第95話 再会の日
こんにちわ!
今日も暑いですね!
ここは大谷津学院から少し離れた所にある、成田空港第1ターミナル。日本を代表する空港の一つで、空の玄関口として人々に知られている。ある日の夜、そこの到着口から一組の中年の男女が心配そうな表情で出てきたのだった。
「あなた、あの個大丈夫かしら?」
「私も心配だ。だが、同じ学校の子が助けてくれたってニュースで言ってたじゃないか。」
「そうなんですけどねぇ…。」
「ともかく、あの子に酷い目を合わせた奴らは許せない。」
男女はそのようなことを話しながら空港のロビーを抜けてバスに乗り、予約していたホテルに到着した。荷物を置き、少し休んでいると女性の方の携帯電話にメッセージが届いた。
「あなた、あの子今来たって!」
「分かった。ロビーに行こう。」
そう言って二人は部屋を出て1階のロビーに向かう。エントランスに出ると、緑色のブレザーを着た少女が手を振りながら男女に駆け寄ってきた。
「父さん、母さん!」
「沙崙!」
「心配だったのよ!」
待っていた少女は沙崙だった。そしてロビーに出てきた男女は沙崙の父である陳健豪と母の李玉華であった。沙崙は笑顔を見せていたが、両親は心配そうな顔で彼女を抱きしめた。
「沙崙、大丈夫だったか?!ニュース見た時は目を疑ったぞ!」
「お母さんも、毎日心臓に穴が開きそうだったわ!もう、心配で心配で…。」
「私も一時はどうなるかと思ったけど、もう大丈夫。心配いらないわ!」
沙崙は二人を宥めた。今回の事案はいうまでもなく沙崙の故郷である台湾にも広がり、注目と同時に批判を集めている。そこで、娘が心配になった健豪と玉華は日本に行き、沙崙の様子を見に行くことにしたのだった。そして、沙崙も事前に両親が来日する知らせは受けていたので、学校が終わった後にホテルに顔を出したという訳だ。
「それでね、父さん母さん。明日は会って欲しい人がいるの。」
「ほう、そうなのか。一体誰だい?」
「ま、まさか…あんたを虐めてた張本人…?」
「違うわよ。その逆。私の力になってくれた人達よ。父さんと母さんのことはもう話してあるから、安心して。」
「分かった。」
「それなら安心ね。」
「じゃあ、私は帰るね。二人は長旅で疲れてるんだから、今日はゆっくり休んで!」
沙崙はそう言って両親に手を振りながらホテルを後にし、寮として住んでいる団地へと戻った。久々に家族そろって話ができたことで、お互い少し安心感を得ることができたようだった。
翌日。大谷津学院は連日の報道により、まだ暗い雰囲気が漂っていた。そしてある日の休み時間、真樹は茉莉奈に呼びつけられて話をしていた。真樹はいつものように無表情だったが、茉莉奈は鬼の形相で真樹を怒鳴りつけている。
「湯川!あんた、よくも私をこんな目にあわせてくれたわね!」
「何の事だ?」
「あんたが私達の事を週刊誌にタレこんだのは知ってるのよ!お陰で私は親から怒られるし、ニュースじゃ晒し者よ!こんなことするなんてひどいじゃない!」
「お前が陳さんを虐めなきゃよかっただけの話だろ。」
「うるさいわね!そもそも、隠しカメラ使うなんて卑怯よ!だいたい陳さんがうちのクラスの雰囲気壊したのに、なんで私が悪者にされんのよ!」
「お前それ、本気で言ってんの?」
「何よ、なんか文句あるの?」
真樹はいつにも増して険しい表情で茉莉奈を睨みつけながら言った。これにはさすがの茉莉奈も少したじろいでいる。
「陳さんが何をした?どんな害をもたらしたかってきいてんだよ!」
「そ、それは…いつも優等生ぶってて腹立ったし、うちは国際交流しながら英語力を上げる科なのに陳さんじゃ全く役に立たないから…。」
初めは威勢が良かった茉莉奈だったが、すっかり真樹の雰囲気に押されてしまっている。そして、真樹はさらに目を吊り上げながら言った。
「話にならん。そんな理由で一人死なせかけたのに反省の色もない。金町諸共地獄に送ってやるから覚悟しとくんだな。」
真樹はそれだけ言うと教室に戻ってしまった。一方の茉莉奈は顔を真っ青にしてその場に立ち尽くすしかなかったのだった。
その日の放課後。沙崙は両親が宿泊しているホテルに向かっていた。因みにこの日は沙崙一人ではなく、真樹、慶、杜夫、立石、飯田も一緒にいる。一同はホテルに到着し、ロビーに入ると沙崙に案内されて奥のベンチに向かう。そこには健豪と玉華が座って待っていた。
「父さん、母さん、お待たせ!この人達が今日二人に合って欲しい方々よ。」
沙崙が真樹達を紹介すると両親は深々とお辞儀をした。そして、一同はロビーからホテル内にあるレストランに移動した。ここのレストランは宿泊客で無くても利用可能である。案内された席に着くと、慶が笑顔で言った。
「わぁ…こんな良いレストラン初めてきた。ご飯も期待できそうだね!」
「おい、オニィ。今日来た目的を忘れるなよ!」
「ごめんごめん!あんまりいい雰囲気だったからつい…。」
真樹が慶を注意した。そして、全員が着席した所で、沙崙が一同を紹介する。
「父さん、母さん。今日来れない人もいたけど、この人達は酷い目に遭った私を助けてくれたのよ。この人は飛び降りた私を受け止めてくれた湯川真樹君。」
「初めまして。湯川です。」
「ストーカーされた私を助けてくれた鬼越慶さん。」
「お、鬼越です。初めまして。」
「取材に協力してくれた公津杜夫君。」
「どうも、宜しくお願いします。」
「私と湯川君を病院に連れて行ってくれた立石先生。」
「立石です。本日はありがとうございます。」
「今回、記事を書いてくれたオリエント通信の飯田さん。」
「初めまして。追い探しい中、ありがとうございます。」
真樹達は丁寧に挨拶をした。そして、健豪と玉華が立ち上がって自己紹介を始める。
「みなさんはじめまして。私、沙崙の父で普段は貿易の仕事をしております、陳健豪です。娘がお世話になっています。」
「同じく、沙崙の母である李玉華です。皆さま、娘を助けていただいたみたいで本当にありがとうございます。」
全員の挨拶が済んだ。だが、今回は勿論ただの食事会ではない。これは今回の事件の首謀者達に止めを刺す為の最終人日なのであった。
こんにちわ!
沙崙の両親登場です!
どのように茉莉奈達に止めを刺すのでしょうか?
次回をお楽しみに!




