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尋ね人索敵

 洞窟内につるはしを振るう音が響く。

 その音は洞窟内を反響し、洞窟内にて同じくつるはしを振るうプレイヤーの音と重なり、混ざり合い。

 それはそれはもう不快な爆音へと成長していた。


「だぁ~~っ!! もう!! うるせぇっ!!!」

「設定でSEの音量を極限まで下げるでござるよ。それで幾分かマシになるでござる」

「すでにやってんだよ!! やっててうるせぇの!!」


 そんな音を延々半日。

 聞き続けたエルメルの耳は、もはや鳴っているのが反響音なのか、耳鳴りなのか区別がつかない程で。


「マジで気が滅入るから一旦外出させて……」


 つるはしをその辺へと放り投げ、洞窟から出ようとすると……。


「エル!! 来てんぞ!!」

「へ?」


 本来ならば敵が近くに来た時点で察知出来ている筈なのに。

 肉薄し、攻撃モーションに入られるまで。しかもマンチから声をかけられるまで気が付かなかったエルメルは。


「クソが!! [後の先]!!」


 攻撃を喰らうことを避けられないと感じ、即座にカウンタースキルを発動。

 宝石を散りばめた殻を持つ蟹型のモンスター、『シャインクラブ』の爪を剣で受け、ダメージを減らしながらカウンターへと転じ。


「[刃速華断]!!」


 間髪入れずの四連撃で『シャインクラブ』にとどめを……。


「かった!? こいつアホみたいに固えぞ!?」


 させていなかった。


「あ、そいつは撃破無理ですよ」

「は?」

「その代わり、一定以上のダメージを与えると鉱石落として逃げるので、つるはし振るう以外の鉱石の獲得方法になってますね」

「もうちょい早く言って欲しかったなぁ!」


 両手を上げ、威嚇をしている『シャインクラブ』と対峙しながら、イプシロンの説明を聞いていたエルメルは。

 そんなモンスターがいるのならわざわざ大音量でつるはしを振るう必要無かったのにと肩を落とし。


「ま、ひたすら殴るのもつるはし振るうのも変わらんっちゃ変わらん……のか?」


 今までの時間を、無限反響するつるはしを振るっていた時間を、意味のあった時間と自己暗示しながら。


「ごま! 俺はつるはし振るうよりやっぱこっち振るうぜ!」


 両手に持った二本の剣を見せ、『シャインクラブ』へと突進。

 それを迎撃しようとした『シャインクラブ』だったが、攻撃が届く寸前で、突如としてエルメルの姿を見失う。


「[縦横武刃]! か~ら~の~[横薙ぎ]!」


 そのエルメルは、『シャインクラブ』の頭上へと移動スキルで移動しており。

 さらに、もう使わないという意思表示か、つるはしをスキルで弾いて『シャインクラブ』へと射出。

 突如として頭上から襲われた『シャインクラブ』はそちらへと振り返るが。


「遅ぇ!! [クレセントライト]!!」


 構えていた両爪を弾き上げられ、


「[クレセントムーン]! おまけだ[羽々斬り]!!」


 追撃の振り下ろしと十字斬りをプレゼントされて。


「キュイイーーーーン!!」


 甲高い声を上げ、甲羅を分離させて蟹とは思えない速度で逃亡。

 その甲羅には、前述のとおり鉱石が多数張り付いており。


「ペリドットとトパーズか。上々上々」


 アイテムを回収したエルメルは、当初の目標通り、一旦洞窟の外へと向かうのだった。



「そっちには居ましたか!?」

「見つかりません!!」


 新しく解放された新エリア『グリーンフォレスト』。

 そこは、巨大な樹木の連なる緑のエリアで。

 それまでの砂漠とは大違いの大自然のエリア。

 ……というよりも、このグリーンフォレストの大樹たちが地面の水を吸い上げた結果、砂漠が誕生したと説明された方がしっくりくるほどだ。

 そんなエリアの中で、顔s率いる【ROOK WIZ】のメンバーは、とある存在を探していた。

 このエリアに入った瞬間にイベントが発生し、女神ラルナからこのエリアについての説明を受けた。

 その説明の中に存在したある種族。その種族が、このエリアと拠点を制圧する鍵を握る、と。

 ただ……、


「どこに居るんですかね……エルフは」


 その種族――エルフは、どれだけ探そうとも見つからない。

 まるで出会うことを避けられているように。メンバー総出で探しても、気配すら感じないのだ。


「いや……まさか」


 今の状況を整理して、なぜ出会えないかを立ち止まって考えた顔sは。

 一つ、ある仮説に辿り着いて首を振る。

 それは、あり得ないというよりは、あってほしくない、という意味の首振り。

 ……しかし、彼の予想は見事に的中していた。


「……嘘でしょう?」


 ゆっくりと上を見上げた顔sは、大樹の遥か上。

 雲まで届こうかと錯覚するような高さから、こちらを見下ろし観察する複数人の人影を確認した。

 その人影は、みな一様に耳が長かった。

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