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狐アピール

「お~……あれが蟻塚でござるかー」


 アグラディアに案内され、途中、襲ってくる蜂型のモンスターを何度か倒し。

 遠くに、木と同じくらいの太さ、長さの土で出来た蟻塚が視界に入ってくる。


「ピラミッドみたいに、中に入って戦う的な感じじゃあないみたいだな」


 それを確認し、イエローデザートの時と比べるエルメルに対し、


「いや、確かにあれは蟻塚だけど、あれは拠点じゃないよ?」


 とアグラディア。


「マジで?」

「マジ。あれくらいの蟻塚なら結構一杯あるよ? でも、バロメッツの近くにある蟻塚はあれよりもっと大きいよ?」

「拠点、もう挑んでるプレイヤー居るんだろうなぁ……」


 アグラディアからの説明を受け、他のプレイヤーの動向が気にかかる。――が、


「攻略掲示板には蟻塚への侵入方法が分からないって書き込みがあるぞ。何でも、砲台とかの火器にお出迎えされて床舐めまくってるらしい」

「蟻が火器はあかんでしょ」

「普通に鎧纏ってるらしいぞ?」

「文明が発達してやがる……」


 マンチが覗いた掲示板によれば、他のプレイヤー達もまだ蟻塚への侵攻を果たしていないらしい。

 それを聞き、安心したやら不安にやらなるエルメル達。


「俺ら、結構ここに来るまでに時間使ったよな?」

「それで拠点にすら入れてないって色々と大丈夫でござるか?」

「でもイエローデザートの時もサソリ倒してから大きく動いた印象無いか?」

「あー……なんか鍵がまだ揃ってない感じでござるか」


 その不安も、マンチの一言で妙に納得してしまう。

 イエローデザートの時を知らないアグラディアが、何言ってんだこいつら的な視線を四人に送っているが、それには気が付かず。


「何か飛んできてない?」


 すると、何かに†フィフィ†が気が付いて。


「フライングスパゲティモンスター?」

「絶対に違うと思う」

「この世界に絶対はない」


 適当な事を呟くごまイワシを否定し、迫ってくる何かに身構えると……。


「蟻だーーっ!!」


 飛んできたのは……羽の生えた蟻だった。

 ただ、蟻と言っても鎧を着こみ、槍を持っているが。


「まずい」

「ぶっ倒すでござるよ!」


 呟くアグラディアを横目に、蟻を迎撃しようと跳んだごまイワシとエルメル。

 ――だが、


「戦っちゃダメだ!」


 アグラディアは続けて叫ぶ。


「そいつはただの斥候なんだ! そいつを倒しちゃうと本隊が来ちゃう!」


 どうやら、飛んできた蟻は敵情視察や確認を主に行う役割のようで、それが戻ってこないとなると、蟻軍団の本隊が寄越されるらしい。

 しかし、


「本隊上等。むしろ向こうからやってきてくれるなら願ったり叶ったりだろ」

「攻めるより攻め込む方が大変だからな。わざわざ出向いてくれるんならそれに越したことはねぇわな」


 と、先程よりやる気満々になるエルメルとマンチ。


「周囲にプレイヤーの姿もちらほら見えてきたし、本隊来るならプレイヤーで集まって迎撃すりゃいいんじゃん? ばっちこーい!」


 さらには†フィフィ†もノリノリで、ごまイワシと斥候蟻がぶつかる瞬間を待ちわびる。


「ふっ。[翡翠]! からの[クロスポイント]!!」


 そして、移動スキルを空中に留まる為に使用し、交差するタイミングをずらし。

 迎撃を行おうとしていた斥候蟻の間合いを外したかと思えば、今度は自分から分身と共に向かって行って。

 攻撃を行い、分身と交差したところで位置を交換。

 本来のごまイワシが辿った軌道を振り向いた斥候蟻の無防備な背後へ、


「[桜花雷閃]!!」


 桜吹雪を纏いながら、突進。

 衝撃を受け、慌てて振り返るが時すでに時間切れ。


「落ちろ蚊とんぼぉっ!!」


 羽ばたいている羽に短剣を突き立てると、当然その働きは失われ。

 短剣を突き立てたごまイワシと共に、エルメル達の居る場所へと落下する斥候蟻。


「入国をご希望ですかー?」

「ビザはお持ちですかー?」


 それを待ち受けるエルメルとマンチが振りかぶり、


「ビザはお持ちではないようですねー」


 †フィフィ†が踵落としでさらに勢いをつけ。


「[刃速華断]!!」

「[使役律令:撃]!!」


 その勢いを衝撃に変換するため、落下地点からそれぞれスキルを放つ。

 周囲に響く重い音。

 それは、斥候蟻の鎧がひしゃげ、歪み、大ダメージが発生した証。

 ――さらに、


「[フルスイング]!!」

「[切り抜け]!」


 †フィフィ†とごまイワシの迎撃も追加されダメージはかさみ。


「前鬼、後鬼、やっちまえ!」


 トドメは、マンチの使役する二体の鬼の手によって刺されたのだった。

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