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強襲

「ん? この装備おかしくない?」


 森の捕食者の羽飾りの性能を確認した†フィフィ†は、何かに気が付いたようで。


「おかしい?」

「能力のとこ見て」


 何がおかしいか気が付いていないエルメル達へ、†フィフィ†は指摘する。


「能力補正のところ、紫の文字になってて上に鍵マーク付いてる」

「あ、ほんとだ。……つまり?」

「わからんけど?」


 どうやら、普通だと白文字表記のステータス項目が、紫色で表示されており。

 かつ、右上に小さく鍵のマークがついていた。


「試しに装備してみたでござるが、何のステータスも上昇しなかったでござるね」


 その表記の謎を確認するためにとりあえず装備してみたらしいごまイワシからそんな報告を貰った三人は装備を眺めると……。


「あ、なるほど? これ普通に鍵マーク触ると説明出るぞ?」


 解明したのはエルメル。

 とりあえず色々触っているうちに、この表記についての説明が表示されたらしい。


「ステータスロック状態。特定の条件で解放され、表示されている数値は解放後の数値となっています。……だとさ」

「敵倒して、それから何かしらの条件達成で初めて装備としての性能になるわけね。なるほど? それで? その条件は?」

「自分も持ってるんなら自分の見ろし。……ん?」


 全ての説明をエルメルに投げたマンチからのパスを受け取り、今度は解放のための条件を読み上げようとしたエルメルは、その条件に目を通して固まった。


「どしたでござる~?」

「あ~……いや。確認なんだけどさ」

「何?」

「さっき倒したミミズク? 口の周り汚れてたよな?」

「食事の後っぽかったでござるね」

「んで、この周辺に蟻の姿見えないよね?」

「食い尽くしちゃったんじゃない?」


 と、その時。

 バサッと大きく羽ばたく音が森へと響く。

 それはまるで、威嚇をするような。わざと羽音を聞かせるために行ったような、そんな音。


「なんの音でござる?」


 ごまイワシが振り返る。けれど、もうその音の主はその場所にはおらず。


「俺らがさっき倒したあいつ……さ。――()()だったんだわ」


 突如、頭上から羽ばたき音。

 慌てて見上げた四人の視界には、鋭いかぎ爪と視界全てを覆う大きな翼。

 先程倒した森の捕食者……その親鳥が四人へと襲い掛かったのだった。



「これで……よし、と」


 道具屋にてアイテムを補充し。

 ()()()()()()()()杖を握りしめ、グリーンフォレストへと進もうとするパルティ。

 その名前の横には、所属しているクランを現すマークも、クランの名前もなくなっていて。


「さて、頑張らなくちゃ!」


 誰にも聞こえない。自分自身に言い聞かせるようにそんな言葉を呟いて。

 ポータルを通ろうとした――瞬間だった。

 突然の暗転。

 先程までまぶしく降り注いでいた陽の光は、突如として黒へと反転し。

 周囲のプレイヤーがざわつく中、心当たりが一つ。

 最初の町でも起きた、魔物たちによる襲撃。

 ……【侵攻(インベーション)】だった。


『現在組んでいるパーティが解除されました』


 システムアナウンスによる一方的なパーティ解体の知らせ。

 そして、


『この町に居る全員がイベントパーティに加入しました』


 最初の町の時と同じく、プレイヤー全員がパーティへと強制加入させられて。

 パルティは、装備している杖をぎゅっと握りしめた。

 前回の時のような、頼もしいエルメル達は近くにいない。

 その後から頼ってきた、クランの人たちも、いない。

 正真正銘、一人での参加。

 だが、


(やるって、決めた)


 決意の強さを、拳を握る力に変えて。

 パルティは、町の上空を飛び回る、小型のスフィンクス達をにらみつけるのだった。



「今回はツイているみたいですね」

「もう少しで次の町に行こうとしてたクセに」


 イエローデザートのジュエ――つまるところ武器錬磨に時間を取られていたヘルミとビオチットは。

 突如として頭上を周回し始めたスフィンクスを見上げながら、それぞれ得物を握る。

 そして、


「ひゃあっ!! もう我慢できねぇ!!」


 コンマ一秒すらも我慢していないビオチットが、自分だけ射程圏内なのをいいことにスフィンクスへと攻撃。

 が、距離があり過ぎるせいかあっさり回避されると。


「二体こちらに向かってますね」

「お、釣れた釣れた」


 その攻撃に反応し、自分たちに向けて急降下してくるスフィンクスを上機嫌に見ながら。


「[貫通矢(ペネトアロー)]」


 寸分狂わず、スフィンクスの眉間へ向けて射撃。

 攻撃のそぶりを見せていない不意打ちだったためか、この攻撃は直撃し。

 直撃した矢は、スフィンクスを貫通して進んでいく。

 その一撃で、大幅に体力を削られたスフィンクスは、


「[ブルホーンアタック]!」


 即座に短剣へと持ち替えたビオチットの一撃で砂へと還る。


「意外と脆いね」

「思い出したくもない位長い時間かけて武器錬磨しましたからね。これで弱かったら運営に文句を言ってるところです」


 ビオチットと話をしながら、ただトランプをスフィンクスへと放り投げ続けるヘルミ。

 そして、スフィンクスはそれだけで土へと還ってしまう。


「弓と短剣のダメージとさ、トランプのダメージが同じって、ゲームとはいえ納得いかないよな」

「トランプって、基本強武器のイメージありません?」

「お前、トランプを武器にして戦ってそうな見た目してるよな?」

「はい。実際に武器ですし……」


 そんなヘルミへ、皮肉を込めた一言を口にしたビオチットだったが、どうやらヘルミには伝わっていないようだった。

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