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NISC

「初撃はいただき!」


 縦横武刃を発動し、真っ先に身近の砲台と蟻に肉薄したエルメルは。

 砲台の操作という作業を行うためか、武器を持っていない蟻へと得物を振り下ろす。

 その一撃は、しっかりと逃げようとする蟻の脳天へと振り下ろされて。

 しっかりと追撃も発動するも、その一撃では倒すことは出来ず。


「あん? 砲手の癖に結構かてぇな。……いや、砲手だからか?」


 てっきり一撃で倒せると思っていたエルメルは悪態をつくが。

 むしろ砲撃する以外に目的がないため、いかなる状況でも出来る限り長く砲撃を持続するという目的で固い設定なのでは? と思い当たる。

 ――だからと言ってエルメルのやることは変わらないのだが。


「[羽々斬り]!」


 すなわち、倒せるまで攻撃する、である。

 先程のただ斬りつけた一撃ではなく。

 一定の火力の保障されたスキルと追撃。

 それをもって、ようやく一体目の砲手を倒したエルメルは、


「[刃速華断]!!」


 出し惜しみは無し、とばかりに二体目へとターゲット。

 一体目とは別方向に逃げていたせいで最初の一撃は空振ったが、スキルの間に縦横武刃をねじ込んで距離を伸ばし、その後の三撃はしっかりとヒットさせて二体目も処理。

 周囲を見渡して他の三人を手伝おうと思ったが、


「ほいおしまいでござる」

「らくしょうらくしょう♪」

「まぁ、攻撃してこねぇならな」


 どうやらその必要はなさそうだった。


「うし、次行くぞ」


 周囲を見渡した際、少なくない数のプレイヤーを目撃したエルメルは、奥へと見える階段を目指して駆けだそうとして、


「待つでござる」


 ごまイワシから止められる。


「どした?」

「いや、そんな真正面から馬鹿みたいに進むのはめんどくさいでござる」


 何事なのかと聞いてみると、不真面目の極みのような言葉を口にするごまイワシは、


「階段があるということは上に登っていくんでござろ? んで、ここは丁度吹き抜けのようになっているでござる」


 自分たちのいる、入り口からすぐの広場の上空を指差して、


「拙者ら、空中機動が何故か可能な連中なわけで」


 何やら含んだ言い方をすると……。


「理解した。俺とごまとでマンチコリンを抱えて途中すっ飛ばして上の行けるところまで行こうってことか」

「いぐざくとりー」


 どうやらエルメルは、それでごまイワシが何を言いたいのか理解したらしい。

 スキルのクールタイムをリセットできるごまイワシと。

 敏捷補正のおかげで驚くほどにクールタイムの短いエルメル。

 この二人で、蟻塚の中段をすっ飛ばしてショートカットしてしまおうという魂胆らしい。


「そうと決まれば……。コリン、乗れ」


 早速と†フィフィ†に背中を向けておぶられる指示をするエルメル。


「どっちがどっちを抱えるとか、そういうことは決めないでござる?」


 そのことに意見するごまイワシだが、


「マンチを俺が持つ? 絵面的に大丈夫かそれ?」


 と、幼女におぶられる……あるいは抱っこされる青年陰陽師の姿は色々と問題がありそうで。

 だったら、某緑の勇者の姿をしたショタである†フィフィ†の方が無難かもしれない。

 という結論に達した。

 最も、このごまイワシの出した結論は、どちらかというとエルメルよりもマンチの事を心配しての事であり。

 何だったら、マンチ本人よりもマンチの配信画面を見ている視聴者の事を配慮しての結論だったりする。


「じゃあマンチニキは拙者の腕の中で」

「やないい方だなそれ」


 まぁこちらはこちらでショタ人魚に抱えられる青年という絵面が爆誕するのだが……。


「じゃあ、目標は行けるとこまででござるね」

「委細承知」


 エルメルとごまイワシ、二人の脚と尾びれが地面から離れる寸前にお互いが確認すると。


「何かあったらよろしく」

「絶対何かあるだろ……」


 エルメルの背中に居る†フィフィ†とごまイワシの腕の中にいるマンチがそれぞれ反応し。


「んじゃあ行きますか! [縦横武刃]」

「[縮地]!」


 ようやく四人に追いついた他のプレイヤーを置き去りに、その姿は上階を目掛けて跳躍したのだった。



「助太刀しますよお嬢さん」

「先程から随分頑張られておられるようで」


 ビオチットとヘルミ。二人は最前線で侵攻(インベーション)に抵抗する存在へと声を掛ける。

 その存在は、最前線に立ちながら周囲を回復しつつ戦う存在で。

 そのおかげで前線は常に体力が一定以上に保たれ、前線の維持は後衛の安定に繋がるという好循環を生み出していた。


「へ? ……あ、はい。お願いします」


 その好循環を生み出している存在――パルティは、二人に声を掛けられて振り返る。

 そこへ、砂虎が隙ありとばかりに飛び込んでくるが……。

 パルティに触れる直前、まるで何かに阻まれるように動きが止まり、


「っしょっと」


 そこをビオチットに矢で射られ、砂へと還る。


「しばらく観察してたけど凄いね。君、本当にヒーラー?」

「失礼ですよ?」


 攻撃にステータス上昇魔法、今の障壁に本命の回復と、パルティ単体で多彩な魔法を駆使する様に思わず疑問を抱いたビオチットは、ヘルミからぴしゃりと制されて。


「何でも出来た方が役に立つかなーと」


 凄い、と言われたことに照れながら、そんな事を言うパルティ。

 そんなパルティに更なる声を掛けようとしたとき。


「おい!! なんか来るぞ!!」


 背後から、プレイヤーの一人が声を上げる。

 その声に振り返ると上空を指差すプレイヤー。

 その指差す先には――先程まで倒していたスフィンクスよりも、二回りほど大きいスフィンクスがパルティ達を睨んでいた。

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