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妥協無し

 マミーを狩り始めてから二時間半。

 ようやくマンチ用のユニーク武器、『パピルスの人形』をドロップした四人は小休止。

 一旦イエローデザートに戻ってみると、既に復興のために動いているプレイヤー達の姿が。


「みんな熱心でござるねぇ」

「生産職メインにしてみりゃ、ようやく本領発揮出来る場面だろうし。そりゃあ張り切るだろうよ」

「ついでに、復興具合に応じてギルドにもポイント入るらしいからそこもあるんじゃね?」


 そんな姿を見ながら、ポーションをちびちびと飲むごまイワシ。

 そのプレイヤー達の中には雅葛やノルマンディの姿もあったが、元気に肉体労働をしていた為、邪魔してしまうのは気が引ける。

 ……というのは建前で、目が合えば手伝わされる気がしてそっと目を逸らした四人であった。


「んで、次は俺なわけだが……各々スキルを使ってみた感想をどぞ」


 休憩を終え、四人がほぼ同時に立ち上がり。

 次なるユニーク武器を落とす敵、『コーストシェル』を倒すべく移動を開始した直後。

 先ほどの狩りで嫌というほどに新しく手に入れた装備のスキルの使い勝手を試していた全員に、エルメルが問いかけると……。


「分かっていたことでござるが、属性追撃が二種類あると火力の伸びえっぐいでござるねぇ」


 真っ先に口を開いたのはごまイワシ。

 二種類の土属性の追撃を得た彼は、しみじみと強化された火力を噛みしめる。


「結局何の記載もない属性追撃は魔法判定ってことでよかったんだよな?」

「出てるダメージ的にそうでござろう。ついでに、表記はないでござるが、魔法追撃が一割に対して物理追撃は三割と」

「ダメージレースだとごまが最強なきがするなこれだと」

「素ダメが貧弱なことを除けば欠点はござらんな。……問題はその火力なわけでござるけど」


 が、そもそも追撃のダメージを算出するために参照される元々のダメージ自体が大きく火力極とは見劣りするため、総火力としてみればあまり目立って伸びてはいない。

 ただし、それはあくまで火力極と比較した場合であり、『ネタ振りに人権を委員会』の中での火力は、エルメルと比べても遜色ないレベルまで上がっていた。


「俺はまぁ、予想通りぶっ壊れだったわけで」


 次に口を開いたマンチの感想は、やっぱりな、というもので。

 自分の欠点を補うようにステータスを強化する――欠点がない場合は全ステータスを上昇させる。というトンデモスキルと言うことが発覚し、マンチは一人祭り状態へと突入。

 四人の中で誰よりも固く、誰よりも火力が伸びて、文字通りの万能キャラへと変貌した。

 それこそ、短時間の火力であればエルメル達を差し置いて堂々のトップの火力を叩き出す。

 ――ただ、


「流石に接続時間三分の再使用五分は妥当……いや、それでも強いな」

「単純な火力ってかステの底上げって実は一番悩むところだからな。そこ積めるのクッソでかい」


 当然のように終始強化されるというわけではなく。

 クールタイムと効果時間の兼ね合いで、最低でも二分は強化無しの状態が出来てしまう。

 もっとも、それを補って余りある性能なわけであるが。

 ……もちろん、平均振りとかいう変態ステのマンチのみに許された特権でもある。


「火力だったらうちも強化されたじゃん? 連撃かますとヒット数お化けよ?」


 自分も自分もと、†フィフィ†が口を挟んできて。

 攻撃判定が二回発生する。言い換えれば、全部の攻撃に十割の追撃を発生させるスキルが当然弱いはずもなく。

 火力が上がらないはずもないそのスキルで、彼女の火力も一段階ほど伸びた。

 ただし、


「追撃効果まだないのがネックじゃね? 今後の伸びしろは一番あると思うわ」

「ほんそれ。早く属性追撃付与できる装備欲しー」


 今のところ追撃をエンチャント出来る装備に巡り合っておらず、属性追撃を駆使して殴っているエルメルやごまイワシと比べるとどうしても火力が一段見劣りしてしまうのだ。


「それはこの後取りに行くユニークにお願いしといてもろて」

「分かった。祈っとく」


 と、走りながらも手を組んで瞑想する†フィフィ†を余所に、最後にエルメルが、


「俺のスキルなんだが……マジで使い道難しいわ」


 と、他の三人とは違う文句をこぼした。


「具体的にどうぞ。……ぶっちゃけ狩りしてる時はそんなに不自由な動きしてなかったと思うんだけど?」

「そりゃそうだ。ほとんど使えてないからな」

「うん? 発動条件ある感じ?」


 使用者……というか、手に入れた者にしか分からない苦悩を吐き出すエルメルに、疑問符を浮かべる三人は。


「攻撃中と敵の攻撃範囲内で使用不可。さらに攻撃後も一定時間内使用不可。発動しても五秒前に自分の座標が戻るだけで状態はそのまま。だから相手の行動先読みして五秒前に攻撃喰らわない位置にいる場合かつこっちが攻撃行動してないときじゃねぇと発動出来ねぇ」

「うわぁ……聞いてるだけでめんどくさそう」


 †フィフィ†が代弁した言葉を、それぞれが想像し。


「実際めんどくさすぎてさ。ただ、発動さえ出来ればマジで可能性無限大なんだわ。攻撃後と攻撃中に発動できないだけで、攻撃する直前までは発動出来るから緊急回避には使える」

「なんか、熟練者用みたいなスキルって事か?」


 苛立ちからかヒートアップするスキルへの文句に、雑にまとめようとするマンチ。


「しかもその性質上集団戦に向かねぇしな」

「まぁ、基本集団に殴り込みに行くエルたそがおかしいのであって……」


 さらに不満をぶちまけるエルメルを、何とかごまイワシがなだめようとしたときに狩場に到着。

 ――するなり、即座に散ってコーストシェルを狩り始める四人。

 ……現在配信時間は四十八時間目に到達したところである。

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