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伝書鳩×

「なんか見ない間に距離縮まってないでござる?」


 顔sに呼び出されていたごまイワシが三人に合流すると、アグラディアを肩車したエルメルの姿が。

 そして、エルメルの後ろをぴったりと張り付くように歩く†フィフィ†の姿も。


「他のエルフを見返したいんだってさ」

「話が見えんでござる」


 疑問を浮かべたごまイワシへ、話し合った結論だけをエルメルが言えば、当然ごまイワシからしてみれば意味など分からない。

 ――が、


「別にいいでござるよ。吹っ切れたっぽいでござるし」


 分からなくても、他の三人が理解している。

 ならばそれでいいのだと、あっさりと切り替えて。


「そういや、ごまの方は何してたんだ?」


 マンチに尋ねられると、


「情報共有のはずだったんでござるが、こっちが一方的に情報を提供した感じでござるね」


 顔s、琥珀との面談を振り返り、そう答えた。


「らしくねぇな。なんだかんだ食えない応答して、自分だけ上手に情報集めるのがお前だろうに」

「拙者のイメージが偏り過ぎでござるよ……。何故そう思われてるでござる?」

「人狼で人外引いたら無双するだろいつも」

「リアル狂人のくせに議論完璧で隙がねぇのほんま腹立つ」

「そんなに褒められると照れるでござる」


 どうやら他の三人からのごまイワシの印象は、狡猾で固まっているらしい。

 それを誉め言葉と受け取るごまイワシもごまイワシであるが。


「あ、ただ、蟻塚の事は誰も知らなかったみたいでござるし、そこは明確にアグラディアが他よりも上を言っていたでござるよ?」

「本当!?」


 二人へと話をした結果、どうやらアグラディアしか蟻塚を確認していない。

 その事を口にして真っ先に反応したのは――†フィフィ†だった。


「なんでお前が反応すんだよ……」

「え? だって嬉しくない?」

「嬉しいけど、そこは本人に喜ばせとけよ……」


 思わずツッコミを入れたエルメルとマンチだが、当のアグラディアはそんなことは気にしていないらしく、


「そうなんだ……」


 とどこか複雑げ。


「なんかあんのか?」

「いや……別に」


 エルメルが尋ねても、その表情の事を話そうとはしない。


「まぁ、とりあえずいいでござる。ただ、他のエルフが蟻塚の事を聞いて絶対に探し始めると思うんでござるよ」

「そりゃあ、俺たちが抜けてる状況をよしとしないだろうしな」

「と言うわけで~」

「もしかして~?」

「拙者たちで今度こそ蟻塚に行こうの巻~」

「いぇ~~い!!」


 そんなアグラディアは置いておき、今後の活動方針を決めるごまイワシは、


「と言うわけで作戦タ~イム!」


 と叫んで指パッチン。

 ――すると、


「? 【ギルドルームへの入室が可能になりました】?」


 三人の目の前に、そう書かれたシステムメッセージが出現し。


「とりあえずそこに入るでござるよ」


 と、ごまイワシに促されるまま、三人は、ウィンドウを操作してギルドルームへと入っていくのだった。



「これどったの?」


 ギルドルーム入室後、【暖炉室】と表示された部屋のソファーに腰を下ろした四人。

 ごまイワシ以外の三人は、そもそもギルドルームとは? という状態であり、その説明をごまイワシへと求めるのだが……、


「衝動買いしちゃった。テヘペロ☆」

「エル」

「あん?」

「ヤレ」

「御意」


 申し訳なさそうに手を合わせ、舌をペロリと出した仕草に苛立ちを覚え、マンチがエルメルをけしかける。

 エルメルはエルメルで、ヤレと言われた瞬間にはソファーを蹴飛ばしごまイワシへと殴りかかっていたのだが――。

 ごまイワシによって、両手とも手首を掴まれ防がれていた。


「落ち着くでござるよ。ただの無駄遣いでは断じてござらん」

「言い分を聞こう」

「まず、拙者たちの安息の地でござるよ」

「安息とは?」


 掴んでいた手首を放し、落ち着くように促して。

 ごまイワシの口から出てきたのは、『安息』の二文字。


「拙者たち、この間スフィンクスとツタンカーメンを倒す様子をライブで配信したでござろ?」

「それが何か?」

「配信で倒しちゃったものだから、ハイエナというか、拙者たちの後をつけようとするプレイヤーが出てきたでござる」

「嘘やん」

「マジ?」

「掲示板すら出来ているでござるよ? まぁ、これに関しては拙者たちだけではござらんが」


 活躍し、目立った。

 つまり、今後エルメル達四人を追いかければ、エリアボスや拠点ボスの討伐で美味しい思いが出来る可能性がある。

 そう考えたプレイヤー達は、なんと情報提供をし合ってエルメル達を尾行しようとしているらしい。


「顔s達のところもって事か?」

「うむ。……ただ、あそこは人数も多いでござるからね。そこに入り込んで戦果を挙げるのは厳しいと思われてるでござる。同様に琥珀殿のギルドも、基本遠距離専なせいで、そもそもついて行っても攻撃できないと不評らしいでござる」

「んで、人数少なくて近距離主体の俺らって事か」

「そういう事でござる。ぶっちゃけ無視してもいいんでござるが、なんかこう、面白くないでござろ?」

「配信しないでってのはそういう事だったのね」


 その尾行者たちに情報を与えないよう、この間までつけていた配信を現在していないのは、ごまイワシから指示があったため。

 ようやくその指示に合点がいったと、†フィフィ†は手を打った。


「今後ここに入れば余計な目はなくなるでござるし、ギルマスが許可した相手は一時的にではござるがこの場所に入れるでござる。つまりは密会にもってこいなのでござるよ」

「まぁ、理解した。……それで? わざわざこの場所に来て、ここを買った理由を説明するだけじゃないんだろ?」

「もちろんでござる。アグラディアの情報を正とすべく、拙者らの目で蟻塚を確認する必要があるでござる」

「だろうね」

「と言うわけで~……こ~んな作戦を考えたでござるが、どうでござる?」


 ようやく本題に入ったごまイワシの顔は、これ以上ない位に悪だくみをしている顔であり。

 作戦を説明する間、終始顔がにやけていた。

 反対に、説明を聞いたマンチと†フィフィ†は苦い顔をし、エルメルは――。


「俺だけ負担デカくねぇか?」


 一人だけ抗議の声を上げたのだった。

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