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デヴウルト

「好機と見たり!」

「抜け駆けさせっか!!」


 ツタンカーメンの顔面にヒビが入るや否や、そのヒビ目掛けて突撃するごまイワシとエルメル。

 その二人の動きを、一瞬ポカンと。呆気に取られて見ていた顔s達は。


「わ、私たちも行きますよ!!」


 ワンテンポ遅れる形で、発生したヒビへと向かおうとするが……。


「そんな……」


 ヒビが発生した場所はなんと額。

 空中を移動する以外は、ツタンカーメンの顔をよじ登らなければ到達できない場所であり。

 だったらちよじ登ろうとするギルドメンバーの一人。


「え?」


 しかし、そのプレイヤーのしがみ付いた場所が波打って。

 そして、迎撃。

 ガードも何も出来ないままに、腹へと迎撃を喰らったそのプレイヤーは。

 防具がしっかりとしているため、それだけで体力は尽きなかったものの。


「うわぁぁぁぁあああっ!!」


 迎撃の勢いに押し出され、ツタンカーメンの肩からも弾き飛ばされて。

 重力によって自由落下を開始。まさかの、命綱無しのバンジージャンプを強制させられる。

 思わず目を逸らして結果を直視しないようにした顔sだったが、その目の前には大きな影が迫ってきて。


「貴方が落としたのはギルドメンバーですか? それとも、知り合いのプレイヤーですか?」


 先ほど落とされたプレイヤーを背に乗せた、鷹状態の黒曜の姿がそこにあり。

 ふざけた口調で顔sへと問いかける。


「大事なギルドメンバーですよ。どうもありがとうございます」

「いえいえ、後でお礼はいただきますので」


 そんな黒曜へと感謝の言葉を送れば、誠意は言葉よりお礼とちゃっかりしている黒曜。

 そして、


「皆さま、もうすぐこの場所を砲撃隊と射撃隊によるなんでも砲台ヒャッハー作戦が実行されます。今下がるならば無料にて下まで向かうタクシーとなりますが?」


 と。

 どうやら地上では、ツタンカーメン討伐の為の集中砲火の準備が進められていたらしく。

 そのことを聞いたエルメル、ごまイワシ。顔sとギルドメンバーでそれぞれ顔を見合わせて。


「当然残るけど?」

「下からの射撃? そんなのに当たるほどヤワじゃないでござるよ」


 ツタンカーメンの顔付近に居続けると宣言した二人と。


「降ります。味方からの攻撃でやられる盾役ほどみじめなものはありませんので」


 降りることを選択した顔s。

 顔sの発言に、何人かのギルドメンバーが不満そうな顔をするが……。


「この場に黒曜さんが居るということは、射撃部隊の筆頭は【ベーラヤ・スメルチ】です。ギルドメンバーはともかく、あそこのリーダーの攻撃は私の防御も貫きますよ? 当たれば即空中からの自由落下ですが?」


 と顔sが説明すれば、納得したように頷いた。


「では、これより何往復かして降りることを希望する方々を運んだ後、射撃のタイミングをお伝えするために戻ってきます。それまでに床……ここだと砂ですか。砂を舐めないよう」

「誰に物言ってるでござる。そんなへま……五%くらいでござるよ!」

「割と無視できない確率で草。ゲームによっては確定で発生するレベル」

「では、第一陣、降ります」


 プレイヤーを四人ほど乗せた黒曜はそのまま地上目掛けて一直線で落下して。


「あれなら、落ちるのとさほど変わらねぇんじゃねぇの?」


 と、エルメルに言われるくらいには速度を出して地上に到達。

 すぐにエルメル達の所へ戻って来て……と繰り返すこと数度。

 最後の一往復になった時、


「失礼、先程攻撃タイミングを伝えに戻ってくると言いましたが、訂正します。この方々を送り届けた瞬間から攻撃が行われます。ご武運を」


 と、黒曜が伝えてきて。


「攻撃は避けるでござるが、くれぐれも面白がって拙者たちを狙うなと釘を刺しとくでござるよ」

「では」

「なんとか言えでござる!!」


 皮肉っぽく言ったごまイワシの言葉に、にっこりとほほ笑んで返した黒曜は、今度は地上を一直線には目指さずに。

 ツタンカーメンから距離を取るようにしばらく水平に移動すると。


「私も一撃撃っときたいんですよね。[影鷹満天(えいようまんてん)]!!」


 自身の影から、分身を四体ほど作り出すと。

 その四体を、ツタンカーメンの顔面。

 ……もっと言えば、ヒビの入った額へと殺到させ。


「[爆ぜろ]!!」


 その一言で、分身が爆発。

 周囲に黒い影をまき散らしながら、ツタンカーメンの亀裂を広げると。


「合図を確認! 全砲門、並びに射撃隊、放て!!」


 地上でそれを見ていた琥珀が号令をかける。

 その号令を合図に、二十の砲撃と無数の銃や弓矢による射撃が、角度を変え、お互いがお互いを邪魔しないように計算されて。

 先ほど黒い爆発が起こった、ツタンカーメンのヒビが入った額へと攻撃が集中する。


「甘い甘い甘い!! 弾幕薄いよ!! 何やってんの!!」

「当たらなければどうと言う事もないでござるぅ!!」


 そんな集中砲火にさらされたエルメルとごまイワシだったが。

 まごうこと無き変態挙動で迫りくる弾を回避。

 どうやら、ターゲットが自分ではない攻撃は、実際に当たりさえしなければダメージを受けない仕様らしく。

 それをいいことに、ツタンカーメンに向けて飛んでいく攻撃の合間をグレイズ(かすり)しながら追い越して。


「今まで溜めてたから喰らいやがれ!! [スラッシュトルネード]!!」

「いつも心はピンク色。喰らえ恋心!! [桜花絢爛:春吹雪]!」


 ツタンカーメンを中心に刃の竜巻が発生し。

 その竜巻でも微動だにしない巨大な桜の花びらが周囲を漂うと。


「狙いが甘いでござる。拙者たちで補正するでござるよ」


 ツタンカーメンに当たらなかった攻撃……主に砲撃へ向けて跳んだごまイワシは。


「ほい、ライナー」


 ツタンカーメンへと打ち返す。


「それ、俺の専売特許なんですけど。[薙ぎ払い]」


 そんなごまイワシを見ながら口を尖らせて抗議するエルメルの打ち返した砲弾の方が、スキルで弾いた分勢いがあったことを確認して。

 エルメルは、ごまイワシへとどや顔を向けるのだった。

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