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ザ・クリエイター

「では~、手先の器用さを見せていただけます~?」


 ごまイワシに連れられ、細工師の元へとやってきたエルメルに対し、細工師【マカラ】はそう返した。

 細工師に一番必要なのは器用さだから。そうマカラが口にした瞬間、エルメルの前に模型と粘土とスライムが出現。

 どれも片手ほどの大きさであり、スライムに関してはモンスターや魔物として知られている生き物ではなく、洗濯のりやホウ砂水を混ぜて出来るドロドロしたあれ。

 果たして何をさせられるのかと思えば……、


「今から~、私が指示する形に手早く変えられたら~、素質有りとして弟子入りを許可しますね~」


 割烹着に近い衣装の袖をまくり、ほんわかした雰囲気でそう言ったマカラは、


「それじゃあ、粘土を用いてペンダントを作ってみてくださ~い」


 エルメルの返事すら聞かぬまま、ただスタートの合図、と手を鳴らして表明する。


「ちょっ!?」


 突然始まった試験だが、それでも言われたとおりにエルメルは粘土を手に取って。

 自分の思うペンダントの形へと、その形状を変えていった。



「ふぅ。何とかなった」

「ちくそ~!! 負けた~!!」


 デッチとのタイマン。

 その勝負に勝利したマンチは、その事をガイストに報告。

 すると……、


「俺が扱ってるのはガントレットと短刀だが、それでいいんだな?」


 という確認をされる。


「構わねぇ。これから頼むぜ師匠」


 正直な話、今のところその二つを装備する職業はいつメンにはいないのだが。

 どうせプレイヤー間でのトレードやフリマにて使うだろうと、とりあえず生産職を手に入れることを最優先にするマンチ。


「あいよ。これから揉んでやるから、半端な覚悟じゃ痛い目見るぜ」


 そう言って近くにあったグローブをマンチへと放り投げるガイスト。


「これは?」


 それを受け取って尋ねてみると、


「弟子の証だ。離すんじゃねぇぞ」


 という言葉と、


『生産職:鍛冶師(籠手:短刀)を獲得しました』


 というメッセージが。

 そして、アイテムリスト:重要品の中に、『ガイストのグローブ』が追加され。


『今後、町の特定の場所にて、生産が行えるようになりました』


 無事に、マンチは生産職の獲得に成功した。



「なぁ!? ヘベルラルベススってどんな見た目のモンスターだよ!!?」


 マンチがエルメル達を追い、追いつくと。

 そこでは舌を噛みそうなモンスターの名前を連呼しながらスライムを手に取り地団駄を踏んでいる軍服幼女の姿が。


「ごま、状況説明」

「お、マンチニキおかえり~。細工師の試験でモンスターとかを象るってやつに挑戦中で、聞いたことないモンスターをお題に出されて文句言ってる状態」

「なるほど?」


 どうやら、知りもしないモンスターの形を造れと言われたらしく、んなもん出来るかとエルメルが喚いているらしい。


「エル、助言いるか?」

「あぁ!? ……お前、分かんのかよ?」

「任せろ」

「…………頂戴?」


 そんなエルメルにマンチが助け船を出せば、エルメルは妙に上ずった甘い声でマンチへとおねだりをし。

 ゾクリ、と背筋に寒気を覚えたマンチは、振り払うように言い捨てる。


()()()()()()()()()()()! 適当に形作って宣言すりゃクリアだよ!」


 生産職攻略掲示板にて、どのような生産職があるか調べていた時にたまたま見つけた書き込み。

 装飾品を扱う生産職の最後の試験には、架空のモンスターの名前が出されてそれを造れと言われるとのこと。

 この場合、正解はそんなモンスターがいない事を指摘するか、いないと知ったうえで自分で作り出すかの二択。

 そして、生産職と謳っている以上、作り出すのが正解。

 だから、


「これがヘベルラルベススだクソが!!」


 スライムを四等分にし、プロペラのようにくっ付けた状態で宣言したエルメルへ、マカラはにっこりと頷いて。


「合格で~す。あなたを~、私の弟子一号に任命しま~す」


 と。

 その際、自分がつけていたピンバッジを外し、エルメルへと差し出して。


「これが私の弟子の証になるので~、失くしたらダメですよ~?」


 優しく、諭すように。

 そして、マンチと同様アイテムリストの重要品の欄に追加される『マカラのピンバッジ』。


『生産職:金細工師を獲得しました。今後、町の特定の場所にて、生産が行えるようになりました』


 それに遅れるように表示されたメッセージの後、マカラがにっこりと笑い、


「これからよろしくお願いしますね~」


 と手を振った。


「何か、妙に疲れた……」


 それをスルーしてげっそりした顔でマンチとごまイワシの所へと戻ってきたエルメルは、


「つか『金』細工師って出てたな。……てことは金以外取り扱えねぇのか……」

「俺も籠手と短刀専門鍛冶師だぞ? 結構範囲絞られてるよな」

「それだけ種類と数を増やしたかったんでござろう」


 生産職を習得した後で、自分の取得した生産職の種類について初めて触れ。

 マンチも、エルメルのように範囲が狭い事を確認。

 運営の意図を汲み取ったごまイワシだけが納得したように頷いていたが、二人の反応は違う。


「とりあえず、生産がどんなもんか試してみたいよな」

「それな。金細工の素材が簡単に手にはいりゃあいいんだが……」


 そう言ってふと視界の端にあるマップを見た時。

 先ほどまでいたマカラの場所に、クエストが受注できるマークが追加されていることに気が付くエルメル。


「ちょっとさ、あくまで予想なんだけど、試してきていい?」

「何が?」

「何の話でござる?」


 大事な部分を綺麗に抜かし、二人に応えるよりも前にマカラの所へとダッシュで近寄ったエルメルは。


「ビンゴ!!」


 唐突に、ガッツポーズをするのだった。


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