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仕様上の注意

『組んでいたパーティを解散。レイドパーティへと参加しました』


 エルメル達に流れたそのシステムメッセージは、目の前の大ミミズクがレイドボスということを示しており。


「流石に俺らだけじゃ無理なんじゃねぇか?」


 周囲のプレイヤーを巻き込むレイドバトルのはずが、パーティメンバーには変わらず自分たちの名前しかなく。


「サソリと同じくらい厄介だとすると……普通にマズいでござるね」


 イエローデザートで倒した、『オアシスイーター』の事を思い出して苦笑いするごまイワシ。

 そして、


「かくなる上は解禁するでござるか」

「というと?」


 何かをしようと操作が止まる。


「よし、というわけで急な配信失礼するでござるが、ちょっちヘルプでござるよ!」


 ほんの少しの停止の後、動き出したごまイワシの口から出てきたのはそんな言葉。

 どうやら、ゴースティングやストリームスナイプと呼ばれる行為を危惧して行っていなかった配信を始めたらしく。


「エルたそ達も配信かまーん!」


 と他の三人にも配信を始めるように指示。


「お前みたいに準備早くないからヘイト買っとけよ!?」

「任せるでござるよ!」

「どれくらいなら任せられる?」

「四十秒で支度するでござる!」

「あらほらさっさー」


 そして、他の三人が配信の準備のためにキャラの操作が出来ない間、ごまイワシが大ミミズクの攻撃を請け負うことに。


「急に動かなくなったけど何してんのこいつら?」

「じき動き出すから大丈夫でござる。それよりアグラ殿、拙者らにバフ魔法を頼みたいでござるが……」

「ん。緑の調べ、透き通れ。塞ぐ壁無し、遮る雲無し。木ノ葉を乗せて、遥か遠くへ。[風寄りて(シュタイフブリーズ)]」


 アグラディアに移動速度強化の魔法を貰い、二三度屈伸運動をしたごまイワシは。


「ほいっと。そんじゃ、動き回るとするでござるよ」


 そう宣言し、眼前に迫っていた大ミミズクの鉤爪を垂直に跳躍して回避。


「[縮地][翡翠][瞬身][クロスポイント][フラッシュバック][クロスポイント][桜花雷閃]!」


 跳躍した状態から移動スキルで大ミミズクへと突っ込むと、その大ミミズクの体を踏み台にさらに跳躍。

 そして、狙いを定めて攻撃したのは……大ミミズクの顔面。


「生き物の形をしている以上、狙われたら避けるか防ぐかする必要があるでござろう!?」


 その顔面の、さらに小さな目標――眼球へ、短剣を突き立てんと伸ばしたごまイワシは……。


「ちょわっ!?」


 大ミミズクの羽ばたき一つで生まれた強風に煽られ、速度を相殺されて体勢を崩される。


「キーーッ!!」


 そこにすかさず、(くちばし)による突きが飛んでくるが……。


「それにあたるは前衛の恥でござる。[フラッシュバック][瞬身][縮地]!」


 体力と引き換えにスキルのクールタイムをリセット。

 そして、移動スキルを重ねて大ミミズクの背後へと回り込む。


「がら空き、桃ノ木、サンマの開き!」


 そして、無防備な背後から攻撃を叩きこもうとすると……、


「だ~っ!! 羽根がうっとおしいでござるよ!!」


 その進路を、体に見合った大きな羽根で妨げられる。


「お待たせごま」

「エルたそ……参戦!」


 そこへ配信を開始し、操作を戻したエルメルが合流。


「まずは駆け付け一撃、[縦横武刃]! [羽々斬り]!」


 攻撃判定を纏いながら大ミミズクへと肉薄し、二刀を交差させながら斬りかかる。


「うし、OK!」

「あっばれちゃうぞ~」


 エルメルからワンテンポ遅れる形でマンチと†フィフィ†も参戦。

 そして、


『急に配信始めたと思ったらもうなんかボスみたいな奴と戦ってて笑う』


 というコメントが流れてくる。

 そのコメントを見て、


「マジで頼むでござる! 唐突にレイドボスに襲われてるでござるよ!!」


 と、プレイヤーに届けとごまイワシが叫ぶと、


『マジか。りょ。すぐ向かう』

『森の奥のほうでいいんよね?』


 その叫びを聞いたプレイヤー達が行動を開始。

 ――だが、


『【侵攻】起きてるのにレイドボスまで来てんのか!?』


 というコメントが流れて一瞬空気が固まった。


「は? 【侵攻】起こってんの? どこで?」

「イエローデザートとブルーリゾートらしいな。グリーンフォレストには来てないってさ」

「【侵攻】の敵はイエローデザートがスフィンクス、ブルーリゾートは猿らしいでござる」

「スフィンクスなら俺ら行かなくてよくね? ってかこいつから逃げられると思えんが?」


 コメントを読んで思考に集中するため、四人は攻撃を行わずに回避に専念。

 マンチだけは、式神の前鬼後鬼を召喚し、自身のステータスを上げて反撃を行ってはいたが。


「とりあえずはこいつに集中するでござるよ! どうせ【侵攻】がヤバかったら他プレイヤーが何とかするでござろうし!」

「さんせー」

「異議な~し」


 ごまイワシの決断に全員が賛成すると、配信を見てか、プレイヤーが集まってき始めた。


「【幼女親衛隊】只今参上!」

「聞きたくない文字列だった気がするでござるよ」


 その集まってきたプレイヤーからギルド名を名乗られるが、ごまイワシは何も聞いていないとそっぽを向く。

 ――そして、


『既定のプレイヤー数以上を確認。レイドボス『森の支配者』の討伐を始めます』


 と、システムアナウンスがなされ。


「キィエェーーーーッ!!」


 大ミミズク――『森の支配者』の声が、森の中に響き渡るのだった。

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