嵐の前に、既に騒がしい
美晴さんの脅は……ゲフンゲフン!お説教確定のお知らせの後、多少早足になっていたおかげか普段乗っている電車の1個前の時間の奴に乗る事が出来た。
そんなわけで、今は電車の中なんですが……
「おい…あまりコッチに身体を押し付けるな、か弱い乙女の身体だぞ……!」
「仕方ないだろッ……“満員電車”なんだから」
そう俺らが乗った奴は、会社勤めのサラリーマンが大量に乗っている“満員電車”だったのでした!てか、別にか弱く無いだろ、お前。
「たく、誰だよ!1個前の奴に乗ろうって言ったの!」
「お前だ、バカ」
美晴が逆ギレしていたので、ちゃんと真実を教えてあげた。俺、エライ。
そう言った直後、美晴は“えッ?”みたいな顔したが、すぐ様片目を閉じてウィンクしてきた。なんじゃ、そりゃ。このヤロウ可愛いな、チクショウ!
とりあえず、早くこの状況を変えたいが、電車の中で何も出来る事ないんですけどね。
まあ、周囲ぐらいは見渡せるかな。頭を回して後ろを見る。
俺らが降りる駅は、次の駅からあと2つのところにある。
おそらくこのサラリーマンたちは会社のロゴが入ったペンを見る限り次の駅で降りるだろう。
俺は美晴にその事を耳元で伝えた。
「……そんなわけだから、もうちょっと我慢な」
「ッッッッ!わ、わかったから!顔、近い!!」
「あ、ごめん」
美晴さんの言うこと絶対だから僕、それに従う。すぐに頭を下から上にあげた。
それから5分経って、ようやく俺らが座れるくらいまで人が減った。全速力で走っても無いのに足がパンパンである。サラリーマンの足の筋肉絶対ヤバいだろ。なんで平気な面して電車降りていけんだ。
近くにある席に2人で座った。美晴は大丈夫かと心配になって見ると、両手を耳元に当てていた。
「おい、大丈夫か!?」
肩に手を乗せて、聞いた。ちょっと力が入りすぎてるかもしれない。
「だ、大丈夫だからッ!心配しないで……てかちょっと痛い」
あ、やっぱり力入ってた?力を抜いて、美晴の肩から手を下ろす。本当に良かった、美晴が無事で〜!
(耳元で囁かれると、前髪に隠れた目が見えてドキドキするし、くすぐったい!)ボソボソ
美晴が頬を赤らめて何か言っていたのを、この主人公は知らない。
***
電車での一件以外は特に何事もなく普通に歩いて学校に行くことが出来た。校門前には、多くの学生が集まっている。みんな、春休み開けの再会を喜びあっている。
べ、別に寂しく無いんだからね!
突然、ツンデレキャラっぽくなってしまったが気にしないでくれ。来年も同じ気持ち味わうだろうから、それまでに友達作ろうかな。
「おい、ぼーっとしてないでクラス発表見に行くぞ!」
「はいはい……」
はぁぁ〜、これだよこれ。毎年恒例のクラス発表。クラスの面子がどれだけ良いかで1年が決まると言っても過言じゃない学生生活。それを知らせる魔の時間こそ!このクラス発表なのだ。俺の場合は、どれだけ静かでいられるかが重要なだけなんだけどね。
「えーと、私は……」
美晴が自分の名前を探し始めた。俺もそれに続いいて自分の名前を探す。
おっ、有った有った。3組か。
「司!何組だった!?」
「どうどう、落ち着け野蛮人。こういう時は相手に尋ねる前に自分から言うんじゃないか?」
「あ、ごめんごめん。私は3組だったぞい!」
胸の前で、手をピースにししてニカッと笑った。ちょっと可愛いすぎませんかね。
てか、今年はお前と一緒か…………嫌な予感しかしない。
「俺も3組だよ……」
「え〜、マジか〜」
「ホント、嫌だよな。腐れ縁って怖い」
「え、別に嫌じゃないけど……。」ボソボソ
「なんか言ったか?」
「うっさいわ!!いいからとっとと教室行くよ!!!」
美晴はそう言いながら、俺の手を取っていく。ついでに、男子達からの冷たく怖〜い視線も付いてきた。
俺は無実だ!コイツが悪い!
俺たち2人は同時にクラスの中へと入った。お手手繋いでいたからね。
「おっはよー!美晴!」
「おはよー、ゆかっち!」
彼女は美晴の友達だろうか。なら話に集中したい筈だ。俺は自分の手をスルリと美晴の手から離した。バレたら絶対説教くらうから静かに自分の席へと向かった。
席に座ったら、狸寝入りすること以外ない。それがボッチに出来ることなんだよ、悪いか……?
突然、教室のドアがガララッと勢いよく開いた。
「おい、お前ら!このクラスに転校生が来るってよ!」
『マジで!!?』
「え、女子か!?」
「ああ!しかも、とびっきり可愛いらしい!」
『イヤッホーイ!!!!』
俺以外の男子達の気持ち悪い雄叫びを聴きながら、女子達がめっちゃ引いている。
軽く言って、カオス
「おい、男子ども。時計を見ろ時計を。時間だぞ」
担任の先生が入ってきて、一気に教室中が静かになった。ホント何?このクラス……騒がし過ぎる。
「先生!転校生が来るって本当ですか!?」
「本当だぞ。しかも、男ども喜べ!美少女だぞ〜」
『イヤッホーイ!!!!』
カオス再来。本当に騒がしいなぁ〜。
「じゃあ、紹介するぞ。入ってきてくれ!」
ここからはノーッタチだ。俺は狸寝入りを続ける。
今度はガララッとおとなしい音を立ててドアが開いた。
周りからは、男子達の気持ち悪い声が聞こえてきた。
次回、前世の彼女が降臨する!
デュエル、スタンバイ!