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きのこの山、たけのこの里、エルフの森

「おかえり。どだった?」


 グリーンフォレストへとリスポーンしてきたエルメル達を迎えたのは、いつ面のマンチと†フィフィ†――だけでなく、多数のエルフも一緒。

 それらエルフの全ての表情が明らかに怒っています。と主張していて。


「あー……全部こいつのせいです」


 それをなんとなく理解したエルメルは、すべての責任をごまイワシへと押し付けた。

 途端に全ての視線がごまイワシへと集まり、エルフの何人かが口を開こうとしたとき。


「ちょっと道開けて」


 エルメルの耳に、何度か聞いた声が届いた。


「なんだっけ……何とか白って人」

「琥珀ね? うん。まぁ、なんというか……ついて来てくれると嬉しいな」


 その声の主は、ギルド【ベーラヤ・スメルチ】の代表。

 体躯に見合わぬデカい重火器を持った琥珀であった。


「ちなみに拒否権は?」

「あるけど、このエリア解放の為だから可能な限り来て欲しいかな」


 人魚の足のせいで自力で起き上がれないごまイワシが、マンチに手助けをしてもらい起き上がりながら尋ねると。

 琥珀は、まさか拒否なんてしないよね? という表情でそう返し。


「了解でござるよ。……拙者だけでござる?」

「代表とサブリーダーは参加していいって」

「じゃあ全員でござるね。マンチニキ、†フィフィ†ネキも行くでござるよ」

「おっす」

「はいはーい」


 参加資格を全員が持っていることを確認したごまイワシに声を掛けられ、マンチも†フィフィ†もその後に続く。


「あ、それと――」


 目的地へと歩き出そうとした琥珀は、思い出した……と足を止めて振り返り。


「おたくらと手を組んでるエルフも一緒に連れてきてもらえる?」


 と言うのだった。



 琥珀の後に続き、エルメル達が連れてこられたのは木の上に出来た小さな小屋。

 こんな場所で何をするのかと思いながら小屋に入ると――、


「うん?」

「どゆこと?」


 思わず声が出るくらいには衝撃的な光景が広がっていた。

 小屋の外見とは釣り合っていない部屋の広さ。

 中央には長テーブルが置いてあり、その上には料理がいくつも。

 そして、そのテーブルに既に着席して食事をしているプレイヤーが数名。

 しかも、そのプレイヤーの内何人かはエルメル達と面識があり……。


「や~、顔s殿。お久しぶりでござるよ」

「お元気そうでなによりですね」


 ギルド【ROOK WIZ】のマスター顔s。

 そして、その両隣に居るプレイヤー達が、入ってきたエルメル達へと会釈する。

 ――と、


「ゴホン。さて、揃ったようだな」


 長テーブルの一番端。

 上座に位置する場所に座っていたエルフがそう言って立ち上がる。

 それに合わせ、プレイヤー全員が立ち上がってそのエルフへと視線を移す。


「空いてる好きな場所でいいっぽいよ」


 と琥珀に耳打ちされ、入り口に一番近い場所へとまとまってエルメル達が移動したのを確認し、


「さて。諸君らは勇ある冒険者であると聞いている」


 そうエルフが切り出した。


「率直に聞こう。このエリアをどう思う」

「どう……とは?」

「なんでもよい。思ったことを言うといい」


 エルフの真意が分からない。

 そう思った顔sは思わず聞き返した。何を言えばよいのか? と。

 しかし、エルフからの返事は同じ。何でもいい、とだけで。

 何でもいいと言われた方が言いづらくなる。真意が分からない相手に、何を言えばいいかなど分かる筈もないからだ。

 ――しかし、


「敵の数が多くないでござるか?」


 そんなことは知ったことではない、とごまイワシが口を開く。


「前のイエローデザートでは考えられない量の敵がいたでござる。あれほどの量の敵を倒し切れるとは思えんでござるなぁ」


 ゲームと言う都合上、モンスターが居なくなることはない。

 しかし、それにしても斥候蟻を倒しただけで、陽の光を遮るほどの敵が来るフィールドなど、それは危険もいい所だ。

 ……ゆえに、


「この場所はずっとこうでござる? それとも、昔は違ったでござるか?」


 ゲームの設定を探る意味も込めて、ごまイワシは尋ねた。

 プレイヤーの知らない時代はどうだったか、と。


「無論、昔は違った。全ての元凶はあの忌々しき【バロメッツ】よ」


 それに答えるエルフは、どこか遠くを見ながらそう吐き捨てた。


「奴が来てから木々が異常に成長したのだ。それに伴い、無数の軍隊蟻が出てきた。全て奴の仕業だ!」

「燃やしゃいいのに」

「なんだと!?」


 一人でヒートアップするエルフに水を差したのは、このエリアに来てアグラディアから話を聞いた時に思った発想を口にしたマンチであり。

 喋っていたエルフはおろか、顔s、琥珀それぞれの後ろに立つエルフ、さらにはアグラディアにさえ睨みつけられてしまう。


「木に住み着いて悪さしてるんならその木を焼きゃあいいんだよ全く。躊躇って時間経てば経つほど手遅れになるんじゃ……」


 しかし、そんな視線を気にすらせずに続けるマンチだったが……。

 ドン!! と、突如として拳を長テーブルへと叩きつけたエルフによって遮られる。


「黙れ! 木と生き木と寄り添う我らがエルフが、木に火を放つなどあってはならんのだ!」


 物凄い剣幕でそう言われ、マンチは何かを言い返そうとすると……。


「アグラディア!! 貴様のような奴が付いているからこのような考えを恥ずことなくいけしゃあしゃあと言うのだぞ!!」


 まさかの標的はアグラディアに。


「なんでアグラディアに……」


 自分ではなくアグラディアに飛び火したことに驚くマンチだが、当のアグラディアは。


「……申し訳ありません。長老」


 長老と呼んだエルフに、深々とお辞儀をして謝罪の意を示していたのだった。

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