連携◎
「アグラ! 離れてろ!!」
エルメルはそう叫ぶと、頭上からの一撃を受け止めて後方へジャンプ。
ガギリッ! と音が周囲に響き、襲ってきたモンスターの全容が見える。
「梟?」
エルメル達に襲い掛かってきたモンスターはフクロウ型のモンスターであり。
その口元は、よくわからない緑色の粘液が付着していた。
「もしかしてだが、こいつがこの辺のモンスター食い尽くしたとか?」
「さもありなん」
前鬼と後鬼を展開しながら、周囲の敵がいないという状況を考察するマンチと、その考察をありえそうだと肯定するごまイワシ。
「だとするとめちゃくちゃ強い可能性があるな」
「その分倒したときの恩恵でかそう。さすがにそのレベルのモンスターが点在してたらこのエリアの他のモンスターが駆逐されてるでござろうし」
「とりあえず、来るよ!」
そして、目の前のフクロウ型のモンスターへと考察を伸ばしたところで、エルメルに一撃を受け止められ、エルメル達を観察していたフクロウ型のモンスターが突っ込んできた。
羽ばたきは無く。音も無く。それでいて、速度だけが異様にあるその突撃は、
「おわっ!?」
「おっと」
「あっぶね」
「きゃっ!?」
四人は回避出来たものの、大きく体勢を崩す†フィフィ†とマンチ。
反対に、
「お前らなんで普通にあれが避けれるんだよ……」
「なんでって言われても……捻りもない直線移動なだけでござるし」
「動き始め見逃さなきゃ回避は余裕だろ。反撃とか迎撃は難易度めっちゃ上がるけど」
「キャラコンっていうか、反射神経お化け過ぎない?」
当たり前のように、何食わぬ顔で回避をしたエルメルとごまイワシへと二人はツッコミを入れるが。
何か問題でも? と真顔で返す二人。
ただ、体勢を崩した二人は、すでにフクロウに目標としてロックされており。
回避された直後に反転し、誰を狙うかを再び見定めていたフクロウは、マンチへと突撃を行う。
当然、崩れた体勢の状態で回避など出来ないが、
「前鬼! 後鬼!」
式神を自分のもとに呼び寄せ、盾として使用して。
「捕まえたぜ」
その二体にフクロウを捉えさせることに成功。
さらに、
「口を閉じろ。風味が逃げる……[ハイウェイト]!」
何やら某海賊漫画の海賊コックのセリフを丸パクリしながら空中へと跳んだ†フィフィ†は、
「体重×重力×速度=破壊力」
式神二体に抑えられているフクロウの脳天へ踵落としをお見舞いし。
ぐらつき、一瞬のスタン判定が出たフクロウに向けて、
「[クロスポイント]!!」
「[刃速華断]!!」
「[使役律令:撃]!!」
「[ハイキック]!!」
それぞれが思い思いの攻撃を発動。
最後に攻撃を当てた†フィフィ†のスキルの効果により蹴り上げられたフクロウは、一度羽ばたいて体勢を整えようとするが――、
「[モルガナソング]!」
†フィフィ†のバフ、一度だけ防御も反撃も許さない攻撃へと変化させる歌スキルを受け、
「[羽々斬り]!!」
踏み込んで、空中へと飛び出したエルメルと、
「[桜花雷閃]!!」
桜を纏い、突っ込むごまイワシが、フクロウを中心に空中で交差する。
さらに、
「[フラッシュバック][縮地][桜花雷閃]!!」
体力を消費し、スキルのクールタイムと発動後の硬直を消したごまイワシが空中で反転。
再度桜を纏いながらフクロウへと襲い掛かる。
「[使役律令:援]!!」
そんなごまイワシの動きをトレースする式神を召喚し、援護するマンチは、
「ふと思ったんだけど」
「? 何?」
「あいつら二人に上に居て、落としてもらうじゃん?」
「うん」
「んで、俺らで空中に上げてを繰り返せばお手玉出来るんじゃない?」
ふと、そんな考えに至り。
「やってみる?」
「一応な」
妙に乗り気な†フィフィ†と共に、撃ち落されるであろうフクロウへと狙いを定め、
「なんか待ってるみたいだからくれてやるよ! [薙ぎ払い]!!」
それを確認したエルメルが、二人の待つ木の上へとフクロウを打ち下ろす。
「ナイバッチ! [使役律令:撃]!!」
「ただ真っすぐに一直線に!!」
そこへ鬼の腕を置いておくマンチと、鬼の腕が直撃した直後に殴打のラッシュを叩き込む†フィフィ†。
さらに、
「お返しするよん♪ [ハイキック]!!」
アッパーキックでボコボコにしたフクロウを再び空中へと戻す†フィフィ†。
「お帰りなさいませー。衣服の方お預かりしますねー。[スラッシュトルネード]!!」
そうして空中へと戻ってきたフクロウに、必殺スキルをお見舞いしたところで、
「お、倒せた」
「敵が一体だけだと楽でござるなぁ」
「結局戦いは数だよ兄貴」
「ま、こんなもんだろ」
フクロウ型のモンスターの討伐を確認。
――そして、
「ドロップ品、んめ、うんめ」
「え? 今日はユニーク武器を拾ってもいいのか!?」
「お代わりもいいぞ」
「マジでユニーク出てるし……」
ドロップしたアイテムには、【森の捕食者の羽飾り】と書いてあり。
「あれフクロウじゃないのかよ!!」
というエルメルのツッコミが、虚しく森に響き渡るのだった。




