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得意料理はカップ麺

「やぁやぁ皆さんお揃いで」

「呼んだのお前定期。バチバチの籠り狩り脳にしてきた」

「うちもしばらく現実に戻らない覚悟決めて来たー」

「限界まで徹夜した後に飲む酒がうめぇんだこれが。そのうまさを引き出すためにいつまでもやるぞ」


 光樹が『Ceratore(チェルカトーレ)Online(オンライン)』にログインすると、既にスタンバっていたごまイワシ。

 程なくして残りの二人も合流し、配信が始まるかと思いきや。


「とりあえず装備整えるでござるよ」

「武器なら調達しとけって。時間有ったろ?」

「いや、調達するのは防具なんでござるが。……ていうか背伸び狩りに格落ち装備で挑む気だったでござるか?」


 ごまイワシに連れられ、向かったのはイエローデザートの装備屋であり、目的は防具の一新。

 見た目装備のせいで外見からは分からないが、今エルメル達が装備している防具はイベントで貰えた初期装備に毛が生えた程度の代物であり、ごまイワシの言う通り、これから籠り狩りを行うのならば、それらは更新するのに越したことはない。


「言われてみりゃあ確かに、防具は気にしてなかったな」

「武器にスキルが付随してるせいで、視界が武器に偏っちゃうのよね」


 言われてなるほど、と納得するマンチと†フィフィ†。

 別に二人が防具を軽視しているわけではない。

 ただ、それ以上に武器にスキルが入っているという事実が、防具の存在をかすませているだけである。

 最も、スキルの無い防具というのは、今の所――というだけの話だが。


「というわけで防具屋に来たでござるが、店売りだと割といい値段するのでー」

「するのでー?」

「拙者がフリマで売りさばいたエルたそ印のブレスレットの代金を分配するでござーる」


 装備屋に着くと、各人に個人取引を申請し、結構な額の金銭を送っていくごまイワシ。


「高値で売れた?」

「かなり。というか移動速度上昇のスキルだけ桁が一個違う勢いだったので、全部売るの怖くていくつか残してるでござる」

「いや、そりゃそうだろ。移動速度なんて真っ先に強化したい項目だからな普通」


 攻撃、回避。移動以外にも速度が上がれば効率が、難易度が変わる行動は挙げればキリがない。

 他の人より速い。その事実だけで、どれほどのアドバンテージがあるのか、プレイヤーは理解している。

 だからこそ、移動速度アップの効果が付与された装備は高値で取引されていた。


「お、剣士用って言っても重装備と軽装備に分かれてんのな」

「けどエルは軽装備一択だろ」

「まぁな。……全身揃えると確かにいい値段すんな」

「こっからポーションとかの補給って考えると、フリマ活用してなかったら割とつらい?」


 防具のラインナップを確認し、全身こっからここまで。という買い方で購入したエルメルだが、所持金から引かれた代金は結構な金額で。

 ここから回復薬を買うとなると、ごまイワシから渡された資金がほとんど残らない。

 ごまイワシがプレイヤー間取引で資金を調達していなければ、装備の一カ所くらいは諦めていたかもしれないと考えると、エルメルはごまイワシに感謝した。――が、


「生産品が売却額高めだから、多分何とかなるでござる」


 エルメルにだけ関していえば、問題がクリア出来る発言をごまイワシがしたことで、エルメルの心の中での感謝は途中で終わる。


「マジ? 二桁後半あるブレスレット全部売っちまおう」

「補給で足りなくなったらみんなに配ってくれでござるよ?」


 購入直後に、装備屋のNPCに笑顔で詰め寄り、ウィンドウから大量のブレスレットを取り出して押し付けて。


「りょ。ていうかごまとコリンの生産職どうなったん?」


 一つ、気になったことを尋ねるエルメル。


「拙者は錬金術取ったでござるよ? いくつか生産したでござるが、これがめんどくさいめんどくさい」

「うちも取ったよ? 生産職。調合師にしてみた」


 生産を思い出してかゲンナリした表情になるごまイワシと、それとは真逆に楽しかった、という表情をする†フィフィ†。


「それぞれの生産のやり方を簡潔にどうぞ」

「見た事ない食材で数秒単位の精度が求められる蒸し料理」

「カクテル!」

「調合師簡単そうだな」


 マンチが促した生産の説明に、さらに表情が曇って答えるごまイワシと、元気はつらつな†フィフィ†。

 その説明を聞いて素直な感想を吐いたエルメルに、


「まぁ、混ぜる回数とか混ぜる分量とか若干面倒だけど、実際のカクテル作るよりは全然楽。レシピもウィンドウに表示されるし」


 ほんの少しだけぼやきつつも、それでも楽だと言い切る†フィフィ†。

 ……の隣で、


「厨二病に当てられて錬金術とか取るんじゃなかったでござるよ……」


 しこたま後悔しているごまイワシ。


「んで? 材料不明の蒸し料理ってのはどういうこった?」


 どこまで放置しようかと考えたが、長引くと配信までの時間に余裕が無くなってしまうので、渋々すぐにごまイワシに触れたエルメル。

 

「そのまんまでござる。これとこれとこれ入れて右に何回、左に何回かき混ぜて何秒後に火を止めるって工程なんでござるよ」

「煮込み料理じゃなくて蒸し料理なんだ」

「湯気が出るでござるが、この湯気が色が変わるんでござるよ。んで、その湯気が何色になったら止めるとかあって……」

「まぁ、某漫画でも『錬金術は台所から出来た』みたいなこと言ってたし、料理には違いないだろうが……」

「ごまさん料理とかしなさそうだから大変そう」

「自慢じゃないでござるが目玉焼きすら失敗するでござる」


 なんて調子よく話していると、配信の時間が刻一刻と迫ってきて。


「そろそろ移動しないとヤバくね?」


 というマンチの言葉の元、四人は急いで売買を済ませてフィールドに急ぐのだった。

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