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流されて……

「他に、何かあるか?」


 一通り怒鳴って気が済んだか、変わらずそうプレイヤーへと尋ねた長老と呼ばれたエルフ。

 だが、先程の光景を見せられてしまえば、自然に躊躇われるもので。


「なし……か。このエリアに来る諸君らは解放の為に協力してくれると聞く。今後もよろしく頼むぞ」


 などと一方的に言ったのを最後に奥の部屋へと引っ込んでしまった。

 それが解散の合図となり、中に居たプレイヤー達は各々行動を取り始める。


「ちょっといいですか?」


 そんな中。


「どうしたでござる?」

「琥珀さんにも聞いて欲しいのですよ」

「私も?」


 ごまイワシと琥珀。それぞれが顔sによって呼び止められる。


「ごま、先に出とくぞ」


 どうやらギルドマスターにだけ話をしようとしていると理解したエルメルは、ごまイワシを置いて小屋から出る。

 その視線の先には、長老エルフの姿が消えた途端に走り出したアグラディアの姿があった。

 明らかに長老の風当たりが強かったのは分かったが、その原因までは分からない。

 だからこそ、その原因を探るためにアグラディアの背を追った。

 ……あと、その場に居ると面倒だと本能が告げていたからという理由もあるが、それはエルメルの心の中から僅かたりとも漏れることはなかった。



「どう思います?」

「どう……って?」


 一定規模以上のギルドに与えられるギルドルームのさらに上の機能、ギルドハウス。

 モンスターの存在しないマップからならどこからでもアクセスできるその場所は、そのギルドに属しているものと、一定以上の権限を持つものから招待されたプレイヤーしか入ることが許されない特殊な空間。

 そのギルドハウスの中で、応接室に割り当てられた部屋の中に、ごまイワシ、顔s、琥珀の三人は腰かけていた。


「全部ひっくるめて、どう感じました?」

「さっきのエルフみたいな問いかけでござるね」


 そこへ腰かけるなり、顔sから放たれた質問は、まさしくごまイワシが言ったように長老エルフの質問と同じであり。

 具体的な内容が定義されていない……言うなれば、人を試すような質問である。


「失礼。ですが、こうとしか表現できないと思っていまして……」

「一つ一つ紐解いていけば? まずはこのエリアのボスについてとか」


 ごまイワシのツッコミに、顔sはどうしたものか、と頭を掻き。

 だったら話す範囲を狭めることを提案する琥珀。


「ではそうしましょう。【バロメッツ】という名前は判明し、木に憑依しているのは分かっています。では、その姿を見ましたか?」


 それに乗った顔sは、恐らく全員がエルフから公開されているであろう情報を口にして、他の二人の反応を見る。


「まだ見てないでござるよ。見に行こうとして普通に床舐めたでござるし」

「奥まで行こうとしたらいきなり警報が鳴って、蟻に囲まれたからこの町まで逃げてきたし私も見てない」

「自分も奥に居るとだけ聞いたのですが、どれだけ進んでも見当たらなかったんですよね」


 そこで出てきた情報と、自分が持っていた情報を照らし合わせて推理する。


「奥の定義が気になるでござるし、エリアボス見つけてもそのまま倒せるのかって疑問は残るでござる」

「というと?」

「そのままの意味でござるけど……。イエローデザートでは。一応拠点ボス潰して拠点を確保してからエリアボスを倒したでござろう? と言う事は、拠点ボスを倒さないとエリアボスに勝てないとかありえそうでは?」

「試してみない事には何とも……。そう言えば、このエリアの拠点については何かご存じありませんか?」


 ごまイワシの考えはもっぱら、拠点ボスの所在である。

 そもそもごまイワシ達はバロメッツを目指して行動していたわけではなく、バロメッツの周辺に出来たという蟻塚を確認するために行動していた。

 その理由は当然、その蟻塚が拠点ではないか? という疑問からであった。

 だからこそ、斥候蟻をボコボコにして軍隊蟻を出撃させ、情報を手に入れられないかとしていたのだ。

 ……もっとも、あっさりと床を舐めることになったが。


「蟻塚がそうなんじゃないかって話が出たでござるね」

「蟻塚? そんな話は聞きませんでしたが……どこから?」

「拙者らに付いたエルフから聞いたでござるよ?」


 アグラディアからの情報を出すと、どうやらその情報は知らなかったらしく。

 情報の信憑性を高めるためだろう。出所を尋ねられ。

 素直にエルフからだと言うと……。


「そんなこと、私のとこのエルフは口にしなかったけど?」

「同じくです」


 腑に落ちない、と顔を見合わせる顔sと琥珀。


「もしかして、エルフによって教える情報が違う?」

「可能性が出てきたでござるね」

「となると、情報を集めて精査するのが最優先ですか」


 エルフの村に入る際に親しくなったエルフ。

 そのエルフの個体によって、知れる情報が異なる可能性が出てきた以上、その情報を集めることはグリーンフォレストを攻略するうえで必要不可欠。

 そう判断した顔sは、立ち上がって出ていこうとするが……。


「あ、ちょい待つでござる」


 ごまイワシに呼び止められて動きを止める。


「何でしょうか?」


 一刻も早く動きたい顔sは、声色だけでごまイワシを急かし。

 急かされたごまイワシも、自分の思いを単刀直入に伝える。


「なんで拙者がさっきのエルフの会議といい、今の話し合いに呼ばれたんでござる?」


 と。

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