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選ばれたのは……あやたk

「コリーン? マンチの野郎を迎えに行かなきゃいけないんだけど~?」


 エルフ達を追い、木陰に隠れたままの†フィフィ†の所へ向かい声をかけたエルメルは。


「……お前、何してんの?」


 エルフ達から距離を取り、まるで慈しむような視線を送っている†フィフィ†に遭遇。


「何してるって……見てわからない?」

「分からないから聞いてるんだが? てか質問を質問で返すな」

「わっかんないかー。これはねー、愛でてるんだよ?」

「眺めてるの間違いでは?」


 そんな会話をしながら、けれども視線はエルフから一切ぶれることはなく。

 彼女曰くの愛でているという行為を続けているが、


「ま、いいや。アグラ持ってくぞ?」


 というエルメルの言葉には人間の反射神経の限界に近い速度で振り返り。

 見る人が見れば悲鳴を上げるような形相でエルメルを睨みつける†フィフィ†。


「は? ダメに決まってるけど?」

「勝手に決めるな。あいついないとマンチがここまで来れんだろうが」

「別に良くない?」


 素でそんなことを口にした†フィフィ†に向かって、大きなため息をつくエルメルとごまイワシ。


「†フィフィ†ネキ、マンチ殿は貴重な戦力でござる」

「ふむ」

「きっとあの鳥を倒す役に立つだろう」

「なるほどなるほど」

「そしてあの鳥の討伐はアグラの願い、『このエリアの解放』に繋がっているとみていい」

「……つまり?」

「マンチニキをここに連れてくるためにアグラを持ち出すのはエルフの為ってこと」


 という説得の後……。


「……ん。分かった。貸したげる」


 という許可が。


「いや、お前のものじゃないんだけどね?」

「シッ! 機嫌損ねてやっぱ貸さないとか言われるとめんどくさいでござる。……それじゃあ連れていくでござるよ」


 少し余計なことを口走りかけたエルメルだったが、ごまイワシに黙らされ。

 二人は、エルフだけで集まっている場所へ。


「すまん。アグラ連れて行くぞ?」


 と、エルフ達にエルメルが声をかけると、その場にいたエルフが一斉にエルメル達の方へと顔を向ける。

 その表情は、まるで信じられないものを聞いたというような表情で。


「今……なんと?」


 薄水色の髪の長身エルフが、そのままの表情で聞き返す。


「いや、だから、アグラディア連れて行くぞって」

「なぜ?」

「なぜ? ……必要だから」


 冗談では? と。 何かの間違いでは? と。

 言葉の端から、表情から、そう滲み出ているエルフ達は次に、


「あなた方がアグラディアと共にしている人間というのは分かっています。その上で言いますが、アグラディアの魔法は風属性の強化魔法だけ。対して私どもは強化魔法はもちろん、攻撃魔法も扱えます。それを聞いてもなお、アグラディアを連れて行くと?」


 そうアピールした。

 たった一つ、一種類の魔法しか使えないアグラディアを選ぶよりも。

 もっと多彩な事が出来る他のエルフを選ぶ方が賢明である。と。

 ……しかし、


「じゃあ聞くが、アグラディアと同じ属性同じ強化魔法で、より効果が高いやつ、いる?」


 というエルメルの質問には誰もが顔を見合わせ、そして、誰もが名乗り出てこない。


「んじゃ決まり。アグラ、行くぞ」


 その結果を受け、やっぱりアグラディアを指名するエルメル。

 言われたアグラディアは、俯きながらエルフ達の中から出てくるが、


「俺らにゃお前が必要なんだよ。自信持て」


 とエルメルに肩車されながら声をかけられ、ようやく前を向く。


「んじゃ、バフよろしくでござるよ」

「え? ごまも来んの?」

「来ちゃダメでござる!?」

「ダメっつーか、別に迎えに行くのは一人でよくね? ただ移動するだけだし」

「なるほど? ……んじゃあ拙者は残ってあの鳥と戯れとくでござるよ」


 一緒に行く気満々だったごまイワシだったが、エルメルに言われて考えること少し。

 確かに一緒に行く意味が薄いと考えたごまイワシはあっさり残ることを選択。


「なるべく最速で戻ってくっから」

「マンチさんの尻蹴飛ばしてでも早くね」

「流石にそこまで行くとマンチニキがかわいそうでござるよ」


 †フィフィ†とごまイワシからそんな言葉を受け取り苦笑いをしながら。


「緑の調べ、透き通れ。塞ぐ壁無し、遮る雲無し。木ノ葉を乗せて、遥か遠くへ。[風寄りて(シュタイフブリーズ)]」


 アグラディアのバフを受けたエルメルは、グリーンフォレストを目指して跳んだ。

 その後ろ姿を見送ったごまイワシは、


「んじゃ拙者らも戦いに戻るでござるかね」


 そう呟くと、


「うちもエルフウォッチに戻る~」


 †フィフィ†も、さも当然のようにそんなことを呟くが、


「拙者『ら』と言ったのが聞こえなかったでござる?」


 ごまイワシは当然そんなことを許さない。


「元から私あんまり戦ってないし……」

「エルたその抜けた穴がデカすぎるんでござるよ。拙者だけじゃどう足掻いても塞ぐのは無理でござる」

「それ、うちが入っても同じなんじゃあ……」

「†フィフィ†ネキならやれば出来る子って信じてるでござるよ」

「雑なフォローどうも」


 ため息をつき、仕方ないなぁ、と一度伸びをした†フィフィ†は、


「エルフの為に身を粉にして働きますかぁ」


 と戦闘態勢へ。


「初めからそうしてくれてたらもう少し楽だったでござるよ」


 というごまイワシのボヤキは聞こえないフリをして。

 †フィフィ†は、ごまイワシよりも先に『森の支配者』に向けて駆けだすのだった。

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