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砂降れば地上は迷惑

 先にツタンカーメンの顔面へとたどり着いていたエルメルとごまイワシ。

 その二人に、ツタンカーメンのヘイトが向いているのは当然であり、その二人は打撃属性の攻撃はない。

 となれば、その二人が囮となってツタンカーメンの攻撃を受け、【ROOK WIZ】のメンバーで殴るのが正道だろう。


「召喚される雑魚の面倒までは見れねぇぞ!」

「構いませんよ。その辺に後れを取るようなプレイヤーは私のところには居ませんから」

「顔に近づくと迎撃攻撃も来るでござる。予備動作として表面の砂が波打つから見逃しちゃダメでござるよ」


 躊躇いなく空中へと身を投げたごまイワシがスキルでツタンカーメンの目の前を飛び回り始め。

 そのすぐ下の鼻っ面をエルメルがスキルで襲う。

 その間に、顔sとギルドメンバーたちは、先ほど凹ませた辺りへと召喚される雑魚を蹴散らしながら進み。

 それぞれが、(つち)や棍棒と言った打撃武器へと装備を変更し一心不乱の殴打を開始。


「陣形を組みます。「どまえ」さん、「Winber」さん、「構」さんは背後から襲ってくるモンスターの返り討ちを」


 ツタンカーメンの肩という限られた足場の中で、全員が攻撃に参加できるスペースはない。

 故に役割分担をはっきりとさせ、限られたスペースの中で効率のいい攻撃を目指して指示を飛ばす顔s。


「私と「ヒラガナ」さんで迎撃を受けます。表面が波打ったら一歩引いてください」


 名前を呼ばれたプレイヤーは顔sに向かって頷くとそれぞれ指示されたポジションに動き。

 それ以外のプレイヤーは並んでツタンカーメンの頬へありったけのスキルを叩き込む。

 そんな様子を見ていたエルメルは、


(ギルドの人数多いとああやって戦えんのか……。面白そうだな……)


 などと考えており。

 突如として空中に召喚された砂の刃の雨を避けるために[縦横武刃]でツタンカーメンの頭の上に移動。

 移動が全て攻撃判定となるために、ツタンカーメンの頭の砂をいくつか削り飛ばして着地したときに変化を見つける。


「ん?」


 それは、先ほどまでは絶対になかったと言い切れる大きな変化。

 顔s達が殴っている顔の反対側。そちら側の砂が、まるで内から押されるように盛り上がっていたのだ。

 そして、その盛り上がりは反対側で顔s達が攻撃を行うたびに僅かながらに大きくなっていっており。

 やはり打撃属性の攻撃を行うことが正解であると、如実に物語っていた。


「一応コリンとマンチが俺らの中じゃ打撃属性……だよな。あいつらも連れてくるべきだったんかね」

「何囮さぼって黄昏てるでござるか」

「いや、俺とごまだとこうして打撃属性求められたときにお手上げだったから、コリンとマンチ居たらどうなってたかなーと。多分この場だとコリンが超絶活躍するんだと思ってさ」


 ツタンカーメンの頭上で止まって思考していたエルメルへ、サボるなとコメントを入れるごまイワシ。

 それに対し、思考の内容を明かしてごまイワシも思考の中へと巻き込もうと図ると……。


「今後ボスがそうだった場合、確かに拙者たちだけだと厳しいかもでござるね」

「だから結局ギルドでの団体行動が必須なのかなと」

「ケースバイケースだと思うでござるけどね。現に今のボスもある程度役割分担が必要でござる」


 今の段階も含め、ごまイワシとエルメルはほとんど補助のような役割しかしていない。

 砂の防壁を削っていた最初の段階。そして、敵の攻撃を引きつけている今。

 けれどもそれは、誰かが担わなければならない役割であり。

 それが攻略に結びついていることは言うまでもない。


「始めからどんな配置が最適かわかりゃあ楽なんだけど、それじゃあつまんねぇし」

「ボヤいてる暇あるなら動くでござるよ。顔s殿に後から文句言われても知らないでござるからね?」


 ごまイワシを同じ思考の海に沈めることに失敗したエルメルは、その思考を頭の片隅へと押しやって、またごまイワシと連携しながらツタンカーメンの眼前を動き回るのだった。



「割と無差別だな!?」

「結構面倒なんだけどこれ!」


 エルメル達が上で役割がどうたらと話しているころ。

 ツタンカーメンに襲われる可能性を考慮してNPCを避難させていたマンチと†フィフィ†。

 その途中で、不定期に、不定量降り注ぐ砂の刃の雨や砂のモンスターたち。

 それらが、既に地上に出現し、プレイヤーを襲っていた砂のモンスターたちへ降り注ぐ様子を見ながらマンチが叫ぶ。

 自分が狙われているのなら。あるいは、狙いがはっきりしているのならば回避もそこまで難しくはないのだが。

 残念なことに、降り注ぐ砂の目標ははるか上空のごまイワシかエルメルであり。

 その二人が回避したせいで地上へと降り注ぐ砂の攻撃は、もはやランダム範囲の厄介な攻撃である。


「気付いたらごまたち居なくなってるし、どこに行ったのやら」

「どうせあいつ倒すのに尽力してるでしょ。男子って戦闘大好きだし」


 NPCを連れて町の図書館に移動中、目の前に振ってきた砂虎を†フィフィ†がサマーソルトで浮かし、マンチが[オーラブレード]から[パープルレイン]で追撃して砂へと戻す。

 あまりの手際にNPCから感嘆の声が上がるが、そんなのはいいからと移動を促して。


「これで図書館攻撃されたら笑うけどな」

「笑えないけど。でも流石に広場から離れてるし、攻撃されないでしょ」


 町のNPC全員を避難させ終わり、これからどうするかと考える二人の耳に、一発。

 重く響く射撃音が響き渡ったのは……その時だった。

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