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しまった

 三者三様。

 蟻塚の最上階が繋がっていることを、先に来ていたことで把握していたエルメル達はやっと来たかと腰を上げ。

 つい先ほど到着した琥珀率いる【ベーラヤ・スメルチ】のメンバーたちは、その部屋の奥を覗いて合点がいったと納得し。

 たった今到着した【ROOK WIZ】のメンバーたちは、先ほどの【ベーラヤ・スメルチ】のメンバーと同じく他の面々が居ることに驚いて。


「……なぜ?」


 初めに口を開いた顔sからは、今の状況全てに対する疑問が一言で投げかけられる。

 ――ただし、その問いかけは答えられることはなく。

 代わりに飛んできたのは、ごまイワシからの言葉。


「とりあえず全員戦闘態勢を取るでござるよ」


 その言葉にそれぞれが、言われた通りに戦闘態勢を取り――


「私の城に土足でノソノソと。……なんて非常識な方々なのでしょう」


 突如として部屋の奥から聞こえた声に、数人が目を見開く。

 部屋の奥には……、


「あ、蟻だ―!!」


 わざとらしく叫ぶエルメルの言葉通り、これまでよりもひときわ大きな蟻が鎮座しており。

 しかもその蟻は見せつけるように王冠を被っており。

 さらに言えば、他の蟻たちのように武装しておらず。

 そして、見せつけるようによく分からない毛皮の付いたマントを羽織っていた。

 どう見ても女王蟻にしか見えず、そして、そうとしか見せようとしていないその存在は、


「先ほどから私の子供たちを潰し、私の城に無断で入り込み、私とこうして対等に顔を会わせている。……無礼だと思いませんこと?」


 お嬢様口調と言える言葉で、プレイヤーたちを非難する。

 ――が、


「その子供たちってのがその辺歩き回ってる蟻ってんなら、エルフの住処で好き勝手してるからお仕置きしただけな? 本当は親の責任なんだが、どうやら親がその責任果たして無いみたいだったし?」


 喧嘩を売るような勢いでエルメルが女王蟻へと言い返すと、


「あと、基本蟻を倒したのは拙者たちではなく、森の支配者とかいう鳥でござるよ?」


 ごまイワシが、俺らじゃないです。と否定。


「追加で、森の住人のエルフに許可なく勝手にこの建造物作ったみたいだし、土足で踏み込んできているのはそっちね?」

「エルフにも環境権くらいはありますよ? もしやご存じでない?」


 それに乗っかるように琥珀と黒曜も参加。


「以上、あなたが正当ではないという理由ですが、他にも追加で必要ですか?」


 それらをまとめ、槍の切っ先と共に顔sが女王蟻へと突き付ける。

 ――と、


「弱肉強食がこの世の真理でしょう? 弱き存在を無視して何がいけないのです」


 現代において、ファンタジー、あるいは動物界などにのみ適用されている考えを当然のように披露する女王蟻。

 もちろん、今エルメル達が居る世界はゲームの中で、ファンタジーであるために何の問題もないのだが……。


「エルフにも人権はありまーす!」

「それだとエルフは人だと認識することになるでござるよ?」

「え、嫌。エルフはエルフで居てくれないと。人間になんかなり下がっちゃダメ」

「本当にエルフの事になると見境ねぇなコイツ……」


 対象がエルフというだけで暴走気味の†フィフィ†の発言を、いつもの事だとあしらいながら。


「つーことでかかって来いよ。今なら特急券付きで息子たちのところへ送ってやるぜ?」


 もう悪役以外の何物でもないセリフを口にし、エルメルが女王蟻を煽る。

 ……現在、ここ蟻塚の最上階は、武器は構えられるがスキルの発動が出来ない場所であり。

 それはつまり、町などと同じ非戦闘エリアであるということ。

 という事は、この場では戦闘しないか、ここから非戦闘エリアが解除されて戦闘が始まるかの二択しかなく。

 この場にいるプレイヤーたちは、後者の展開を睨んで気を張っていた。


「無礼者め。地獄へと送り込んでくれるわ」


 そして、それは予想通りの展開になったらしく、全員に『非戦闘エリアが解除されました』というメッセージが表示。

 そして、スキルが発動可能になった――瞬間。

 女王蟻側の壁から、無数の蟻が出現。

 産まれたばかりという事を示すためか、よく分からない粘液を垂らし、伸ばしながらプレイヤー達へと向かってくる姿は、一種のパニック映画のような絵面であり。

 エルメル達の配信の視聴者たちが阿鼻叫喚と化すが。

 そんなものに反応しているような余裕は、エルメル達には存在しなかった。


「ウェーブバトルみてぇでワクワクする」

「どっちかというとモンスターハウスの方が近いと思うでござる」


 何故なら好奇心というか、興奮に塗りつぶされているから。


「この状況でよくそんなこと言えるねぇ」

「それが彼らのリズムなのでしょう」


 そんなエルメル達を見て、口ではそう言いながらも楽しそうな琥珀と黒曜。


「私らは出来れば戦いたくないんですけど……」


 なんていう紫陽花も、


「そう言いながらしっかり戦闘態勢なところ好きよ」


 とギルドマスターに言われては、気合が入るというもの。


「顔s殿! 壁役任せるでござるぅ!!」

「避けタンクなら俺らがやるから、タンク役よろしくぅ!!」

「勝手に任命しないでください!!!」


 そうして、顔s率いる【ROOK WIZ】を壁役に、その場に集ったプレイヤーたちは。

 彼ら目がけて押し寄せる蟻たちへと、突撃を実行した。

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