ティータイム
「マンチニキ大活躍でござるなぁ」
「結局肉壁は居たら便利って証明だわな」
「この中の誰よりも固いし、火力も伴ってるから凄く頼りになるよね」
「……蜂の群れに味方放り投げた状態で言ってなきゃ、信頼感でも感じられるんだろうがな」
何度か蜂の群れへと挑戦し、編み出した戦法。
それは、アグラディアから思わずジト目で見られる戦い方ではあったが、安全に戦えるもので。
均等振りという性質上、四人の中で一番耐久力のあるマンチが、欠点を補う――けれども欠点がない場合、全ステータスを上昇させるスキルを発動して群れへ飛び込み。
そのまま前鬼と後鬼を召喚し、殴り合い。
そして、エルメルかごまイワシが群れの一匹のヘイトを買い、誘導し。
おびき寄せた一匹を囲んでボコる。
以上、繰り返し。
「けど、これが一番効率いいぜ?」
「結局一対多を作るのが戦いの定石でござるよ」
「逆の状況を強要されてる俺の身にもなれ!!」
「応援してる!!」
「誠意は言葉ではなく協力……」
もっともキツイ役回りのマンチだが、結局新調した装備と、上昇したステータスによって被ダメは少なく。
また、召喚者のステータスが反映される前鬼と後鬼もバフスキルの恩恵を受けており。
蜂の群れ相手に戦っても、マンチがやられるよりも早く群れを倒し切ることが出来ていた。
……もちろん、エルメル達が囲んで一匹を倒す速度が早いからでもあるが。
「回復役がどうしても欲しいな……」
ただ、戦い方の都合上、どうしてもダメージはかさんでいくわけで。
敵を引き付けるマンチはもとより、[フラッシュバック]を多用して速攻をかけるごまイワシも同様であった。
「その辺に丁度いいパルティとか落ちてないか?」
と、四人の誰もが心の片隅に考えていたことを口にしたのはマンチ。
――だが、
「女の子拾うって考えは流石に……」
「前科あったはずでござるよね? 執行猶予は?」
「頭……冷やそうか」
他の三人に、冷静なツッコミを入れられて。
「あ、いや……違っ――」
「分からんでもないけど、口に出しちゃダメでしょ」
ため息交じりに†フィフィ†に窘められる。
「……すまん」
「素直でよろしい」
「本当に申し訳ないという気持ちでいっぱいなら、どこででも土下座をすることが出来る……」
「本人不在なのに土下座させようとしてて草」
「今度会った時に謝っとくわ……」
いつの間にか正座をしていたマンチが反省の意を示し、パルティは本人が知らないところで謝罪されることが確定したが、どうやら三人の気はそれで済んだらしく。
「にしても体力回復はマジで問題な気がする」
「……実はでござるね。ちょっとした特権を発動してみたんでござるが……」
「特権?」
「なになに?」
本来の問題を再確認したエルメル。
それに対し、何やら含んだ言い方をするごまイワシは。
「エルたそのおかげで、【満腹亭闇鍋】と親密な関係になったんでござるが、そこがこんなものを寄越してきたんでござるよ」
と、ドヤ顔でピンク色に発行するポーションを取り出して見せる。
「飲んだら体がゲーミング色に発光する薬?」
「どこのモルモットでござるか……。これはあれでござるよ。一定周期で一定量の体力を回復してくれるポーションでござる」
「リ〇ェネ的な?」
「まさしく」
どうやらそのポーションは、持続的に体力を回復してくれるポーションらしく、当然ながらNPCの道具屋では取り扱っていない代物で。
生産職を集めた、【満腹亭闇鍋】だからこそ作れたポーションだった。
「いいじゃん、それ」
「ちなみに味はサクランボらしいでござるよ」
「ゲームの中で味にまでこだわる必要あるんかね……」
「あるでしょ」
「あるだろ」
「あ、はい」
そのポーションを三人に配ったごまイワシは、誰も飲まないことを確認して先陣を切る。
「んぐっんぐっ……ぷは。あー……酸味が弱いタイプのサクランボでござるね」
「酸味強くないならいいか」
「毒見役どうもー」
「妙に甘すぎるより全然マシか」
それを確認し、ごまイワシの味の感想を聞き終えた上で三人は飲み干すと。
「んじゃ、引き続きやりますか」
武器を構え、リポップした蜂の群れへと向き直る。
まだやるのか、とアグラディアが呆れるが、そんなことは当然お構いなし。
四人を見つけるや、突撃をしてくる蜂の群れへ、
「馬鹿の一つ覚え乙」
「学ばれていろんなパターン出されたら厄介極まりないでござるよ?」
「けどパターン決まってて単調行動だと倒すの作業化して飽きが来ねぇか?」
「新鮮な気分を味わいたいなら式神無しで戦ってみれば? 床を舐めるっていう珍しい体験が……」
「それだけはまっぴらだわ」
エルメルとごまイワシ、二人によってマンチが蹴飛ばされ。
蜂の群れと接敵する瞬間に式神二体を展開。
さらに全ステータスを上昇するバフスキルを発動し、前鬼、後鬼が攻撃しない蜂へと攻撃してヘイトを集める。
「あんたが欲しい」
「あんたじゃ分からん」
エルメルとごまイワシが群れから一匹を引き剝がしたのを確認し、自分の方に来ておらず、エルメル達の方へと向かう蜂へと目掛け、
「[オーラブレード]!!」
遠距離から攻撃し、余すことなく釣りあげて。
「[ブレイクダンス]! [モルガナソング]!」
「まだまだハーフタイムすら程遠いでござるよ!」
「延長戦含めてどんだけやんだよ。……クリケットか!」
「途中休憩とか挟むの含めて似てるかもしれんでござる」
「ボケは肯定されるとボケとして成立しないんで……、せめてツッコんでくれ……」
引き剥がした一体の蜂に向け、エルメル、ごまイワシ、†フィフィ†の三人は、全力でスキルを連打するのだった。