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最初の一歩

 現実をなんとか受け入れた光樹達は、このメンテナンスが終わるまでの二十四時間を、メンテナンス明けから始まる廃人生活の為の準備期間にすることにした。

 と言っても光樹はすでに買い出しなりを済ませていたため、やる事と言っても特には無く。

 しいて言えばたまったゴミを片付けて、もう一眠りしたくらいか。

 寝る前に『Ceratore(チェルカトーレ)Online(オンライン)』のネット掲示板を巡回し、 案の定運営への文句がボロクソに書き込まれているのを見て内心同意。

 そして、奇跡的にプレイまでこぎ着けたプレイヤーが居ないかを見て回ったが、残念ながらと言うべきか、嬉しい事にと言うべきか。

 皆が皆、ダウンロード段階で止まっていたらしく、プレイ出来た者と思われる書き込みは一切無かった。

 ――時に、人間という者は退屈を一様に嫌う存在である。

 ましてや、今の光樹達の様に暇潰しのゲームを目の前でお預けされている状態であるならば尚更だろう。

 思いのほか眠る事が出来ず、何気なく会議通話へと繋ぐと、すでに他の三人が待機済みだった。


「お前らもか……」

「エルちゃんに言われたく無いなー。というかこんな焦らしプレイ耐えられる奴がこの中に居るわけ無いって話で」

「全面同意。まぁ文句言ったってメンテは早まらないからな。ならこうして話してた方が気が紛れるってもんだ」

「マンチニキって実はさみしがり屋だよね。名前通り猫?」

「渋声おっさんが猫とか寒気するわ」


 光樹と同じようにお預けに耐えられなくなり、雑談に花を咲かせている様子で、マンチを弄っているらしかった。


「タチの可能性も……」

「皆まで言うな! つか想像したくねぇ……」

「私、そういうの嫌いじゃ無いから!」

「コリンは自重しろ! あとマンチは無言怖いから何か喋れ!」

「ウッホ……いいおとk」

「もしもしポリスメン!?」


 ネタの飛び交う中、果たしてネトゲ分の体力が残るかは甚だ疑問だが、くだらない会話のおかげで徐々にメンテナンスが終わる時刻が迫ってきた。

「つかみんな兵糧どれくらい買い込んだ?」

カロリーメイト(カロメ)十個と大量のお茶とコーヒー。あとカップラーメン(カップラ)も十食分くらい」

「うちはまー野菜というかサラダをがっつり。あと熱冷まシートを大人買い」

「好きだねぇ、熱冷ま。自分は惣菜パンとコーヒー大量。あとレモンを数個。……エルたそは~?」

「俺もあんま変わんねぇぞ。コンビニ弁当とおにぎり、あと栄養ドリンク二箱」


 どれくらい徹夜してゲームをするか分からない為、結構な量の兵糧と呼ばれた徹夜用アイテムを光樹に聞かれ、答え合う一同。 食べ物や飲み物以外の物は眠気覚まし用だろうか。


「毎回思うんだけどマンチさんってよくアイテム無しで三徹とか出来るよね。うちは熱冷ま無いと一徹すら危ういのに」

「集中してると眠気飛ぶんだよなぁ。そのかわりつまらんゲームだとすぐ眠くなるぞ……。俺としては眠気覚ましとか言ってレモン丸かじりする奴の方が信じられん。絶対ゲームどころじゃ無くなる」

「んん、これは導いて差し上げる以外有り得ないwww。レモンは瞬間的に眠気を吹き飛ばす神アイテムですぞ。持たないなんて考えられませんなwwwペヤッwww」

「ぶっちゃけ栄養ドリンクでド安定だろ。潜入者の蛇だって栄養ドリンク飲んでるんだぞ」


 各々が各々のアイテムを茶化し、今か今かとメンテナンスが終わるのを待っていると、 ようやく終了時間が訪れた。


「うっし、時間だな。……お、延長無しで終わってる。珍しい」

「丸一日メンテやってて延長とか運営が死ぬでしょ、常識的に考えて」

「丸一日なら死なないとかいう風潮、一理無い」

「全キャラデリとかした時点で無能のレッテル貼られてる定期。さぁて、ようやく遊べるどん……」


 マウスを滑らせ、淀みの無い動きでゲームをアップデートしていく一同。 パソコンのスペックに差異はあれど、ほとんど同時にアップデートを終える。


「んじゃ、こっからキャラメイクか」

「集合場所決めてそこでゲーム内通話に切り替えようぜ。どうせゴーグル付けるからヘッドセット外さなくちゃだし」

「あいあいさー。いつも通りアイテム屋の裏でOK?」

「いいんじゃないかな。さぁて、君らが驚くようなキャラを作って来るよ」

「例えば?」

「筋肉モリモリマッチョマンの変態だ」

「チェンジで」

 

 ゲーム内で落ち合う場所を決め、ごまとコリンの掛け合いを聞き届けてから光樹は通話を離れてヘッドセットを外す。 そうして、『Ceratore(チェルカトーレ)Online(オンライン)』を始めて以来、初めて 二日以上も装着しなかった籠手型のコントローラーと、VRを体験するための専用ゴーグルを装着して、はやる気持ちを抑えつつ。

 高○名人顔負けの連打で、ゲームスタートボタンを擦る。 ゲームの起動と同時にゴーグルを装着し、ゲーミングチェアに座り直して、光樹の意識はゲームの中へと引き込まれていった。

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