表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/157

ティータイム

「マンチニキ大活躍でござるなぁ」

「結局肉壁は居たら便利って証明だわな」

「この中の誰よりも固いし、火力も伴ってるから凄く頼りになるよね」

「……蜂の群れに味方放り投げた状態で言ってなきゃ、信頼感でも感じられるんだろうがな」


 何度か蜂の群れへと挑戦し、編み出した戦法。

 それは、アグラディアから思わずジト目で見られる戦い方ではあったが、安全に戦えるもので。

 均等振りという性質上、四人の中で一番耐久力のあるマンチが、欠点を補う――けれども欠点がない場合、全ステータスを上昇させるスキルを発動して群れへ飛び込み。

 そのまま前鬼と後鬼を召喚し、殴り合い。

 そして、エルメルかごまイワシが群れの一匹のヘイトを買い、誘導し。

 おびき寄せた一匹を囲んでボコる。

 以上、繰り返し。


「けど、これが一番効率いいぜ?」

「結局一対多を作るのが戦いの定石でござるよ」

「逆の状況を強要されてる俺の身にもなれ!!」

「応援してる!!」

「誠意は言葉ではなく協力……」


 もっともキツイ役回りのマンチだが、結局新調した装備と、上昇したステータスによって被ダメは少なく。

 また、召喚者のステータスが反映される前鬼と後鬼もバフスキルの恩恵を受けており。

 蜂の群れ相手に戦っても、マンチがやられるよりも早く群れを倒し切ることが出来ていた。

 ……もちろん、エルメル達が囲んで一匹を倒す速度が早いからでもあるが。


「回復役がどうしても欲しいな……」


 ただ、戦い方の都合上、どうしてもダメージはかさんでいくわけで。

 敵を引き付けるマンチはもとより、[フラッシュバック]を多用して速攻をかけるごまイワシも同様であった。


「その辺に丁度いいパルティとか落ちてないか?」


 と、四人の誰もが心の片隅に考えていたことを口にしたのはマンチ。

 ――だが、


「女の子拾うって考えは流石に……」

「前科あったはずでござるよね? 執行猶予は?」

「頭……冷やそうか」


 他の三人に、冷静なツッコミを入れられて。


「あ、いや……違っ――」

「分からんでもないけど、口に出しちゃダメでしょ」


 ため息交じりに†フィフィ†に(たしな)められる。


「……すまん」

「素直でよろしい」

「本当に申し訳ないという気持ちでいっぱいなら、どこででも土下座をすることが出来る……」

「本人不在なのに土下座させようとしてて草」

「今度会った時に謝っとくわ……」


 いつの間にか正座をしていたマンチが反省の意を示し、パルティは本人が知らないところで謝罪されることが確定したが、どうやら三人の気はそれで済んだらしく。


「にしても体力回復はマジで問題な気がする」

「……実はでござるね。ちょっとした特権を発動してみたんでござるが……」

「特権?」

「なになに?」


 本来の問題を再確認したエルメル。

 それに対し、何やら含んだ言い方をするごまイワシは。


「エルたそのおかげで、【満腹亭闇鍋】と親密な関係になったんでござるが、そこがこんなものを寄越してきたんでござるよ」


と、ドヤ顔でピンク色に発行するポーションを取り出して見せる。


「飲んだら体がゲーミング色に発光する薬?」

「どこのモルモットでござるか……。これはあれでござるよ。一定周期で一定量の体力を回復してくれるポーションでござる」

「リ〇ェネ的な?」

「まさしく」


 どうやらそのポーションは、持続的に体力を回復してくれるポーションらしく、当然ながらNPCの道具屋では取り扱っていない代物で。

 生産職を集めた、【満腹亭闇鍋】だからこそ作れたポーションだった。


「いいじゃん、それ」

「ちなみに味はサクランボらしいでござるよ」

「ゲームの中で味にまでこだわる必要あるんかね……」

「あるでしょ」

「あるだろ」

「あ、はい」


 そのポーションを三人に配ったごまイワシは、誰も飲まないことを確認して先陣を切る。


「んぐっんぐっ……ぷは。あー……酸味が弱いタイプのサクランボでござるね」

「酸味強くないならいいか」

「毒見役どうもー」

「妙に甘すぎるより全然マシか」


 それを確認し、ごまイワシの味の感想を聞き終えた上で三人は飲み干すと。


「んじゃ、引き続きやりますか」


 武器を構え、リポップした蜂の群れへと向き直る。

 まだやるのか、とアグラディアが呆れるが、そんなことは当然お構いなし。

 四人を見つけるや、突撃をしてくる蜂の群れへ、


「馬鹿の一つ覚え乙」

「学ばれていろんなパターン出されたら厄介極まりないでござるよ?」

「けどパターン決まってて単調行動だと倒すの作業化して飽きが来ねぇか?」

「新鮮な気分を味わいたいなら式神無しで戦ってみれば? 床を舐めるっていう珍しい体験が……」

「それだけはまっぴらだわ」


 エルメルとごまイワシ、二人によってマンチが蹴飛ばされ。

 蜂の群れと接敵する瞬間に式神二体を展開。

 さらに全ステータスを上昇するバフスキルを発動し、前鬼、後鬼が攻撃しない蜂へと攻撃してヘイトを集める。


「あんたが欲しい」

「あんたじゃ分からん」


 エルメルとごまイワシが群れから一匹を引き剝がしたのを確認し、自分の方に来ておらず、エルメル達の方へと向かう蜂へと目掛け、


「[オーラブレード]!!」


 遠距離から攻撃し、余すことなく釣りあげて。


「[ブレイクダンス]! [モルガナソング]!」

「まだまだハーフタイムすら程遠いでござるよ!」

「延長戦含めてどんだけやんだよ。……クリケットか!」

「途中休憩とか挟むの含めて似てるかもしれんでござる」

「ボケは肯定されるとボケとして成立しないんで……、せめてツッコんでくれ……」


 引き剥がした一体の蜂に向け、エルメル、ごまイワシ、†フィフィ†の三人は、全力でスキルを連打するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ