散らかった悲しみは、マイクロピペットで地道に吸い上げよう
寂しくなるのには、いつも理由があるわけではない。
しかし、今回私が経験した寂しさには、明らかな理由があった。
世界に疫病が蔓延し、人々がお互いに距離を取るようになって。
それで、私も皆がそうするように、親しい人間と距離を置き合った。
きっと単純だ。
距離が離れれば、心も離れる。
本当の友達なら、本当の恋人なら、
なんて言葉は、対策に過ぎない。
脅威がじわりじわりと滲み寄る。対策を立てんと脳が働く。
けれど、能動を用いるほどの関係も、理由も存在しなかった。
そして、ぬたりとした煩わしさが立ち消えてしまったのも本当で。
それは、人によっては割に合う報酬なのかもしれない。
大した事ではないよ、それは真実。
ただ、私が元気を無くしただけで。
ただただ、私が寂しいだけで。
彼らの飄々とした振舞いに。
きっと元には戻らないんだろうと、察しただけだったのだから。