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見習い魔女アガサの手紙はいつも旅行記  作者: アオガスキー
カリブ海編
5/32

見習い魔女は絵描きチート

 以下が便箋に綴られた飾らない言葉である。本当に、もう少し飾ってもいいのだが飾らない言葉でつらつらダラダラとかかれていた。


《Hi コウタ!


 聞いてよ、すっごい偶然!


 旧市街を歩いていたらアンナさんとパブロとバッタリ会っちゃったの!

 2人はデートかな?パブロはホテルで働きだしたばっかりだけど早速不祥事?あれ、独身同士ならお客さんとスタッフでも別にいいんだっけ。


 とにかく、マキシ丈の花柄のキャミソールワンピースをさらーっと着こなしたアンナ姉さんとTシャツ短パンビーサンのパブロが現れたから、一緒にバーに入ろうかって話になって。でも近くにお洒落なカフェがあったから、そっちに入ることにしたの。ジェシカが案内してくれたの。同封したイラストは全部このお店の中で撮ったんだよ。


 え?なぜ描いたでなく撮ったというかって?

それはこのフレーム型の魔術道具を使って撮るからですよ。

(ご丁寧に黒の写真たてらしきイラストとそれをのぞきこんでいるオカッパ頭の女の子が便箋の端に描いてある。ペロリと舌をだしていることからばあちゃんが舐めていたキャンディのペコちゃんとかいうキャラクターかと推測したが、文脈を読めばこれはアガサの自画像なんだろう。率直にいって、まあ下手な絵だ)



 こうフレームを、収めたい景色にかちっと合わせるでしょ?そうすると0.5秒でその枠内のイラストが描けるの。バン!魔法ってすごい!


 え?写真?カメラ?そんなもの由緒ある魔女は使わないのですよ!》



 ふぅ。僕はいったんお茶をいれることにした。煎茶は陶器の急須で葉っぱからいれるにかぎる。渋みが取れて甘くなるのだ。

 

 毎度のことだが、アガサの魔法は大概、現代の技術で十分互換できる。スマホとWi-Fiがあればアガサの魔法は不要だが、たぶんこれからもっとすごい魔法も覚えていくんだろう。たぶん。………たぶん。


 続きを読み進める。



《…けっこう魔女好みのカフェなんだよ。アメリカ人の夫婦がやっているお店で、2人とも三角帽子を被ってケープを羽織っているの。しっかり胸やお腹が隠れるタイプだからエプロンの代わりなのかもしれない。

 奥さんが珈琲をいれながら少しの間雑談につきあってくれて、ここのものは家具も本も雑貨も全部アメリカからもってきたっていってた。

 私達はアメリカーノとアイスラテ、ラテ、マッドティーパーティーを頼んだよ。付け合わせにこの紅茶にだけクッキーがついてた。アンナさんずるい。


 プエルトリコはアメリカ領だけど現地の人の母国語はスペイン語なんだよ、知ってた?


 そうそう、おトイレを借りようとたら、鍵がかかっていて30センチもある長い大きな鍵を貸してくれたの。トイレのドアはめちゃくちゃ大きかった。ここの天井高どうなってるんだか。


 かと思えば全部の家具が赤ちゃんサイズに小さくつくられている部屋もあって、アンナさんはこの部屋が気に入ったみたい。巨人の気分を味わえるって。1枚絵を入れておいたよ。


 針で動く丸い壁掛け時計に、宝箱の置物、本を読む猫ちゃんの形をした置物、瑞々しい薔薇の一輪挿し、本棚の半分以上を埋め尽くした百科事典、芝生みたいに緑色に染められた毛皮の絨毯…ね、魔女好みでしょ!》


 芝生がなぜ魔女好みかはわからないが、とりあえずアガサがこの店を気に入ったらしいのは伝わってきた。

 ここまでで便箋の2枚めだ。3枚めは二行しかない。ええと?


《そういえばコウタからの手紙に数字が大きくかかれた薄っぺらい紙が入ってたけど、ヒント?

ヒントはわかりやすくなきゃダメなんだよ!》



「やった、ヒントだと思ってる!」

 僕はついコタツの机上をたたいて叫んでしまった。

 頭をスイングさせていた伊藤がハッと目をさます。


「…?」


 伊藤が虚な目で首を傾げる。


「ヒントだと思ってるからには捨ててないはずだ!」


 よし、運がある。運がきてるぞ。


「伊藤、そっちの紙とって。あああ違う、それ領収書!、、、そう、そっちのA4のやつ」


 僕はまず懇切丁寧にそのヒントの紙を返してほしい旨を返信に書いた。ペンを置き、3点のイラストと3枚の便箋を机の上に並べてみる。


 ふすまの向こうが明るくなってきていた。日の出時刻を過ぎたらしい。

 伊藤は炬燵布団に潜り込み寝る体制に入っていたが、まぁお客さんじゃないのでほっとこう。本来なら押し入れから布団をひいてやるべきだがまぁ伊藤だし。


 僕は真剣に6枚の紙を見比べる。何か違和感があったんだ、読んでいるときに。なんだっけ、ええと。


「あ」


 僕は1枚めの写真…もとい色鉛筆アートをとりあげた。細かいところまで丁寧に書き込まれている。おかげで違和感は確信になった。


「どこにやったっけ?」


 僕は立ち上がり、自室の本棚の上の方から中学校のときの教科書の一冊をひっぱりだした。やっぱりそうだ。これだ。


 続いてネットで検索する。やっぱり、予想通りだ。よし。


「謎は全て解けた」


 寝ている伊藤がハッキリといった。心を読んだのか寝言か?

 とかく僕はペンをとり、待ちくたびれた風の鳩に手紙を託した。


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