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もはや修行

「ていうか、うん。ユニーク装備だったわ」


 ツタンカーメン戦で、[モルガナキック]並びにその効果を味方へと付与する歌スキル。

 それらが使われていなかったことを議論していた四人が出した答えとは……。


「情報が出回ってはいるからいくつかは手に入れたプレイヤーがいるんだろうが、如何せんアイドルのプレイヤーを他に見てないし」

「そもそもこのハゲワシが沸くポイントがマップ端なのも微妙に悪さしてる気がする」

「結論として、マイナー職かつマイナー敵のレアドロップ品だったから使ってる人いなかったでいいでござる?」


 選べる職業が多すぎるせいか、そもそも一つの職業を切り取った時に、その職業のプレイヤーの人数は絶対的に少ないわけで。

 その中でユニーク装備を手に入れる難易度と、『バルダスチャー』のオアシス周りという沸き位置の関係から、数える程しかこのスキルを使えるプレイヤーがいないのではないかという結論に至る。


「いいんじゃね? 今となっては検証無理だろうけど、どうせならツタンカーメンに試したかったが」

「侵攻でも起これば来そうじゃね? じゃないと新規勢がドロ品貰えないし」

「ありそー。エリアボスや拠点ボスが侵攻してくるパターン」

「ていうか侵攻ってどうなってんの? 最初のから来てないよな?」


 分からないことであり、予想でしかない議論の末の結論は、実際にツタンカーメン戦では使われていなかったという事実と、四人が納得すれば終了と言う事も相まってそれ以上議論されることはなく。

 それよりも、最初の侵攻以降に侵攻が発生しないという状況を考える方へとシフト。

 もちろん、残っているごまイワシ用のユニークを手に入れるため、再度ブルーリゾートへと戻りながらであるが。


「流石に一定周期で来ないと踏んでるでござるよ。でないと、死力を尽くして一度防衛したのに、その次の侵攻までに整えられなくてあっさり奪い返されるとかなったら萎えるでござろう?」

「燃えるが?」

「意地になるよな?」

「寝ないでレベ上げすると思う」

「まるで自分らが一般的なプレイヤーと思っている発言でござるが、残念ながら常軌を逸したプレイヤーという自覚を持つでござるよ」


 ため息交じりに首を振り、廃人としての自覚を持つように諭すごまイワシ。

 ついでに、各々の配信でもコメントによる総ツッコミが入ったことを追記しておく。


「んで? 倒すべきはあのタコだろ?」

「幼女泣かせたタコでござるね。略式裁判で問答無用の死刑。弁護の余地はないでござる」

「極刑の後に磔刑、私刑を挟んで死刑でおk?」

「おk。問答無用で執行していいござる」

「お前ら幼女絡むと会話怖えよ……」


 現場に着くなり理不尽な判決を『パコス』に対して下すごまイワシと。

 そのごまイワシの判決に則り、三回プラスアルファの死を宣告するエルメル。

 そんな二人を見ながら引いた目で見るマンチと、†フィフィ†。


「だって幼女は宝でござるよ!? 手厚く保護して大事に育てるべき対象でござる!」

「あんまり騒ぐと通報するからね?」

「悪かったように思うでござる」

「謝るの早すぎて笑う。……ん? 悪かったようにしか思ってないなら反省してなくね?」

「ていうか、幼女だけじゃなくてショタも保護対象だからね?」

「話ややこしくなってきたぞー」


 なおも騒ぐごまイワシは、†フィフィ†の脅しにより鎮静化し。

 収まりかけたところに、今度は†フィフィ†から燃料が投下され。

 もうツッコむ気も失せたと手を広げ、三人を無視して『パコス』を狩り始めるマンチ。

 このあたりで気が付くべきだったのだ。

 今から手に入れようとしているユニーク装備が誰用の装備なのかを。

 そのユニーク装備を欲しているプレイヤーのリアルラックを。

 そして、今までぶっ続けで戦闘を行っている自分たちに蓄積された疲労の量を。

 …………あまりにも出てこないユニーク装備に、四人は沼へと沈んでいくこととなる。



 序盤の敵という事もあり、スキルを使うことなく一撃で屠れてしまうパコス。

 移動して攻撃し、装備が落ちていないことを確認して移動。

 この単調な作業は、長時間連続でプレイしている四人の脳みそへとダイレクトアタックを敢行。

 このダイレクトアタックを防ぐ術はなく、即座に襲ってくる眠気と飽き。

 狩りにおいて一番大事なのはモチベーション。それが無ければ、狩りなどいくらも続きはしない。

 結果、狩り始めておよそ一時間。

 コメントにて体調を心配されるほどには無言になってしまっていた四人は一度集まり、体を休めることを決定。

 数日中にまた配信すると約束し、ログアウト。

 食事と睡眠とリフレッシュを各自で行い、全員が集まったのはおよそ三日後。

 主にエルメルが、


「寝貯めしとく」


 と言って一日半ほど睡眠していたのが、そこまで時間のかかった理由であった。

 ――かくして、


「ん~……久しぶりな気がするでござるねぇ」

「ちょっとタコ見ただけで嫌な気持ちが……」

「見るだけでお腹いっぱい……ってほど狩ってないはずなんだけどなぁ。まぁ、やるっきゃないからやるけど」

「今のうちにマンチニキと†フィフィ†ネキもキャラコン鍛えようでござるよ。タコ踏み台に前方三回転捻りとかやって」

「曲芸はお前とエルメルに任せるって決めてんの」

「やってもいいけど多分視点の影響でうち吐くよ? 三半規管弱いし」


 ゲームにログインして配信を開始した四人は、いつ終わるか分からない地獄のマラソンへ走り出した。

 周辺にいるプレイヤーに迷惑にならないよう、最低限の注意を払いながら。

 『パコス』に対する虐殺を、静かに開始するのだった。

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