てていくエルメルにツッコむマンチ。

 そんな空気を気にせずに……というか、ついて行けずにとりあえず、と四人にバフ魔法をかけるパルティ。


「お、防御アップ。ありがたいありがたい」


 そのバフを確認し、さらにはポーションを使用しなくても体力の回復を行える、パルティという存在の参戦は。

 良くも悪くも四人の戦闘スタイルを変えていった。

 具体的には超攻撃的に。

 基本、ごまイワシやエルメルのような回避や反応を行えないマンチと†フィフィ†は、その二人より一歩引いた立ち位置で戦っているのだが。

 その一歩を、パルティという存在が踏み込ませた。

 超近接戦闘。四人が四人とも、声も出さず、目線や動きだけで連携し。

 誰かが危険になれば、代わりに誰かが。けん制、防御に回り、その後の補助はパルティが行ってくれて。

 先の侵攻までの短い間、それでもパルティという存在に信頼を寄せるに足る程度には一緒にやってきた四人は、パルティのヒーラーとしての腕をあてにして。

 先ほどまでは出来なかった思い切りのいい行動を――大胆なカウンターや密集させての範囲攻撃などを選択できる。

 結果、パルティが参戦する前の倍近いペースでツタンサーペントの体力を削っていき……。


「ほいラスト。[幅断ち]!」


 最後の一匹も、エルメルのスキルによって倒される。


「最初の波おっつー。やっぱヒーラー居ると全然違うね」

「みなさん、本当に操作お上手なんですね……。私、あんな動き無理ですよ……」

「まぁ、ネタ振りでガチに勝とうとするようなバカだし、あれくらいは出来るよねっていう」

「途中からコメントで酔ったとか書かれてて動きセーブしたんでござるけどね? というかまだ壁キックもバク転も宙がえりもやってないんでござるから常識の範囲内でござらんか?」

「一般人に同意を求めるな。十分異端な動きしてるぞお前」


 敵を倒しきったことで一度緊張の糸を切り、ポーションで回復タイム。


「プハッ。にしてもうまいでござるねぇ。もうすぐレベル上がりそうでござるし」

「やっぱ背伸び狩りで籠るのが一番効率いいんかね?」

「一応狩り方とか調べてはみたんでござるが……、拙者たち、効率で言うと悪い方の狩り方を選択してるんでござるよ」

「効率の悪い狩り方? ……背伸び狩りが?」


 その中で、狩りの効率の話になり、


「まぁ。うん。このゲームの最高効率が、『一撃で狩れる相手を短時間で可能な限り狩る』らしいんでござるよ。んで、この狩り方を確狩りって呼んでて、『複数回攻撃して時間をかけて狩る』のを手数狩りと呼んでるらしくて」


 ゲーム内の狩りの呼称の話に。


「んじゃあこのやり方はダメって事?」

「いやいや。ちゃんと手数狩りにもメリットがあって、確狩りは経験値が上がりやすいんでござるが、手数狩りだとマスタリーアップしやすいらしいんでござるよ」

「なるほど?」

「だから、拙者は考えたんでござる。ガチ勢はどうせ確狩りで効率を求めるでござろう?」

「まぁ、だと思うけど」

「だったら、拙者たちはマスタリー重視のスキル特化成長で育成して、嵌め手搦め手で挑むのが最善なのでは? と」


 ピラミッドの外にいたデザートタイガーなら必要な攻撃は三発。

 ごまイワシの話が本当ならば、一体倒すのに五分以上かかるツタンサーペントよりも、同じ時間で複数のデザートタイガーを狩った方が経験値の伸びはいい。

 ただ、ガチ勢と同じことをして、ガチ勢に勝てるのか? と。

 ネタ振りでスタートどころか準備から遅れているのに追いつけるのか? と。


「なるほど。怪我させるわけかい」

「まぁ、マスタリー次第でござるが、映像見直す限りエルたその撃ち返しは刺さりかけてたみたいでござるし?」

「やって見る価値はある。か」

「あの~……」


 そんな話をしていると、申し訳なさそうにパルティが。


「どした?」

「また、来てますよ?」


 指差す先には先ほどと同じく十体のツタンサーペント。

 無言でサムズアップした四人は、嬉々としてそんなツタンサーペントの群れへと、突撃していった。

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