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卑の本一

(ぜんっぜんダメージ出てないでござるよ!)


 龍玄徳に攻撃が入り、表示されたダメージを見て驚愕するごまイワシ。

 ただ、その後に入った属性追撃のダメージが最初のダメージの数倍入ったことを確認し、納得する。


(おそらくは魔法による防壁とかその系統。思うに初撃ダメージ大幅カットと言ったところでござるか)


 思考を回しつつも意識は魔導士。

 なるだけ距離を取って時間稼ぎでもする考えか、大きく後方へと跳ぶと――、


「[瞬身][翡翠]。どこに行く気で?」


 そんな距離などない物に等しい、と、スキル二回で追いつくどころか追い越して斬撃をお見舞いし。

 龍玄徳がこちらを振り向く前に地を蹴り、追撃。

 何が何か分からず、右往左往している龍玄徳へ、


「[クロスポイント]! 一旦あんたはおしまいでござる!」


 分身を出現させた交差斬り。しかも居場所を惑わすために分身の方の到着点へと自身を移動させ。


「大丈夫か!?」


 ようやく駆け付けたビーストテイマーとそのプレイヤーに使役されている虎と相対したごまイワシは。


「出来れば一息つきたいんでござるけど?」

「させると思う?」

「全く?」


 襲い掛かってくる虎の牙を短刀で受け止めて。

 

「[天任:黒烏]!」


 新たに出現させ、使役するカラスの群れを……、


「遅い遅い!! [縮地]!」


 大きく跳んで範囲外へ逃れると。


「[桜花雷閃]!」


 使役している動物がいなければ無防備だろ? と言わんばかりに、トリコロールへと突撃。

 しかしそんなごまイワシの視界に入ってきたのは、細長い得物であり。


「[ハードウィップ]!!」


 スキルによって操られるビーストテイマーの鞭が、ごまイワシを捉える。

 ――が、捉えたはずのごまイワシの姿は桜吹雪となって散り、その桜吹雪は全てがトリコロールへと襲い掛かる。


「ちょっ!? なんだこれ!?」

「拙者のスキルでござるよ。[クロスポイント]」


 無数の桜と交差斬り。そしてそれらに付与された物理と魔法両方の属性ダメージによりビーストテイマーの体力は面白いように削れ。

 背後からのごまイワシの通常攻撃がトドメとなり、ビーストテイマーは撃破判定。


「っとと。[瞬身]」


 それに浸る間もなく翁ありけりの斬撃がのど元へ。

 気付いた直後に反射で瞬間移動をし、難を逃れると。


「いや、不意付いたと思ったのに反応速すぎでしょ」


 と、翁ありけりから声を掛けられ。


「今のに反応できないと世界で活躍できないでござるからなぁ……」


 出来て当然と頬を搔きながら答えるごまイワシだが、内心は……。


(危なかったでござるねぇ……。ぶっちゃけたまたまでござるが、こう答えておいた方がプロゲーマーの株は上がるでござろうし、よしよしでござる)


 なんて考えていたりする。


「ほんと、今日は勉強させていただきますよ!」

「特に教えはしないでござるから好きに盗むでござるよ」


 二人がそんな会話を交わした直後、二人の姿は線となり、次に倒れている龍玄徳が見た二人の姿は、互いが互いの得物を自分の得物で抑えている姿。

 そこからまた線となり、今度は別の場所で武器のぶつかる音が聞こえてきて。


「あ、トドメ刺してなかったでござる。[影縫い]」

「グヘッ」


 どんな動きをしているか気になると、音のした方へと体を向けた龍玄徳は。

 じっとしていればまだ見逃されていただろうに、動いてしまったせいでごまイワシにその存在を認知され。

 翁ありけりと斬り合っている最中にも関わらず、意識を外して投げられた手裏剣に貫かれ撃破判定。

 せめてその隙をついてくれという届かぬ思いを残し、PvPのフィールドから去ることとなった。


「さて、これで一対一でござるね」

「これ僕に勝ち目有ります?」


 改めて翁ありけりへ向き直りながら、翁ありけりから放たれたクナイを短刀で払い落し。

 ひきつった笑みを浮かべる翁ありけりに対して。


「そりゃあやってみないと分からんでござろう?」

「いや、三人生きてて無傷相手にどう立ち回れと……」


 萎え落ちだけはしてくれるなと思いながら、ごまイワシが突撃しようとして。

 背後で、ほんの僅かに。

 砂が擦れる音がして、


「[滑転]!」


 咄嗟にモンキーバナナへと武器を持ち替えて、一瞬の無敵が発生するその場へ倒れこむスキルを発動。

 そして、倒れこんだごまイワシの上、先ほどまで立っていたごまイワシの胸を貫く短刀が視界に入り。


「[瞬身]! [翡翠]!!」


 一度大きく距離を取り、状況を確認すると。

 ごまイワシが喋っていた翁ありけりとは別に、さっきまでごまイワシが立っていた後ろにも翁ありけりが存在し。


「ん~……影分身?」

「ご名答で」


 何となくで答えると、肯定の言葉が返って来て。


「便利そうでござるねぇ。……動かしたりは出来ないんでござる?」

「スキルが成長すれば出来るようになるかもですね。今はそうして立っているだけのデコイを出すしか出来ません」


 と話している間に棒立ち状態になったのを確認してごまイワシが大きく右に跳び。

 また攻撃を空振りさせられる翁ありけり。


「不意打ちが効かないの本当にズルいっすよ。こればっかりはキャラコン関係ないですね……」

「別に本体性能が低いとか言った覚え無いでござるけどね。雑誌とかではキャラコンばっか取り上げられるでござるけど」


 そう言って降参ポーズを取った翁ありけりに、トドメを刺そうとごまイワシが近寄ると。

 当然のように攻撃してくる翁ありけり。

 だが、もはや不意でも何でもないその一撃はあっさりと回避され。

 一対一になり、残り体力を気にしなくてよくなったごまイワシは、これでもかと[フラッシュバック]を間に挟んだスキルの連発で翁ありけりを撃破。

 配信を見ていた視聴者の拍手コメントに埋もれる形で、


『もしかして被弾してないんじゃね?』


 というコメントが流れたが。

 それに気が付いているのはごまイワシと対戦相手、そして少しの視聴者のみだった。

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