表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/157

やったな!

 手に伝わるのはしっかりとした手応え。

 それが、ツタンカーメンに、まごうこと無き一撃を加えた何よりの証拠であった。

 ――が。

 未だにツタンカーメンを討伐したというシステムアナウンスはない。

 これまでのオアシス―イーターしかり、スフィンクスしかり。

 討伐時にはシステムアナウンスが響き渡っており。

 よもやこのツタンカーメンがその対象から外れているとは到底考えられない。

 つまり……、


「まだ生きてんのかよ!?」


 属性三種による追撃。そして、それに追加される敏捷値による追撃。

 それらを複数回叩き込んだが……なお。

 ツタンカーメンの体力を削りきるには至っていなかった。

 素の攻撃力が低い弊害か。あるいは、ツタンカーメンの魔法防御が高かったのか。

 もしくは……両方か。

 しかし、実際に倒せていないという事実に、剣を振ろうとしたエルメルは。


「んげっ!!」


 砂で形成された槍によって、体を貫かれる。

 ごっそりと持っていかれる体力。

 視界が瞬時に赤く染まる中、それでも体力がゼロにならなかった。


(あっぶねぇ! オーラ纏ってなけりゃ即死ダメだぞこんなの!)


 土属性の耐性を高めてくれるオーラ『砂の主の存在』の効果で何とか一命をとりとめたエルメルは、ひとまずその場から急速脱出。

 落下してきたのは何だと集まってくるプレイヤーの輪の中へと突っ込み、紛れて回復を行う。

 と同時に、


「落ちてきたのはボスのツタンカーメンだ!! だいぶ弱ってるからトドメ指すなら今だぞ!!」


 と叫ぶ。

 その声を聴いて理解したプレイヤーからツタンカーメンへと殺到。

 ついでに、このタイミングで落ちてきたごまイワシもツタンカーメンへの攻撃へと参加。

 当然、砂の防壁や敵、魔法に阻まれはするが、流石に地上では多勢に無勢。

 攻撃の頻度は弱まり……そして――。


『エリアボス:ツタンカーメンの討伐に成功しました。これにより、次の町『グリーンフォレスト』への侵入が可能となりました。また、条件を満たしたため、「武器鍛錬」、「武器錬磨」が可能になりました』


 とのアナウンスが。

 さらに、


『今回のエリアボス討伐において功績を上げた一部プレイヤーに特典が配布されます。また、参加プレイヤーの所属していたギルドにも、功績に応じた功績ポイントが付与されます』


 と続き。


『功績上位プレイヤーは以下の通りです。

 ・プレイヤー名:ごまイワシ 功績内容:スフィンクス討伐。並びにツタンカーメン討伐の助力。

 ・プレイヤー名:エルメル 功績内容:同上 対ツタンカーメン最大与ダメージ。

 ・プレイヤー名:顔s 功績内容:ツタンカーメン討伐ラストアタック

 ・プレイヤー名:琥珀 功績内容:ツタンカーメン討伐の助力。

 ・プレイヤー名:マンチ 功績内容:NPC避難の協力。並びに鉱石屋の保護。

 ・プレイヤー名:†フィフィ† 功績内容:同上。

 ・プレイヤー名:紫陽花 功績内容:同上。

 ・プレイヤー名:パルティ 功績内容:エリアボス戦中最大回復量。

 功績ポイント上位獲得ギルドは以下の通りです。

 一位:【ネタ振りに人権を委員会】 獲得ポイント120

 二位:【ベーラヤ・スメルチ】 獲得ポイント 85

 三位:【ROOK WIZ】 獲得ポイント80』


 と、表示される。


「拙者たちが第一功績でござるか」

「四人のギルドで全員功績上位に名前連ねるとかやばくね?」


 それを眺めながら、合流したエルメルとごまイワシが顔を見合わせながらはしゃぎ。


「お前ら所持品確認しろ。またダイレクトでドロ品手に入ってんぞ」

「今回もよさげな装備だったよん」


 上から降りてきた黒曜の背から飛び降りて、マンチと†フィフィ†も合流。


「ていうか顔sがちゃっかりラストアタック持って行ってる辺り流石だなって感じ」

「それよりも俺らだろ。マジでNPC避難しかしてねぇのにそこ評価されちゃうかー」

「にやけてるでござるよ。あとその言い方ミ〇ワっぽい」

「かーっ。そんなつもり無かったのになー。評価されちゃうかー。かーっ」

「うっざ」


 そんな騒ぐ四人に、近付いてくる人影が……。


「皆さんおめでとうございます」

「おめでとうはおたくもだろうに。ラストアタックおめでとう」

「最高与ダメに言われると何も言えませんよ」


 近づいてきたのは顔sであり、その表情は、一目見ただけで警戒を強める様な笑みであった。


「何用でござる? 手に入った特典でも見せ合うでござるか?」

「いえいえ。そんなつもりはなくてですね。お願いが少しございまして」

「お願い? ……内容によるでござるね。拙者たちに不利になるようなことなら普通に断るでござるが――」

「いえ、そんな無茶なお願いとは思っておりません。……ステータスを何に振っているかを教えていただきたいだけなんですよ。――あ、ごまイワシさんとエルメルさんだけで構いません」

「うちらはいらないってさ」

「目立った活躍してないから興味ないんだろ」


 顔sのお願いとはステータス振りの公開。

 しかも、エルメルとごまイワシのみという、露骨な功績を上げたステータス振りを要求しており、当然のように面白くないマンチと†フィフィ†が拗ねてそっぽを向く。


「体力極」

「敏捷極。これでいいか?」


 そんな二人を確認し、可能な限り素っ気なく返した二人は、手を上げて強制的な別れを顔sへと告げる。

 そして、


()()()()()()行こうぜ。そこで特典確認し合おう」


 とマンチたちに告げ、足早に立ち去っていく。

 そんな四人の後ろ姿を見ながら顔sは、静かに握りこぶしに力を籠めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ