第96話 秘密の作戦会議
こんにちわ。
先週更新できなくて、すみませんでした。
台湾からの留学生、陳沙崙が茉莉奈からいじめに遭ったことは、真樹とオリエント通信によってアジア各地に広がった。そして、そのニュースを聞きつけた沙崙の両親、健豪と玉華が緊急来日したのだった。そして今、二人が宿泊しているホテルのレストランに関係者が集められ、秘密の作戦会議を行っている所だ。丁度料理が運ばれ始めた頃、健豪は立ち上がって真樹のに声をかけた。
「君は湯川君と言ったね。」
「はい。改めて宜しくお願いします。」
「湯川君、君が飛び降りた娘を助けてくれたり、メディアに情報提供をしたと聞いたが…、本当に感謝する。君がいてくれて娘の命は助かった。」
「そ、そんな…僕は大したことはしてないですよ。」
健豪に感謝され、真樹は謙遜しながらそう言った。すると、母である玉華が少し悲しそうな表情で沙崙にいった。
「沙崙、あなたの夢を応援したくて今回の留学も後押ししたけど…ごめんね。結果、あなたを辛い目に遭わせちゃって。」
「そんなに謝らないでよ、母さん。確かに酷い目には遭わされたけど、ここにいる人達は助けてくれたのよ。だからもう、大丈夫。」
悲しむ母を沙崙が慰める。そして、運ばれてきたパスタを一口食べた後に慶が言った。
「沙崙は何も悪くありません。団地にいたストーカーだって、思い込み激しすぎてすごい気持ち悪かったです。逮捕されて本当に良かったよ。」
更に杜夫も続ける。
「八広は美人だけど、あの女王様気質が何だかなぁ…。金町は生徒に好き嫌いあって、俺も嫌われてたから、あいつの授業受けんのは億劫だったんだよな。まぁ、今回でボロが出っちまったからある意味天罰だな。」
杜夫は茉莉奈から「キモい」と悪口を言われ、金町からも「バカに授業するのは時間の無駄」とキツく当たられた経験があったので、二人に同情する気はなかった。立石も、スープを飲み終えた所で話し始める。
「確かに金町先生は気に入った生徒を贔屓して、それ以外は冷たくする傾向はありました。八広さんは才色兼備故に金町先生も気に入ってたみたいですが…。それに、あの人は自分のやり方は全体に正しいと聞かない上に、面倒事は無視するので、私や関屋先生も注意したのですが、ダメでした。私はあまり力になれなくて、すみません。」
立石は謝ったが、沙崙一家は立石を慰めた。
「先生、そんなに気にしないでよ。先生が私と湯川君を病院に連れて行ってくれて、相談に乗ってくれた時は嬉しかったんですよ。金町先生とは違うって思って。」
「助けてくれてありがとうございます、先生。お陰で、娘の心が少しでも救われたと思います。」
「よかったわねぇ、沙崙。良い先生に出会えて。本当にありがとうございます、先生。」
一家は立石を責めることはなかった。そして、今回このメンバーが集まった事の本題を飯田が話し始めたのだった。
「えー、皆さん少し気分が落ち着いた所でお話しがあります。このまま、今回の首謀者達を勝ち逃げさせる訳にはいきません。なので、陳さん御一家には学校側と直接対決して頂く形になりますが、大丈夫でしょうか?」
「勿論よ、飯田さん。いっぱい文句言ってやるんだから!」
「今回私達はそれが目的で来たんだ。断る理由などない。」
「娘をこんな目にあわせた人達を許しません。望む所です。」
沙崙達はすでに臨戦態勢にあった。飯田は更に続ける。
「既に各メディアだけでなく、教育委員会も動き始めています。今回我々が書いた記事も、多くの方に読んでいただけましたが、やはり沙崙を擁護する声ばかりでした。味方は多いです。湯川君の言葉を借りますが、奴らを地獄に送ってやりましょう。」
飯田の言葉にその場にいた全員が頷いた。そして、その後は食事を楽しみ、健豪と玉華はホテルの自室に戻り、真樹達は帰宅したのだった。
真樹達が反撃の準備をしている一方、今回の事件の元凶達は徐々に追い詰められていった。沙崙の担任である金町美和子は言うまでもない。
「何で、こうなるのよ!」
自宅に戻った金町は怒りを爆発させながら、鞄をベッドに投げつけた。あのニュースが報道されて以降、金町は痛烈な批判と共にメディアから追い回される羽目になり、日に日に不機嫌になって行った。
「あのまま八広さんをアメリカの一流大学に合格させて、私も出世街道まっしぐらなはずだったのに、湯川君のせいで全部台無しよ!あんなクソ生意気な奴に、何で…。」
茉莉奈は金町にとって期待の星だった。美人で優秀な彼女は将来必ず大物になると信じていた金町は、少しでも力になりたいと1年生の頃から手厚く教育していた。だが、今は二人仲良くメディアから批判される日々を送っている。
「将来有望の八広さんが人生狂わされて、希望の欠片もない湯川君が普通に生きて行けるなんて許さない。こうなったら徹底抗戦よ!」
金町は反省するつもりはないらしい。結局言いたい独り言を言って、入浴後に夕飯も食べないまま不貞寝してしまった。
一方こちらは裕也の自宅だ。彼は関わった頻度こそ少ないものの、沙崙に対して人格否定ともとれる発言の他、顔を踏みつけるなど直接的に手を出していたので、SNSが荒れていた。当然、裕也としてはそれを面白いと思っていない。
「クソ!この俺がこんな目に遭うなんて、絶対あってはいけない事だ!湯川とあの留学生はやっぱり害悪だ!許さない!」
裕也は今まで、女性がらみで酷い目にあった事が無い。しかし、今回茉莉奈に味方をして沙崙に洗礼を浴びせたことによって自分が叩かれることになるなど考えもしなかった。しかし、元々自信家な彼は自分には大した処分が下されないと安心している部分もあった。
「大丈夫だ。湯川と留学生は隠しカメラまで使って俺や茉莉奈ちゃんの事を週刊誌にタレこんだんだ。あいつらもプライバシー侵害しているから処分を受けるのは俺じゃない。湯川たちだ。ざまぁ見ろ!」
自信ありげにそう言った裕也。しかし、既に自分達が手遅れだと知るまで、そう時間はかからなかったのだった。
こんにちわ。
この章ももうすぐクライマックスです。
次回をお楽しみに!




