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(1)(赤)

「せんせーしつもん」

「どうしたでござるか?」


 オアシスイーターと戦ったあたり。

 今ではその背中にあったオアシスのみが残っているその周辺に、『バルダスチャー』は居た。

 見つけたのだから狩ろうと思うのは当然で、ごまイワシもエルメルも当たり前に狩りを行っていたのだが。

 そんな途中に、†フィフィ†が、賢さ2くらいの口調でごまイワシへと質問を投げた。


「どーして当たり前に空中で狩り続けてるんですかー?」


 ハゲワシ型。つまりは鳥類なその敵は、当然のように空中におり。

 プレイヤー達を確認すると、ある程度観察したのち、急降下して襲ってくる。

 本来の狩り方であればその急降下を迎撃して叩き落とし、空へと逃げる前に撃破するのが正解なのだが……。

 ごまイワシもエルメルも、スキルの連打により空中に留まる(すべ)があることで、こちらを当然の権利と行使した。

 具体的に言うと、一度急降下してきた『バルダスチャー』を踏み台に他の個体と高さを合わせ。

 そこからは空中を維持するためにスキルを連打していた。


「出来るからだけど?」

「普通近接職って空中には手が出せないと思うんですけどね?」


 それの何が変なのかと地上の†フィフィ†に首を傾げながら尋ねるエルメルに、全部だと返す†フィフィ†。


「まぁ、あいつらがおかしいのは今更なのであって」


 空中のバルダスチャーに[オーラブレード]からの[パープルレイン]で攻撃を催促し、急降下してきたところを前鬼後鬼に迎撃させてボコらせる。

 そんな戦い方を確立したマンチが、言うだけ無駄だと†フィフィ†を諭し。


「そうだけどさー」


 唇を尖らせながら、急降下してきた『バルダスチャー』の脳天に踵落としをヒットさせて怯ませ、[ハイキック]で空中に蹴り上げて。

 蹴り上げたバルダスチャーを別個体に当て、地面に落としてから[メイクアップ]中の無茶苦茶な動きでまとめて撃破。

 他から見れば――というか、配信を見ている視聴者から『エルメル達の事を言えない位に十分におかしい』と言われる程度にはトンデモな動きをしている†フィフィ†も、もはや五十歩百歩というしかない。

 それに、エルメルやごまイワシの戦い方がいつまでも出来るかと言われれば、エルメルにはMP、ごまイワシには体力という明確な活動限界があるわけで。

 それが切れれば、一度地面に降りて回復を行う必要があるわけで。

 派手さはあるが、正直に言ってマンチや†フィフィ†とあまり効率は変わらなかったりする。

 そんな狩りを行うこと――三時間。


「お、これじゃね?」


 ユニーク装備のドロップ音が聞こえ、確認したエルメルが†フィフィ†にその装備を差し出して。


「おー、ご苦労であった」

「ありがたき幸せ」

「幼女を(かしず)かせるショタを見ることでしか得られない栄養素がある」

「その栄養素、生きてくうえで限りなく不必要に近い」


 現在戦っている個体を早急に終わらせ、二人の下へと集まるごまイワシとマンチ。


「んー……【蜃気楼のマイク】っていうネーミングはまー一回置いといてー」

「二度と拾われなさそう」

「確実な一撃を与える回し蹴りって説明が何を意味するか分かる人ー?」

「分かりませーん」


 装備を受け取った†フィフィ†は早速装備してスキルを確認。

 すると、どうにも理解できない説明のスキルがあったらしく、その説明の説明を三人へとぶん投げるが。

 当然のように分からないと返事をされる。


「まぁ、もう一個のスキルも似たような説明だし、とりあえず使ってみれば分かるっしょ」


 と早速急降下してきた『バルダスチャー』相手に、【蜃気楼のマイク】に刻まれたスキルを発動。


「[モルガナキック]!!」


 それは、いたって普通の回し蹴り。

 『バルダスチャー』を迎撃する形で放たれたそのスキルは、しっかりと『バルダスチャー』の頭を捉え。

 攻撃がヒットし、『バルダスチャー』が怯んだ直後、†フィフィ†の姿が――霧消した。


「は?」


 それを見ていたエルメルが思わず声を上げると、姿が消えたすぐ後ろからヌッと現れる†フィフィ†。


「あー……理解。確実なって、迎撃すらされないって事ね。……てことはカウンターとか、物理無効にすら通るって解釈でいいのかな?」


 どうやらスキルの説明の意味が分かったらしく、一人で納得し。


「これさ、パーティーメンバー全員に『一度だけ確実な攻撃を発生させる』っていう歌スキルがあるんだけど、実は強い説ある?」


 と尋ねてみて。


「迎撃不可で物理無効にすら通るのが本当なら確実に強い。今すぐに必要かは知らんけど、終盤に行くほどに需要は上がると思うぞ」

「†フィフィ†ネキの覚える自己バフって割と癖強いでござるよね。スキルの動き変化させたり、多段ヒットに変えたり、今のスキルだったり」

「そのスキルが刻まれてる装備がユニークとはいえ序盤にある意味よな。……もしかしてだけどそのスキル使えばツタンカーメンが楽だった説あるか?」


 尋ねられた質問に答えるエルメルと、考察へと入るごまイワシと……。

 余計な考えに至ってしまうマンチ。


「あー……砂の防壁も無視できちゃう感じ」

「砂纏ってる時も無効って考えたらこのスキル使うのはマストな感じだな」

「他にアイドル選んでるプレイヤーは居なかったでござるか? 居たら使ってると思うんでござるが……」

「アイドルの人口が少ない説ワンチャン」


 そのマンチの考えから、議論は白熱し始めて。

 時折襲ってくる『バルダスチャー』を完璧な連携で瞬殺しながら、その議論はもうしばらく続いたのだった。

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