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お礼を言われたら負け

「まぁ、うん。攻撃喰らわなきゃ余裕でござるな」


 倒したツタンサーペントのドロップ品を回収しながら、そう呟いたごまイワシに対し、コメントで、


『その毒蛇、普通は3~5匹の群れで行動してるから、他のプレイヤーが狩った食い残しだぞ』


 と言われ。


「え? あんなのが群れで行動してるんでござるか?」

「ん? どしたん?」


 思わず聞き返すと、何事だ、と尋ねるエルメル。


「ん、いや。さっきのツタンサーペントは本来群れで行動してるらしいでござる。だから、さっきの一匹しかいないって状況は基本無いらしくて」

「結構手間取らなかったか?」

「動き単調だったからダメージ無かったけど、複数相手にするって考えるとヤバいな」


 ごまイワシがコメントの内容を読み上げると、まじかよ。という反応をする周囲だったが、


「けど経験値は美味しいし、群れ全部倒せばうはうはじゃん?」


 という†フィフィ†のポジティブ発言に。


「まぁ、その通りだよな」

「んだんだ」

「でげすでげす」


 同意を示した三人は。


「っしゃー!! 群れでも束でもかかって来いでござる―」


 まるでごまイワシのそんな咆哮に応えるように。

 再度湧き(リポップ)してきたツタンサーペント総数十体が、


「シャッー!!」


 エルメル達目掛けて、威嚇をしてきた。


「流石にヤバくね?」

「死ぬにはいい日だ」

「武士道と云うは死ぬことと見つけたり」

「覚悟はいいか? うちは出来てる」


 それにたじろいだエルメルはしかし。

 静かに覚悟を決めた三人に(なら)い、


「別にここで倒してしまっても構わんのだろう?」


 本来はフラグでしかないセリフを、あえて倒さなければならない状況で吐くことで、一つの覚悟と表明し。


「構わんというか、倒さないと自分らが死ぬだけでござるけどね」


 そんなごまイワシのツッコミと同時に、まるで示し合わせたかのようにポーションを取り出し飲み干す四人は。


「んじゃあ大乱闘サーペントブラザーズとでも参りますか!」

「一匹ずつ減らす? 満遍なく削ってく?」

「臨機応変で!」


 一気に襲い掛かってきた十匹相手に戦闘を開始。

 一体の時はカウンターを狙っていたが、流石に数が十倍ともなれば、一体を狙っている間に他にやられてしまう。

 だから、回避に専念する。

 多くの視聴者がそう思っていた。

 ――だが、


「[切り抜け]!!」


 当たり前にすれ違いざまの斬撃を放つごまイワシと、


「[横薙ぎ]!!」


 記憶の耳飾りに記憶した、一つ前の装備に刻まれていたスキルを発動するエルメル。

 マスタリー効果により、敵を討ち返せるそのスキルは、向かってくる三体の内の一体を捉え、


「だっしゃおらぁっ!!」


 そのまま振り抜くと、後続の二匹を巻き込んで吹き飛んで。


「[流転]! からの[乱雨斬(みだれぎり)]!!」


 [切り抜け]の移動先に狙って飛ばされた三体のツタンサーペントへ、まとめて斬撃をお見舞いし。

 その後ろでは、


「別に前衛二人だけの芸当じゃねぇぞ!? [ブレードスイング]!」

「素手だからって舐めちゃだめよ。[フルスイング]!!」


 ごまイワシやエルメルだけの特権じゃない、と当たり前にカウンターを決めるマンチと†フィフィ†。


「ほい[流転]。んじゃあこいつらも貰っていくでござるよー」


 エルメルと同じく記憶の耳飾りに入れたスキルを発動し、マンチと†フィフィ†に襲い掛かったツタンサーペントを蹴飛ばして前衛でまとめて相手できる位置まで移動させるごまイワシへ。

 ――カプ。と。

 コミカルな音を出して、足首に噛みつくツタンサーペント。


「ふげっ!?」


 一気に八割の体力を持っていかれ、同時に毒のステータス異常になるごまイワシと、


「うわっ、いたそー」

「ごまであの減りなら俺らじゃ一撃だな」

「回避しても確率でダメージ通るから、やっぱカウンター安定よな」


 冷静に観察したことを口にする三人。


「ちょっ!? 離れるでござるよ!!」

「蛇型の敵は蹴ってはいけない。ちぃ、覚えた」

「見てないで助けて欲しいでござるぅ!!」

「[オーラブレード]!!」


 慌て始めたごまイワシを、仕方なし、と言った感じでスキルを放ち、救出するマンチ。

 無事に噛みついていたツタンサーペントは離れたが、既にごまイワシの体力は一割を下回っており。

 ツタンサーペントの群れは、未だに一匹も減っていない。

 そんな状態で戦えば、流石に全員が床を舐めることになる。

 四人がそう思ったとき、不意に、


「[リカバキア]!!」


 どこからともなく放たれたのは……回復魔法。

 体力と同時に、状態異常も回復させるその回復魔法が、ごまイワシへ。


「辻リカ!? 誰か知らんが助かったでござるよー!!」


 パーティ外からの回復魔法を受け、喜んだごまイワシ。

 内心舌打ちをした三人のうちの複数は置いておき、スキル発動の声がした方を見てみると、


「あの……間に合って、良かったです」


 そこには――。


「パルティ!? 久しぶりじゃん!」


 先の侵攻まで行動を共にしていた初心者。

 根っからの治癒師(ヒーラー)、パルティが立っていて。


「久しぶりでござるな!」

「元気してたみたいだな」

「お久お久ー!!」


 四人がはしゃぎながら、襲い掛かってくるツタンサーペントに迎撃をかましている瞬間を。

 当の名前を呼ばれたパルティは、引きつった笑みで眺めていた。

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