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悪用してくれと言わんばかりの

 今回は一徹と少しだったこともあり、比較的控えめな十時間の睡眠を経て光樹は起床。

 眠気覚ましの風呂を終え、コーヒーでカフェインを摂取。

 ついでに栄養ドリンクを喉を鳴らして飲み干して、ゴーグルをセットし『Ceratore(チェルカトーレ)Online(オンライン)』を起動。

 光樹の意識は、ゆっくりとフルダイブの波に飲み込まれていく。



「って、まだ誰も来てないのか」


 ログインしてみれば、どうやら自分以外のいつもの面子はまだ来ていない様子。

 ログアウト前に回したフレンド登録により、パルティ含めた五人はフレンドになっているが、現在他の四人のキャラは全員ログアウトという表示になっている。

 ならばと自分一人で出来そうなことを行っていくエルメルは、とりあえず配布されたであろう特典を確認することにした。


(アイテム欄にはなし。となると装備……いや、直で装備されてるのはまずねぇだろうし)


 どこに特典があるのかと探していると、マイショップ内にお目当てのものを発見。


(記憶の耳飾り? とりあえず取り出して装備っと)


 それを引っ張り出し、装備――する前に、


(ん? 妙な事書いてなかったか?)


 装備の説明に、ふとエルメルの手が止まる。

 十字光がデザインされたその耳飾りには、


『記憶を司る星を象った耳飾り。着ける者の記憶力を補佐すると伝えられている』


 というフレーバーテキストの後に、


『装備中の装備に刻まれたスキルを一つ抽出し、セットすることが可能。セットしたスキルは、この装備を装備中に使用することが出来ます』


 という文章が。


(え? なにこれ? 汎用性絶対高い奴やん。ていうかスキルが一個増えるってだけで十分にぶっ壊れなのでは?)


 その説明を見たエルメルの率直な感想は、バランスブレイカーなのでは? とのもので。

 実際の所、使用可能なスキルが一つ増えることは手数が増えることに直結し。

 ほとんどのプレイヤーが存在を知れば欲するものであろう。


(配布がこの装備しかないって事はこれが功績一位の特典か。てことは他のは?)


 マイショップ内にはこの耳飾りしか増えておらず、他の特典はと探してみると、なるほど。


(金がめっちゃ増えてるな。……つっても200kくらいか)


 残りの功績はゲーム内通貨へと換金されたらしい。

 ちなみにkはゲーム内通貨の単位ではなく、数え方。

 1kで千。つまり200kは二十万である。


(さてさてお待ちかね。レベルは8になりましたしお寿司。手に入ったステータスポイントは敏捷に振りましょうね~)


 ――が、ダメ!!

 敏捷……微動だにせず!!


(まぁ、覚悟はしてたけどさ。それよりも本題はこっちよ。スキルマスタリーも上がったし、俺はどんな効果が付与されたのからし)


 もはやこれっぽちも期待していなかった敏捷のステータスはあっさりと流し。

 侵攻で上がったマスタリーの確認。


(消費MPに変動なし? って事は効果か?)


 効果を読むも、[抜撃]に変化は見受けられず。

 だったら[薙ぎ払い]かと説明を読むと……。


『強く踏み込んで横に払う斬撃を行う。このスキルの性能は装備者のステータスによって変化する』


 という通常の説明の後に、


『マスタリー効果:敵や物を撃ち返せるようになった』


 という一文が追加されており。

 攻撃や敵どころかプレイヤーを弾いていた侵攻の事を思い出して一人納得。

 とはいえ、このマスタリーの効果が強いかと問われれば……。


(まぁ、受けるや防ぐ、弾く以外に選択肢増えたのはいいっしょ。あとは何だろ……。味方から何かを投げてもらって、それ撃ち返して遠距離攻撃とかか? ……ノックの練習とかしといたほうがいいのか?)


 あまり有用性は感じられない。

 少なくとも、汎用的ではない。というのがエルメルの評価であった。


(びっくりどっきりごまイワシミサイルなんてのは使えそうだけどな)


 一人悪い顔をしていると、ようやく一人目のいつメンがログインしてきた。


「マンチさんちーっす^^」

「顔文字透けて見えるの腹立つからやめーや」


 キャラメイクの時はパルティを拾っていたせいで最後だったマンチが、今回は二番手。

 ログイン直後に軽い煽りを含めた挨拶をしたエルメルを、いつもの事だとスルーしながら、


「んで? 特典はどうだった?」


 と切り込んで。


「多分だけど、ぶっ壊れ。これ後に全員が手に入らないってなると人権に関わる」


 自分の耳に付いている十字光の耳飾りを見せながら、そう説明するエルメル。


「効果を詳しく」

「装備からスキル抽出して記憶。装備中はそのスキルが使える」

「あーはん? 今ん所初期スキルと武器にしかスキル無いけど、それを一手増やせんのか……」


 説明を受けたマンチは、そうかそうかと頷いて。


「ズッル! え、何それズッル!!」

「ドヤ顔ダブピ」


 羨ましそうに耳飾りを見るマンチへ、渾身のドヤ顔とダブルピースを決め込んだエルメルは、


「ざぁこ♥ ざぁこ♥」


 マンチの耳元で、刺さる人には刺さる囁きを呟いて。


「次の侵攻は本気で功績取りに行かなきゃじゃねぇか……」


 刺さらない人であったマンチは次なる侵攻に向けて闘志を燃やす。

 ちなみに刺さる側なのはごまイワシ。


「ま、次の侵攻の功績特典がこれって確証は無いんですけどね」

「言うな!! その可能性が大いにあるけど言うな!! 希望を持たせろ!!」


 ネトゲの中だが現実から目を背けようとするマンチに追い打ちしつつ、エルメルは一つ報告を行う。


「あ、ちなみに」

「うん?」

「敏捷に~、全ステータスポイントを振ったんですが~、何と~」

「何と~?」

「一切変動がありませんでした~!!」

「カス振り乙」


 その報告を受けて一転。エルメルへとバカにしたような、哀れむような目を向けたマンチに向け耳飾りを見せつけるエルメル。

 二人が煽りあう中、


「ういっす。エルたそとマンチニキだけ? †フィフィ†ネキは?」


 三人目のごまイワシが合流。


「まだっぽいぞ?」

「う~ん、ちょっと相談があったんでござるがなぁ……」


 ログインするなりそう切り出したごまイワシは……、


「エルたそ、マンチニキ。ちょいと配信をしたいのでござるが、手伝ってくれるでござるか?」


 今いる二人に、そう尋ねた。

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