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どんがらがっしゃ~ん

 砂、砂、砂。

 イエローデザートという町の名前に恥じない程に、町から一歩出たマップは黄色に染まっており。

 先ほどまでの白い砂浜とは違う、正真正銘の砂漠。

 エルメル達が降り立った場所はそんなところだった。


「わー見晴らしいいなー」


 彼らの視線の先には、水平線しかない程に障害物などなく。

 強いて言うならば地面と同色の為に景色に溶け込んでいるモンスター位なものか。


「つーかさっき襲ってきた砂虎さんが当たり前に闊歩してるのは笑う」


 先ほどイベントでフリックを襲ったモンスターと同じ姿のモンスターが、どうやらこの辺りのマップでは一番ポピュラーなモンスターらしい。

 当然、戦闘を行っている――いや、『狩り』をしているプレイヤーは居るが。


「ていうか虎を狩るってのは字面面白くない?」

「言うてどんなモンスターだろうが『狩る』わけでござるからなぁ……。ほい、ミュート解除。とりあえず貰った武器に内蔵されていたスキルを使って適当に戦ってみるでござるよ」

「お前バナナだけどな」

「弘法筆を選ばず。ごまイワシ武器を選ばず」

「今からバナナ縛りで突き進むらしいでーす」

「わー! 冗談でござるよ!!」


 そんなプレイヤーたちを一瞥し、配信の音声をオンにして。

 アクセル全開で会話し始めるエルメル達。


「んじゃあまず俺からお披露目―! んーと、ブロードソードを装備しましてー。――[幅断ち]!!」


 貰った剣を早速装備し、スキルを振るうエルメルは。

 僅かにダッシュし、一番近くのデザートタイガーへと突っ込むと。

 斜めへと振り下ろす一撃を放つ。

 すると、どうやら不意打ちになったらしく、無防備な鼻っ面に攻撃が直撃。

 生き物さながらに鼻を押さえ、仰け反ったデザートタイガーは、


「二番、†フィフィ†! [フルスイング]!!」


 高らかに宣言された、†フィフィ†の新しいスキル、オーバー気味に腰の捻りを利用した渾身のぶん殴りをまともに食らい、


「三番! マンチ! [オーラブレード]!!」


 マンチのスキル発動後、薄緑色に発光したマンチの剣から、剣の形をした弾が発射され。

 その弾が直撃したデザートタイガーは、姿を砂へと変える。


「四番…………こけます」

「涙吹けよごま」

「ていうか三発で倒せるとか火力上がってない!? さっきまで囲んでボコしないと駄目だったの考えたら」

「何つーか、やっと『狩り』って感じが出て来たよな」


 エルメル達三人から離れたところで一人、まるでバナナの皮を踏んだかの如く盛大にすっ転ぶごまイワシへフォローをかけたのは、エルメルのみ。

 ……そのフォローも追い打ちに近いものであるが。


「一応コメントにあるから読み上げるでござるが、『その辺の敵ならワンパンが基本。三発かかるとか普通に火力なさすぎ』だそうでござるよ?」


 そんな追い打ちに屈することなく、盛り上がる†フィフィ†やマンチへと水を差すごまイワシへ。


「ごまさんさぁ……そういうとこやぞ?」

「知ってるでござる」


 当然向けられるのは白い目線。

 だが、そんなものは慣れたもの、と全く気にしないごまイワシ。


「だからたちが悪いんだが、まぁいいや。他がワンパンだろうが関係ないね。俺らにとって、それまでよりも手数が減らせている。その事実が一番デカい」

「それな。つうか今から効率突き詰めてどうすんのって話。ゲーム序盤とか武器とか装備とかとっかえひっかえして、どれが強いだの強くないだの楽しむ期間だろうに」

「どーせもう少ししたら各職ごとのテンプレ火力装備とか、汎用スキル構成みたいな記事が出るでござるよ。そんなの関係なく拙者たちは遊ぶでござるが」

「ていうかこの配信って、ガチ振り相手に私らネタ振りが通用するのかって配信でしょ? じゃあ汎用スキルで固めて勝てる要素なくない?」


 配信を視聴している視聴者へ、喧嘩を売っているとも取られかねない発言をする四人だが、そもそも「楽しむ」という点においては間違ったことは言っておらず。

 結局のところゲームなのだ。楽しんだ者が最終的に勝ちであり、楽しめずに辞めていくのならそれは負けに等しい。


「まぁ、負けっぱなしとかクソほど面白くないので、あの二人は絶対に分からせるでござるが」

「完全同意。禿同」

「また髪の話してる……」


 だからと言ってガチ勢に負ける気もない、と宣言したごまイワシと、それにヘッドバンキング並みの頷きで同意するエルメル。


「さて、一旦落ち着くために現実見ない?」

「ここVRの中でござるが?」


 そんな二人に一息つこう、と提案した†フィフィ†へ、当たり前のツッコミを入れるごまイワシ。


「いや、ほら……。明らかに視界に入ってきた建造物あるじゃん?」


 を無視し、町から出た直後では確認できなかった。けれども、戦闘の為に僅かに移動した瞬間、視界に入ってきた建造物を指差した†フィフィ†は。


「まぁ、あれが『拠点』なんだろうな」

「砂漠に『拠点』って、駐屯基地をイメージしてたんだが、がっつり建造物だな」

「見た目のせいで中にいる『拠点ボス』もある程度分かっちゃうんでござるよねぇ……」


 三人にも同じ建造物が見えていることを確認し、その建造物の名前を口にする。


「どう見てもピラミッド……だよね?」


 †フィフィ†の指す指の先には、がっつりとピラミッドがそびえ立っていた。

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