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黄金色の……

 防御補正+10。スロット数1。

 それが、最初にエルメルが生産した【金のネックレス】のステータスである。


(まずなによりもスロットが付いてるのがデカい。これだけで装備する価値がある)


 そのステータスの中で何よりも目を引いたのは、生産装備でありながらスロットが存在しているという点。

 生産装備という仕様上、手に入らないプレイヤーはとことん手に入らない。

 いわば、貴重な装備に、自由な能力を組み込めるスロットの存在。

 これが、どれほど重要なことだろうか。

 ……しかも、


(これで成功判定なんだろ? また特殊能力引くまでマラソンするが、大成功のあかつきには、スロット数とか増えてくんねーかな)


 そう、まだ追加効果が付与されていない成功判定なのだ。

 それぞれ属性に対応した能力が付与される大成功とは程遠い。

 もちろん、今回も全属性の大成功を狙うエルメルは、ちょっぴりと贅沢なことを考えながら再度生産に勤しんでいく。

 ……ゲームにおいて、物欲センサーという厄介極まりないオカルトが存在していることを認識していながらも。

 そのオカルトをあざ笑うかのような事を考えてしまったエルメルは、この後の生産で色々と分からされることとなる。



「ん~、『満腹亭闇鍋』にはこっちを賄賂で送っとくでござるかねぇ」

「それ必要か?」


 エルメルが二日ほど費やした生産の成果。

 前回までの属性をモチーフにした六種類に加え、(紫)と(橙)という追加された効果が二つ。

 それぞれ、所持量上限上昇と、回復アイテム効果上昇という効果があることが発覚。

 特に(紫)の効果である所持量上限上昇という効果は、本来はレベルアップかステータス割り振りでのみ上げられるステータスであるだけに、移動速度上昇効果と同じく高値で取引されていた。

 その(紫)効果付きの【金のネックレス】を、『満腹亭闇鍋』にタダで渡そうとごまイワシはしていた。

 当然苦労し、文字通り身を削って生産したエルメルは不満の声を上げるが。


「旨味があるってなれば向こうもこっちと縁を切りたくなくなるでござろ? 例えばでござるが、拙者らと他のギルド、その二つが次のエリアボスの前線で戦っていたとして、わいろを贈っていた拙者らと送っていなかったもう一方、どちらにポーション類が届くでござろうね?」


 と、ごまイワシに悪い笑顔をされて押し黙った。

 もちろん、納得してしまったからだ。


「理解。でも(紫)渡しちゃうのはなー」

「確かにこれだけ一個しかないでござるからね。……でも、あっちのギルドが欲しがるのはこの効果のはずなんでござるよ」


 エルメルから受け取ったネックレスを、装備せずに手で弄ぶごまイワシ。

 そこへ、


「呼び出されたから来たけど……何用?」


 紫色のとんがり帽子。背中には箒を担いだローブ姿の魔女姿。

 エルメルと身長が同じくらいの、ロリ魔女容姿のプレイヤーがごまイワシへと声をかける。


「お巡りさん、こいつです」

「いや、違うでござるよ」

「幼女呼び出して密会してる悪い人魚はこいつです」

「見た目の年齢的に特に犯罪チックでもないでござろう!」

「中身が悪いぃ!!」

「騒々しいんだけど……」


 弄るネタ発見、と飛びついたエルメルと、標的にされたごまイワシのやり取りを冷ややかな目で見つめたロリ魔女は。


「さっさと本題入って。なんで私を呼び出したの?」


 と尋ねた。


「簡単でござるよ。直接マスターに渡したいものがあったでござるからね」


 尋ねられたごまイワシは、そう言うと先ほどまで弄んでいた【金のネックレス】をロリ魔女へと差し出す。


「ふん? 装飾品? 確かにありがたいけどうちにも生産は――なにこれ!? 今相場が値上がり続けてる(紫)効果装備じゃない!? どうしたのよこれ!? 買ったの!?」

「作ったんだよ! ていうかそれだけが出なくてずっっっっっっっっっと生産粘るハメになったよ畜生!!」

「大成功粘るってマジ!? うちの子、「大成功狙って生産すると精神が死ぬんで出来たらラッキー程度に考えてください」って言ってたわよ!?」


 差し出されたネックレスが大成功生産の、しかも希少な(紫)付きだと分かるやいなや、早口に捲し立てるロリ魔女に。

 こちらも負けじと早口で、生産で貯まった鬱憤を込めて話すエルメル。

 どうやら、『満腹亭闇鍋』の方でも生産で大成功を粘ってみたことはあるらしい。

 ただ、その結果、狙うと精神が死ぬ、と生産担当の口から出たらしく、おおよそ人間が狙うものではないと結論付けていたらしい。

 エルメルは成し遂げたが。


「それはそいつの根性が足りん!! 48時間ありゃあこうして出せる!!」

「常人が48時間もクエストと生産のヘビロテに耐えられるわけないでしょう!? 貴方人類!?」

「唐突に生物学的にディスられた気がするんだが!?」

「まぁまぁ落ち着くでござるよ二人とも」


 なおもヒートアップする二人をごまイワシがなだめ、


「それがこの間のツタンカーメン戦におけるポーション配達と、鉱石運搬の過剰分と、今後の友好の印としたいのでござるが……足りるでござるか?」


 そのネックレスを渡した意図を話すと。


「足りるも何もむしろ貰いすぎ……はー、なるほど? そういう事?」


 と、どうやら納得したらしく。


「この場合、お主も悪よのう。とでも言うべきなのかしら?」

「お代官様ほどでは」

「誰が代官よ。……分かった、私ら『満腹亭闇鍋』は、今後あんたらとどこよりも友好関係を結びましょう」


 そう、ごまイワシとエルメルの前で宣言し。


「それと、私の名前は代官じゃなくて、『アニス』よ」


 追加で、自己紹介をするのだった。

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