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Romantic!

 三人と分かれ、ブルーリゾートへと戻ってきたエルメルは、真っ先に生産の師匠の下へ。


「師匠~、お久~」


 緩すぎる挨拶をすると……、


「あらあらまあまあ。お久しぶりですね」


 編み物をしていたらしいマカラが、立ち上がりながら挨拶を返す。


「なんか新しい装備作れるようになってないかなーと思って顔出したんだけど?」

「そうですね~……あ、そうだ! これなら作れますよ?」


 そう言って出現したウィンドウには、【金のネックレス】と表示されていて。


「作る作る。んで? どんなクエストをこなせば素材を頂けるのかな?」

「話が早くて助かるわ~。今回集めてきてもらうのはこれね」


 提示されたクエストを特に内容も見ずに受諾。

 そして走り出したエルメルの背中へ、マカラは優しく微笑みながら手を振るのだった。



「いや~……まさかさぁ」

「どうしたんですか?」


 クエストで集める素材はミイラの布。

 何にどう使うのか分からないが、大体のゲームのクエストなんてそんなもの。

 そう割り切って一人ピラミッドへと向かう途中。

 再会した。当たり前に。


「こうも高頻度でパルティに出会うとはね」


 ギルドに加入している筈なのに、一人でフラフラしていたパルティに声をかけたのは先ほど。

 今からピラミッドで狩るけど来る? と、軽いナンパのような声掛けに二つ返事でOKを出したパルティは。

 ぴったりエルメルにくっついて移動を開始。

 まるで何かに怯えるような、警戒するようなその振る舞いに違和感を覚えるも。


「なんかあったの?」

「いえ? 特には?」


 聞いても答えてくれないので、これ以上詮索することもなく。

 配信のコメントにて『デート?』、と聞かれるも、そんなのではない、とあしらって。


『ていうかエルメルさんとパルティさんのパーティとか豪華すぎない?』

『機会があったら是非ご一緒したいところ』

『百合の間に挟まる男を絶対殺したるランサー』


 等、流れる一部のコメントには無視を決め込みいざ狩りを開始。

 すると、


「うん。やっぱ追撃回数一回増えてやがんな」


 【輝きの砂時計】に敏捷をエンチャントした事で、合計敏捷値は-20へ。

 十刻みで追撃が一回追加されるのならば、このエンチャントで追加されるだろうと読んでいたエルメルの予想は見事にビンゴし。

 それは、さらに効率が上がることを意味していた。

 そして、


「ついでに追撃の威力も上がってんな。……12%追撃くらいか?」


 この前までは、およそ一割のダメージ追撃が発生していたが、現在の追撃は見た限り一割二分ほど。

 詳しい計算はしていないが、おおよそその程度の割合ダメージであった。

 それはつまり、敏捷を伸ばせば伸ばすほど追撃の威力も上がっていくと言う事。

 つまり火力の上昇に繋がっており、エルメルは密かにテンションを上げる……が。


「えい!!」


 真横でエルメルと同じ――いや、それ以上の殴りダメージを叩き出すパルティを見て現実に戻る。

 物理職でもない治癒士(ヒーラー)に、火力が及んでないという事実に打ちひしがれて。


『パルティさんの火力エグない?』

『いや、エルメルさんの火力が無さすぎるだけでは?』

『それでも基本職の補正で他より筋力高いはずなんだけど……』

『パルティさんの武器の名前知りてぇ』


 そんな打ちひしがれているエルメルを余所に、コメントは盛り上がりを見せており。

 視聴者の興味はエルメルからパルティへと向かう――が、


「お前ら俺の取り柄が火力じゃないの知ってるだろうが!」


 そのコメント達に苛立ちを覚え、[縦横武刃]でマミーの集団の中へと突撃すると。


「[クレセントライト]! [刃速華断]!! [羽々斬り]!! [後の先]! [縦横武刃]! [刃速華断]!! [クレセントライト]! [クレセントムーン]!!」


 その集団を、スキルの乱発にて討伐。

 動き回り、反撃し、敵を斬り刻んだその後には、採取すべきアイテムしか残っておらず。


「凄いです!!」


 目を輝かせて拍手するパルティへ、それほどでもと手を向けるエルメル。

 ――そして、


「お、スキルマスタリーアップか。久しぶりだな」


 青白い光がエルメルを包み、コメントが何事だと騒ぎ始めるが。


「おー、[刃速華断]がマスタリーアップか。……途中でキャンセル可能になりました? ……え? でもどうなんだそれ?」


 そんなことはスキルの説明を読むのに夢中で気になっていないエルメル。

 そこへ、ミイラ達がリポップし、襲い掛かってくる。


「エルメルさん!?」

「ちょうどいいや、こいつらで試そう」


 危ないと思ったか慌ててエルメルへと声をかけるパルティを余所に、当のエルメルは全く動じておらず。


「[刃]!!」


 ミイラ達の腕をすり抜け、すり抜けざまに横薙ぎを放つと、


「[羽々斬り]!!」


 それまでは続きの連撃にしか繋がらなかった筈の攻撃から、全く別のスキルへとジャンプして。


「[速]!!」


 再度連撃スキルへと戻り、何事もなかったかのように攻撃を行い。


「[縦横武刃]!!」


 最初のターゲットを倒したことで、距離が離れている次のターゲットとの距離を一瞬で詰め。


「[華]!!」


 また何事もなく連撃スキルへと戻り攻撃を叩き込み。


「[クレセントライト]!!」


 エルメルの動きに反応して腕を前に突き出して防御の姿勢を取ったミイラへ。

 武器によるかち上げでその腕を跳ね上げて。


「[断]!!」


 フィニッシュによる一撃を見舞う。

 ……ただ、その一撃では倒せなかった。

 ――が、


「[クレセントムーン]!!」


 別のスキルの追撃へと繋ぎ、フィニッシュ。

 二つの異なるスキルを、交互に繋ぎながら倒すということをやってのけた。


「いや、ロマキャンもいい所じゃねぇか。スキルの幅広がったってレベルじゃねぇぞこれ!」


 一人、使用者のエルメルだけがそのポテンシャルに気が付いて叫び。

 見ている視聴者も、パルティも、『また変な動き出来るようになった』程度にしか認識していない。

 ……いや、エルメルの「ロマキャン」という言葉に反応した一定数の視聴者が、その有用性に気が付いた。


「は~。こーれは狩りが捗りますねぇ!!」


 そんなことを叫びながらミイラの群れへと突撃していくエルメルに、パルティは困惑するしかなかったのだった。

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