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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode6 留学生を救え?!
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第93話 揺らぐ立場

おはようございます。

7月最初の投稿です。

 沙崙へのいじめ問題は、オリエント通信が記事にしたことで遂に明るみに出ることになった。このことは世間で反響を呼び、連日テレビで報道されている。この日も、あるテレビ局の朝のワイドショーでは沙崙の事を取り上げていた。

「えー、つまりですね。虐めの主犯格である女子生徒は留学生の少女を、態度が気に入らないからという理由だけで日常的に暴行を加えたり、教科書などを破いていたりしたそうです。留学生の少女の言い分は、何かをした覚えが無いのに一方的に因縁をつけられたということでした。双方で意見の食い違いがありますが、先生いかがでしょう?」

 男性司会者がスタジオに来ていた台湾出身の大学教授に話を振った。教授は怒り心頭で話し始める。

「どんな理由がありましてもね、虐めが起きたのは事実ですよ!仮に台湾の子にも落ち度があったとして、それなら日本の習慣とか教えてあげるのが国際交流ってものじゃないんですか!」

 教授の怒りの熱弁に、隣に座っていた女性教育評論家が乗っかるように話し始めた。

「しかもこの学校、町一番の進学校で昔から国際交流や語学教育にも力を入れていたんですよね?台湾の学生を受け入れるのは初めてらしいですが、担任がこんなにやる気なくて態度悪いんじゃ、もう擁護出来ませんね。」

 教育評論家は厳しい意見を言った。そして、大谷津学院の2年国際科への風当たりは日に日に強くなっていくのだった。


 一方、真樹は普段通り登校しようとしていた。朝の成田駅に到着すると、いつものように慶が声をかけてくる。

「おはよう、真樹!」

「おう、オニィか。おはよう。」

「なんか、すごいことになっちゃったね。毎日ニュースでうちの学校でてるし。」

「まぁ、当然だろうな。それだけの事をしたんだよ、あいつらは。」

「でもどうなっちゃうんだろう?八広さんも金町先生も、これじゃあ立場的に危ないよね。」

「仕方ない、自業自得だ。」

 そう話しながら学校に到着した真樹と慶。しかし、校舎にはいた瞬間、突如真樹は背中に衝撃を覚え、その場で転倒してしまった。突然の事に驚いた真樹が後ろを振り返ると、裕也が怒りの形相で真樹の背中に蹴りを入れていた。真樹はゆっくり起き上がって何かを言おうとしたが、裕也に胸倉を掴まれ、怒号を浴びせられる形で遮られた。

「おい、湯川!てめぇ、とんでもねぇことしてくれたな!メディアにタレこみやがって、ふざけんなよ!」

「ちょっと、大和田君!いきなりその態度は無いんじゃない!」

「うるせぇ、引っ込んでろブス!」

 注意する慶を一喝した裕也は、再び真樹に向き直って怒鳴り散らす。

「ニュースで流れてた動画に俺が映ってたせいで、俺の家にまで報道陣来ちまったんだぞ!お陰で俺のSNSが炎上しちまったじゃねーか!この俺に恥をかかせやがって、ふざけんなよ!」

「お前が陳さんに嫌がらせしたからだろうが。善悪の区別も出来ないとは、顔はいいけどとんでもなくバカだったんだな。」

「この俺に向かってよくもそんな口を…、俺は茉莉奈ちゃんを困らせるあの留学生を成敗しただけだ。俺は悪くない、全ての元凶はあの留学生だ。」

「本当にそうかな?お前のSNS炎上を見れば、どっちが悪いかなんて明白だよな。」

「この野郎、ぶっ殺してやる!」

 真樹に殴りかかろうとしている裕也を、慶が必死に止めようとしている。すると、丁度そこに立石が通りかかった。

「ちょっと、3人とも!朝から何喧嘩してんのよ!」

 立石に注意されると、裕也は舌打ちしながら手を離し、教室に言ってしまった。

「ちっ。覚えてろよ!この俺に恥かかせた罪は重いからな!」

 捨て台詞を吐いた裕也を真樹は冷めた目で見送った。そして、慶が心配そうに駆け寄ってきた。

「真樹、大丈夫?」

「心配ない。あと、大和田の立場も結構ヤバくなるかもな。」

「だよねー…。」

 真樹と慶はそのまま教室に向かった。連日ニュースで騒がれてはいるが、彼らの学校生活は休みになることは無い。


 休憩時間。真樹が教科書を片付けていると、教室の外からいきなり呼び出された。

「湯川君、ちょっと来なさい。」

 真樹が声の方向を見ると、国際科の担任で英語の教科主任でもある金町が怒りの表情で真樹を睨みつけていた。真樹は黙って立ち上がり、金町の後についていく。金町は真樹を連れて職員室に入ると、隣にある物置部屋まで来た。部屋に入ると、金町は開口一番真樹を叱りつける。

「湯川君。あんたがあの留学生に肩入れして、週刊誌にタレこんだそうね?どういうつもり?」

「陳さんが八広達に痛めつけられてるのを助けただけですよ。役立たずな金町先生に代わってね。」

「あんた、自分の立場分かってる?」

「分かってますよ。だからこうして悪を成敗したんじゃないですか。」

 金町の脅迫めいた説教に対しても、真樹は冷静に返している。真樹のそんな態度に、金町はますます苛立ちを溜めていったのだった。

「あんたが余計なことしてくれたおかげで、私が今どれだけ嫌な思いしてるか分かってる?今朝ニュースで教師失格って言われたのよ!こんな屈辱、人生初よ!」

「仕方ないじゃないですか。国際科の担任なら本来留学生を守るはずなのに、先生は八広の味方ばかりして一方的に陳さんを悪者扱いしてましたよね。それと、昨日の『たかが生徒』発言はいけませんでしたね。」

 真樹の言葉に対し、金町はぐうの音も出ないようだった。金町が昨日インタビューで『たかが生徒』と発言したことに、世間から猛烈な批判が集まった。まさか一人の生徒の手によって自分の教師としての立場が危うくなるとは、金町も予想外だった。口は災いの元とは正にこの事である。

「休憩終わるんでもう戻っていいですか?じゃあ、失礼します。」

 反論できずに黙りこんでしまった金町を尻目に、真樹は職員室から出てきた。すると、廊下では慶と沙崙が心配そうに声をかけてきた。

「真樹、大丈夫だった?」

「湯川君、ごめんね。私のせいで変なことに巻き込んじゃって。」

「気にすんなよ、二人共。みんな強がってるけど、実際はどんどん立場があやしくなってるからな。俺は満足だ。」

 真樹はそれだけ言うと沙崙が教室に戻るのを見送り、その後慶と共にA組の教室に戻って行った。今回の事件は連日世間を騒がせているが、騒ぎはまだ収まる気配は無かった。

おはようございます。

当事者たちがじわじわと追い詰められてますね。

ですが、まだこれでは終わらせません。

次回をお楽しみに!

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